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第七章 師弟の絆
第162話 私は…………ついて行きたい!
しおりを挟む「ワタシどうして……生きてるの?」
ツグハちゃんは目を覚ましたけど
混乱しているみたい。
レリコちゃんはツグハちゃんの
手を握り優しく声を
かける。
「ツグハちゃん、ツグハちゃん、
私だよ!レリコだよ!分かる?」
「あ~レリコちゃん、私生きてるの?
もうダメだと思ったのに、すごく
苦しくって痛かったのに急に楽になった
の、きっと神様が御迎に来たって思ったけど、
私治ったんだね!」
「そうだよ!……そうだよ!ツグハちゃん」
二人は涙を流し喜んだ。
「二人共そのくらいで、ツグハちゃんは
怪我は治ってるけど、体力の消耗が激しい
から、食事をとってゆっくり休むんだ!」
「あなた……だーれ?」
疑問の声を投げかけられたが、
「それはまた後でね!今は食事を取ろうか、
ちょっと待ってろよ」
俺は食事の準備を始めた。
………………▽
「ウメェ~ウメェ~よ!これ~」
「美味しいのは良いけど、これは
ツグハちゃん用でお前ら分は後で
作ってやるからちょっと待ってろ!」
ツグハちゃんにお粥をよそうと、
食べたそうに三人がしていたので
ちゅっとあげたらガツガツおかわりする
始末、ツグハちゃんの分が無くなる
だろうが!
「へへへ、スッゴク美味しいよお兄さん」
少しだけ元気が戻ったのかツグハちゃん
が笑顔を見せる。
「お兄さんってスゴイ人だったんだね!
もしかして勇者様なの?」
「ん?いや~勇者なんてとんでもないよ!
またの冒険者さ」
レリコちゃんの問いを軽く受け流す。
なぜかってその問いは好きではない。
俺は明確に女神に否定された訳だし、
それに今はこの子達をどうするかだ、
ここまで関わって、あと宜しく~では
済ませられない。まずは話を聞くか!
「あのさ~こんな事聞くのはどうかと
思うんだけど君達はスラム街になんで
住んでいるの?」
全員の目つきが変わった。イリナと
マチの目には強い怒りが込められ、
レリコちゃんとツグハちゃんは悲しみが
込められていた。
「あんたには感謝している。でも余計な
ことを言うなよ!俺達は支え合って
生きているんだ!よそ者のあんたが簡単に
言って良いことなんて何もね~んだからな!」
マチがやけに突っかかるような
言い方をする。俺としてもちょっと
驚いて言葉が詰まる。
「あ!痛ってぇー」
レリコちゃんがマチの足を
思いっきり踏む。
「レリコ何するんだよ!」
「まー今のはマチが悪いかな」
「何だよ!イリナまで」
イリナは俺の前まで来て頭を下げる。
「蒼字(そうじ)さんすいません、
マチに代わって謝ります。でも許して
やって下さい。前、僕達を助けようと
してくれたオジサン達がいたんですけど
………その人達は人攫いを生業とした
組織の人で仲間が何人も捕まって
どこかのクソ野郎に売られ弄ばれて
……恐らく殺されました。俺やマチは
運良く逃げる事ができましたけど、
それ以来、仲間意外は信用しない
そう二人で決めたんです。ですから
酷い事を言ってしまいました」
なるほど、これは俺が分からない
世界の話だな。なんとなくスラム街の
子供達が酷い目にあっている。そう感じて
いた。だからこそ助けを求めると
思ったけど、人を信用できなくなる程
酷い目に合えばそれも変わってくる。
とは言っても俺がしたいのは彼ら彼女らを
助けたい。それに変わりがない。
ならやることも変わらないだ!
「俺としては君達を助けたいと
思っている。だけど君達の意思を
尊重するよ!今よりも前に進むたいなら
俺について来い。ただし楽じゃないがな」
俺の言葉に全員困惑する中、
一人だけ真っ先に声を上げた人がいた。
「私はお兄さんについて行きたい!」
「ツグハちゃん……」
レリコちゃんは複雑な気持ちの顔を
している。本当は助けてほしいけど、
きっと不安なんだ。
「お兄さん、みんなと話をさせて、
私が説得する。きっとここでお兄さんの
手を掴まなかったら一生後悔する」
イリナもマチも頭をかきながら
困った顔で、俺を見つめる。
「そんなに見られても困るんだが、
ま~いいさ、よ~くみんなと話し合って
考えてくれれば良い。食料に関しては
しばらくは食える量を用意するよ」
そう言って俺はレリコちゃん達と別れ、
サクさんに状況を報告する為に屯所に
向かう。途中酔っ払いの集団を
見つける。飲み過ぎて倒れているようだ。
「あれはー助けなくて良いな!」
俺はそのまま通り過ぎようとすると、
横切ると「ボキッ」「ボキッ」と音がした。
振り返ると酔っ払い達の首を踏んで
へし折っている男が立っていた。
「おい!何やってる!」
思わず声をかけてしまった。
男はゆらゆらとこちらに歩いてる。
ゆらゆら、ゆらゆら男は突然跳躍し
建物の壁づたいに走り、凄まじい脚力で
俺に向かって飛びついてきた。
「キモい!来んなぁー」
俺はカウンターでそいつの土手っ腹に
蹴りを入れふっ飛ばした。
「なんだこいつ、バケモンか?
ずいぶんと獣じみた動きをしていたが」
俺はその男を確認する為、近づいて
行くと男は何事もないように立ち上がる。
「一応手加減はしたが、もう動くな!
お前は二人も殺した。罪を償うため
牢屋に入ってもらう」
男はこちらの声にはまったく反応せず
ゆらゆらと揺れている。
何なんだこいつ、俺の蹴りを
カウンターで喰らって
何もなかったように立ち上がるか?
その時、気がついた。そいつの首が
青く変色している事に、こいつも
例の薬物をやっている。
「バーン」…………「ドサッ」
男は首を撃ち抜かれて倒れた。即死だ……
「あんた……どう言うつもりだ!」
俺は銃を持った人物を睨む!
「なんだい!文句でもあるっていうのか
ボウズ」
かなり大きな銃を片手に
大柄なばあさんが睨み返す。
「助けてやったんだ!感謝されるなら
分かるが、睨まれる覚えはないさ~」
「あ~それは悪かった。だけど殺さなく
ても良かったんじゃないか、何か聞けた
かもしれない」
「はぁー馬鹿言うんじゃないさ!
ヴィープの中毒者はすでに死んでいる。
いわゆるゾンビってやつさ~
話したところでなんの情報も得られないさ」
「なるほど。そっか、仕方がないんだな
………悪かったな変なこと言って」
「別にいいさ、大したことじゃない。
それよりお前さんはさっさと帰りな!
このくらいの時間は奴らが動き回る。
見つかったら、そこの酔っ払いみたいに
踏み潰されるよ」
「確かにそうだな!あんたは良いのか
こんなところに居て」
「私はこいつらの原因を探っている。
ほーっておいて構わんさ~」
「そうか……分かった。気を付けてな
……えっと……」
「私の名前かい?バルカ・スティン、
覚えなくて良いさ」
ばあさんはさっさと歩いて
行ってしまった。
「なんか、変なばあさん……おっといけない
余計なことで
時間を食っちまった。さっさと帰るぞ~」
俺は走って屯所に向かい報告、
そのまま自宅に帰ると、
そこでは想定外な出来事が待ち受けていた。
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