88 / 277
第五章 黒尽くめの正体、そしてアルヴィア姫の判断
第82話 勇者と国王軍の戦い
しおりを挟む「何でここにさくら達と国王軍が……」
俺は顔を引きつらせて戦場を
呆然と見ていた。
オオカミ型の魔物に取り囲まれているが、
さすがは国王軍、上手く連携を取って
着実に魔物を倒し減らしている。
「蒼字(そうじ)どうします?
加勢しますか」
「今は良いでしょ、被害もなければ
苦戦もしていない。様子見で、
何かあったら加勢しましょう」
このまま行ったら俺の正体がバレる!
それは出来るだけ避けたい。もしもの事を
考えておかないと……
◆アルヴィア姫の視点
冒険者ギルドで衝撃の情報を聞いた
私達は、イスブルと言う森に向かう
ことにした。正直かなり唐突な指示を
してしまったと少し後悔をしている。
あの後ギルドマスターに黒ずくめの男に
ついて聞いたのだが、守秘義務があり
答えることが出来ないと頑なに教えて
くれなかった。しかしギルド職員から
一緒に治療を協力していた美人の女性が
同じパーティだと思うとポロッと教えて
くれた。当然の如く、ギルドマスターに
げんこつをくらっていたが、これは
黒ずくめの男に再び会うことが出来る
かもしれない。そう思うと居ても立っても
居られなかった。
◆陽菜乃(ひなの)の視点
黒ずくめの男がその場所にいるかも
しれない!今度こそ負けないんだから!
私はアルヴィア姫が攫われた時、
自分の無力さに嘆き落ち込んだ。
これ程落ち込んだことは過去になかった
かもしれない。
これがさくらだったら、私は狂い修羅に
なっていたと思う。
ちょっと言い過ぎかもしれないけど、
ここは何があってもおかしくない
異世界なんだ!私はさくらやアルヴィア姫
友達を守れる力が欲しい。そう思い私は
アルヴィア姫の紹介で王国お抱えの
宮廷魔術師を紹介して貰った。
私は師匠から様々な魔術を教えて貰った。
ここで活躍したのが固有スキル
『追求する者』、これのおかげて新たな
魔術を習得することが出来た。ここは
まずは因縁の相手、黒ずくめの男を捉えて、
私のステップアップの礎になって貰うわ!
◆さくらの視点
黒ずくめの男………一体何がしたいの?
初めて会った時は、アルヴィア姫を攫った
最低の人だと思ったけど、アルヴィア姫は
何事もなく返してくれた。
そしてさっきの事だけど、多くの人達を
治療して助けてくれた。本当にただの悪人
だったらしないと思うけど……
黒ずくめの男には何か目的があるのかも
しれない。
それと黒ずくめの男と別に気になる
ことがある。さっきからお母さんの様子が
おかしい?すごく落ち着きがないし、
聞いたら聞いたでマンガで出そうな
くらい震えて動揺するし、お母さん
……秘密をするの苦手だもんな!
何を隠してるんだろう。ずいぶん必死で
頑張るな~
◆一花(いちか)の視点
どうしよう!どうしよう!どうしよう!
何やってるのよ!蒼字(そうじ)くん
このままだとさくらと戦うことに
なっちゃうよ!どうしよう~
ここは私が上手く誤魔化さないと、
さくらを守りつつ蒼字(そうじ)くんを
逃がす作戦を考えないとね!
そんな事を考えていると、魔物の大群に
囲まれた。も~う、こっちは忙しんたがら
邪魔しないでよね!
私は魔物を念動力でぶっ飛ばした!
