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第七章 師弟の絆

第167話 でかいばあさん現る!

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「スティン取り敢えず話を聞こう」

「ん?どうしたさーらしくないね。
あと一時間は覚悟して
いたんだがね~」

 大柄なばあさんは気持ち悪い物を
見るような顔をしている。

「別になんでもないさ、お前さんと
無駄話する程私は暇じゃ
ないだけさ、さ~話な!」

「やっぱり気持ち悪い……しかし仕方が
ないね~聞きたいのはヴィープに
ついてさ、ここ最近スラム街に
と止まらず中央区にまでその被害者が
広まっている。そいつらはどうやら
どこぞの商人から買っていたようだが、
知ってるかい」

 サリーさんの顔が険しくなる。
重くなった口をゆっくりと開いた。

「………はぁーまったく、ここ最近は
ため息が止まらないね。
確かに知っている。この商業ギルドに
登録している商人だったよ」

「それは話が早い、そいつは誰さ~」

「そんな簡単言えないよ!こっちが
どれだけ裏取りして
見つけたと思ってるんだい!」

「気にしてるのはそんなことじゃ
ないだろ、国王軍に所属する私に
解決されると商業ギルドとしてのメンツが
立たない。そして何よりあんたは
自分の落とし前は自分でやらないと
気がすまない。だが気にするな。
私がとっ捕まえては来るが手柄は
全部やる。私は興味がないのでな」

「ふん、付き合いが長いだけあって
分かってるじゃないか、
なら教えないのは分かるだろ」

「サリー教えろ!」
 ばあさんとは思えない殺気を放つ。

「一つだけ条件がある」

「条件だと?」

「そう、ここにいる新米商人の
蒼字(そうじ)を連れて行け
邪魔にはならないはずさ~」

「………はぁ?」
 完全に蚊帳の外から急に話の中に
入れられた。

「どういうつもりさ~こんなボウズを
連れて行けって何のために」

「さっき自分で言っただろ。私は自分で
落とし前を着けたいと、つまり代理では
あるが商人の蒼字(そうじ)で
あれば問題はない」

「なるほど!」
 ばあさん同士は納得。しかしそうは
いかない。

「いや!なるほどじゃない。なんで
俺がそんな事はしないと
いけないんですか?」

「はて?お前さんは私にお願いが
あるんじゃなかったのかい」


「グッ……サリーさんただでは
起きませんね~結局俺を
働かせるつもりですか!」

「働かざる者食うべからずだよ!
さー働きな!」

「サリーさん酷いッス!」
 書類を投げられ受け止める。

「ほら行くさ!」
 ガシッと首根っこを捕まれ
そのまま担ぐように持ち上げられ、
そのまま連れて行かれる。

「わーまだ何も言ってないのに~」
 俺はお金が入った袋をイリナに
投げて渡し、猫耳食堂で
ご馳走を準備してあるから食べて
帰れと伝えた。

……………▽

「はぁーなんで俺がこんな目に……」
 ぶつくさ言いながらサリーさんに
渡された書類に載っているフリュイと
言う果物を売る店に向かう。

 俺が地図を見ながら先導をしていると、

「よく見ると昨日のボウズじゃない?」
 
「そうですよ。今気がついたんですか?」

「私は興味のない事は忘れる主義なのさ」

「それ、本人の前で言います」

「大丈夫さ~私は気にしていない」

「いえ、俺が気にしますから」

 それにしても思っていたより遠いな~
中央区でも被害が出たって聞いたけど、
中央区でもだいぶ端の店
みたいだ、まだ少し時間がかかるな。

「あの~まだ着くまでに少し時間が
かかりそうなんで、雑談程度の話
なんですけどスティンさんは国王軍に
所属されているんですか?」

 この人、さっきの話だと国王軍らしい
けど、見た感じ六十は確実に超えている
おばあさん、動きはしっかりと
しているけど、とても軍に入れるとは
思えない。

「私かい、私は確かに国王軍さ~
ただしアルバートの坊や
の直下ではなく独立している」

 この人もアルバート団長を坊やって、
かなり古参なのは
わかるけど、そんな事言って良いのか?

「宮廷魔術師、それが私の役職さ」

「………はぁ?」

 宮廷魔術師ってなんとな~く
優雅で偉くってすごい魔術が
使える人のイメージだけど……

 改めてスティンさんを見る。
デカくて大きな銃を持つばあさん。
どこに宮廷魔術師の要素があるんだ?

「なんだい!文句でもあるのかい!」
 
 でっかい手を握り拳にしてゲンコツでも
落とすつもりか、
なんとか弁解せねば!

「えーっとでっかい手ですね!」

「ゴチン」………「う……痛い」

「私がでかいんじゃない。お前が小さい
だけさ!」

 どうやらでかい事を気にはしていたようだ。

「アタタ~」頭を擦りながら歩いて
いると、やっと目的地の店フリュイに
到着する。

「意外でしたね~結構奥に入ったので、
ポツンっと一店舗あるだけかと思いま
したが」

「それはそれで怪しすぎるさ!敢えて人が
多くいる場所に隠す方が、見つけにくい事
もあるさ~」

「そうですね」
 
 件の店の周辺には7店舗も店が開いて
いる。どの店も野菜や果物を販売して
おり、客もそこそこいる。パッと見
怪しいところは見当たらないけど、
サリーさんは確信を
持っていた。俺はまずそれを信じる。

「そうだ!サリーさんから貰った書類に
何か書いてあるかも」

 書類には被害者の情報が載っていた。
被害者は数日前から羽振りが良くなり
いつもニコニコと上機嫌、同僚が何か良い
ことがあったのかと聞くととても良い夢を
見て気分が良いと答えたらしい、
同僚はなんだそんな事かと言うと、それは
やってないから分からないんだ!と強く
否定された。

 その数日後、相変わらず被害者は
ニコニコと上機嫌だったが、顔色が
白っぽくなり首の後ろが青みがかっていた。
同僚は心配になり声をかけると、
大丈夫だと答えむしろ更に気分が
良くなった。赤い果実の方が長く続いて
最高と話していた。

 その更に数日後、首の色は更に
青く変色、ニコニコしていた表情が
なくなり無表情になった。ただ聞くと
更に気分が良くなったらしい。
ここ最近は青色のジャガイモを煮て
食べていると言っていた。同僚がそれ
大丈夫じゃない止めろと言ったら
突然キレてその同僚の頭を引き千切り
周りにいる同僚を十人殴り殺した。

「う~ん、情報で出てくるのは、
赤い果実、青いジャガイモそれを
食べるとニコニコと上機嫌になる。
その理由が夢、そして最後には暴走
して死ぬ」

 流石に薬物と思われる赤い果実や
青いジャガイモは店の見えるところに
はおいてないだろうから、この周辺で
ニコニコと上機嫌そうなの奴を見つけて、
こっそりと追跡するか、そうすれば
現行犯逮捕が出来るかも!


「アァァァア~」突然男の叫び声が響き渡る。

 俺はその叫び声の方を見ると、

「えー!?何やってるんですか!」

 スティンさんが店員の手を撃ち抜いていた。


 
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