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第六章 ミネルヴァ姫の呪いと邪神召喚
第123話 ボルボフの試練 決着
しおりを挟むボルボフから闘気が溢れている。
まさに猛獣と相対した気分になる程の
威圧感。
ボルボフが凄まじい速度で接近して
丸太のような太い腕が振り下ろされる。
俺はそれを冷静に見極め、ボルボフの
手の甲に手のひらで受け流し体勢を崩す。
『墨帯』
すれ違いざまに拘束を試みるが、
ボルボフは帯を引き千切り距離を取る。
『重爪撃(じゅうそうげき)』
ボルボフの腕に闘気が集中、
剛腕を振り闘気を斬撃に変えて飛ばす。
「危ないな!『一筆書き一閃』」
斬撃を相殺する。
一定の距離を取った状態で
「取り敢えず雑魚ではなくて安心した」
「ボルボフさん、私が雑魚だったら
どうするつもりですか、それにあんな
斬撃飛ばしたら周りに迷惑ですよ」
「ふん!雑魚ならそれまでの事、
それに今の斬撃くらいは躱すくらいは
出来んとな……ここにいる資格すらないわ」
『重爪撃烈波(じゅうそうげきれっぱ)』
さっきの斬撃が多数飛んで来る。
『一筆書き一閃 乱』
同じだけの斬撃で相殺する。
「この攻撃は囮か」
側面から高速で接近するボルボフ、
鋭く伸びる爪を墨ブレードで受け
止める。爪と剣の切り合いが始まった。
数百の打ち合いの後、
「ま~ま~だな!兄貴このくらいで
良いのでわ」
「そうだな!戦力にはなりそうだ。
及第点はつけてやっても良い」
どうやら今のやり取りで力を
示せたようだ。
ガシッとボルボフに肩を組まれる。
「おい使徒様よ!俺相手に手を抜いて
やるとはいい度胸だぜ。それに周りの事を
常に気を使って良かったな!
今度は周りを気にせずやれるところで
やろうぜ!」
「アハハ、気が向いたらでお願いします」
ボルボフさんから戦闘狂の匂いがする。
「使徒様かどうかについて今は言及する
暇はない、すでに魔王軍はここから
約三百キロの地点まで進軍している。
猶予はそれ程もない。最後通告だ!
今ならまだ逃げられるがどうする
ミネルヴァ姫よ」
国王はミネルヴァ姫を見据える。
「国王お気遣い痛み入りますわ。
しかし先程も言いました通り、
私は逃げるつもりはありません。
今は前に進みたい気分ですし」
ミネルヴァは笑顔で答えた。
「ほぉー豪胆な事だこれだけの話を
して動じないか!美しい上に肝が
据わっている。う~んほしい」
国王の目の色が変わる。
「お父さん、お母さんが後で話が
あるそうです」
「な!?これは勘違いだ!
これ以上増やそうとは思わんぞ」
あたふたのする姿はボルボフさんと
そっくりだな。
「オホン!ミネルヴァ姫よ、
いくらあなたが勇敢であっても戦場に
出るのは許しませんが良いですかね」
「はい、私には何の力もありません
から皆様に頼る事しか出来ません。
どうか宜しくお願い致します」
ミネルヴァ姫は俺達に頭を下げる。
その後直ぐに作戦会議が開かれた
戦場に向かうのは、蒼字(そうじ)、
キャンベル、アルバートの三人
魔王軍に対して大きく五つの大群を
形成し事に当たる。まずは第一部隊
ボルボフさんが率いる。最も戦闘に
特化した兵士が集まれた部隊、
この部隊がまずは先行し敵を排除
する。そして続くのは第二、
第三部隊、第一部隊に続き敵を排除し
敵の動きによってフォローをいれる部隊、
第二部隊にはアルバートが参戦しかも
部隊長を任せられている。本来
ありえないのだが国王とボルボフさんの
信頼度が半端ではなかった。使えるの
ならそこだと無理やり選任された。
そして、第一、第二、第三部隊の
取りこぼした敵を処理する。主に王都を
守る第四、第五部隊、蒼字(そうじ)、
キャンベルは第五部隊に配属、
ここは主に冒険者ギルドの冒険者が
主に集められている。ボルボとエムも
同じ部隊、俺達は少し気を使われたかな
恐らく一番安全な部隊、総勢五万の勢力で
約二十万の魔物達を相手にしなければ
ならない。数だけで言えば
圧倒的に不利な戦局である。
王都を出て配置に移動する途中、
ボルボとエムが使徒様(蒼字)と
キャンベルに話をしに来た。
「久しぶりの戦場だ!ビビってない
だろうな~キャンベル」
「ボルボ、わざわざそれを言いに
来たわけ!」
「うるせいな!エム、黙ってろ!」
「二人共私に気を使って声をかけに
来てくれたのですね。ありがとう。
大丈夫です!久しぶりの空気で緊張
するかと思いましたが、思っていた
より冷静ですね。これも使徒様の
お陰ですかね」
「キャンベルさん、からかわないで
下さいよ!ちなみに俺は緊張してるん
です。二十万ですよ!
想像するだけで震えますよ!」
「はぁー何だそれ!使徒様の名を
語っておいて腑抜けか!
親父とやりやっていたのを見て少しは
見どころがあるかと
思ったが大した事ないな!」
「ボルボ、今は同じ仲間なんだから
そう言う事を言わないの、ごめんね
使徒様」
「良いですよ、さっきも言いましたけど
私は祭り上げられて使徒様やってる
だけですから」
…………「選ばれた冒険者達と思っていたが
あまりにも大した事無ものだな!
つまらん奴ばかりだ。これならば、
やはり第一部隊に無理矢理にでも
ついて行くべきであった」
そこには馬にまたがる王女が居た。
なんでここに王女が?
「そう言うなよリリカ、おじさんが
許すわけないだろうな。そもそも戦場に
出る事自体がおかしいんだからな!」
「煩い!ボルボ、私は戦果を挙げねば
ならん!そしてジャンヌ様のように
私はなるのだ!」
「はぁ~またその話かよ。お前が憧れる
のは分かるけど、あれはおとぎ話みたい
なもんだし、おじさんとおばさんの事も
考えろよ!心配で仕方ないんだよ。
それにお前のお守りをさせられる
俺の立場も……」
「うるさい~ボルボのアホが」
「ぐうへ~」
リリカのジャンプ蹴りがボルボの
頬にクリーンヒット。
「バカヤロー戦う前にダメージ
受けちゃったじゃないか!」
「ふ~んジャンヌ様の事を悪く言う
やつは許さん」
「悪くは言ってないだろが!」
王女とボルボが言い合いをしている。
「エムさん、王女がここにいるのは
不味いのでは?」
「仕方ないのよ!リリカ様が言う事を
聞かなくって、あまり押さえつけ
過ぎると勝手に飛び出るかも知れない
から仕方なく国王は一番安全な第五部隊に
配属させたの私とボルボはお目付け役ね」
「へ~そうなんだ王女って戦えるん
ですか?」
王女の耳がピクピクと動き、
こちらを睨みつける。
「あんたより強いわよ!」
ビューンっとボルボフさんより
速いスピードで蒼字(そうじ)の
顔目掛けて拳が伸びる。
「パシッ」……「ご主人様に手を
出す事は許さん!」
ジャンヌが現れ王女の腕を掴む。
「あぁ~あんた私の邪魔をするわけ、
私を誰だと思ってるの、その手を
放しなさい」
「そんな事は知らない、それにあなたが
誰であろうとご主人様に仇なす者は
私が断罪する」
「へぇ~あんたいい度胸しているわね」
王女の眉間に青筋が出ている。
これは良くない。
「王女、今は戦場にいるのですから
仲間同士で争うのは愚の骨頂では!」
俺も愚を使ってみました。
「へぇ~あなたも私に楯突くのね」
ん?発言をしくったかも余計に
王女を怒らせてしまった。
「そのくらいにしろ!リリカ、
これ以上余計なことを
したら帰ってもらうからな!」
「な!?ボルボそんなの……」
「俺は国王から指示を受けてるからな、
俺の判断でお前には帰って貰う」
「くぅ~、分かったわよ!大人しく
していれば良いでしょ」
王女は大股で怒りながら何処かに
行ってしまった。
この後も思いやられそうだ!
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