◆蒼字(そうじ)の視点
「さすがは勇者様、いい動きをする」
前戦った時より着実に実力を上げている。
あれはただレベルが上がっただけじゃなくて
技術も上がっている。
陽菜乃(ひなの)は前と同じ二丁拳銃
スタイルだが前とは違う圧倒的な安定感、
それを可能にしているのが連射性能の向上、
陽菜乃の銃の回りを弾丸が円を動くように
回っている。撃つたびに弾丸が自動的に
装填され隙を作らず撃ち続けることが可能。
さくらと一花(いちか)さんは単純に
念動力パワーが上がっている。周辺の魔物
をほぼ同時にぶっ飛ばして圧倒している。
ほぼ魔物を殲滅した所に2体の魔物が現れた。
オークキングとオルトロス
さくらと陽菜乃(ひなの)は分かれて
それぞれを迎え撃つ。
陽菜乃(ひなの)VSオルトロス
「ワン公、私が相手よ!かかって
きなさい!」
陽菜乃(ひなの)は銃をオルトロスに
向け撃った。オルトロスは横っ飛びで
躱し、陽菜乃(ひなの)はそれを追う様に
連射、高速移動で躱されているが接近
させない。
「もう~早いはね!」
陽菜乃(ひなの)は戦法を変更、
両腕を上に向け
『ファイアーレイン』
空に向かい赤い弾丸か放たれた。
オルトロスは隙が出来たと思い一気に
距離を詰める。
「もちろん、ワザと隙を作ったんだよ!」
陽菜乃(ひなの)は笑顔で真正面の
地面に弾丸を放つ、地面に魔法陣が展開
され土壁が迫り上がり、壁が出来た。
オルトロスは壁を破壊しようと衝突する。
「無駄だよ!その壁かなり硬いから!
土壁に硬化魔法と金属化魔法のトリプルで
かかってるんだ~」
オルトロスはあまりの硬さに頭に
効いたようでフラフラと足が動き、
定まっていない。
「ドドメだよ!」
オルトロスの真上から赤い線が多数
飛来しオルトロスを貫ぬていき、雄叫びを
あげ倒れた。
「ん~まだまだね!あのくらいの魔物に
こんなに手こずってたらダメ、もっと
訓練しないと!」
陽菜乃(ひなの)は倒し終わったか、
やるな~さくら達の方はどうかな。
さくら、一花(いちか)
VSゴブリンキング
俺が見た時、ゴブリンキングは所々から
出血して膝を着いていた。
「さっすがさくら!余裕じゃん、
こんなに大きい敵に一人で戦いたいって
言った時はどうしょうかと思ったけど
心配しなくても良かったわね!」
「う~んそんな事ないよ!ゴブリンキングは
速さも力もすごくあるから油断は出来ない。
……けど対応出来ないほどじゃない。
ゴブリンキングは人よりも大きな大剣を
片手で扱いさくらに振り下ろす。さくらは
槍の柄で受け止め、槍を巧みに動かし力を
受け流した。剣は地面に刺さり、その隙に
さくらは接近し、すれ違いざまに薙ぎ払い
腹部を切り裂いた。
「お母さん、もう十分かな、動き止めて!」
「は~い、『念動力発動』」
ゴブリンキングの動きが完全に止まる。
さくらは少し腰を落として左手を前に
右手を後ろに構え身体を捻った。
『魔力大槍』
槍に魔力を込め突撃力を上げ
放った一撃は、
ゴブリンキングの腹部に大穴を空け、
大きな音をたて倒した。
ゴブリンキング相手に余裕か、
さすがさくら。それに本当は一花(いちか)
さんと協力すればもっと早く
倒せたのに試したなこれは……
二人の実力は確かなものになっていた。
これならこのまま任せても良いかも
しれないな!
「みんな聞いてくれ、俺達はこれから
先行して森の中央に向かおうと思う」
キャンベルは現状把握のため質問をする。
「蒼字(そうじ)それは100体近くの
高レベルの魔物とこのまま戦うと言う
ことですか?」
「そうだ!ただし俺達がやるのは
おとりと間引きだ!」
「おとりと間引き?」
「俺達はまず先行して中央の敵陣に
向かい攻撃を仕掛ける。ある程度注意を
引けたら、引きながら敵を誘導しつつ敵を
分断して残りの魔物と黒幕は
勇者達と国王軍に任せる。そんな感じ~」
「そんな感じ~でいけますか?敵の戦力が
あくまで50レベル以上と言うことが
分かるだけで80レベルクラスが数体
いたら間違いなく殺されてしまいます」
「ん~じゃ~どうしようかな~自分より
レベルが高い魔物は検索出来ないことが
多いし、実際に行って確かめるしかないか、
了解!キャンベルさんの言うことも
もっともな話だ!先行して行くことには
変わりはないが、想定以上の魔物がいたら、
勇者達と国王軍に知らせて
逃げる。これで行こう!」
「あまり作戦らしい作戦ではありませんが
分かりました」
「すいません、頭悪くって……」
キャンベルさんの一言がグサリと刺さり
落ち込む俺……
こうしてそれぞれの思惑が動き出す。
12
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる