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第五章 黒尽くめの正体、そしてアルヴィア姫の判断

第82話 勇者と国王軍の戦い

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「何でここにさくら達と国王軍が……」
 俺は顔を引きつらせて戦場を
呆然と見ていた。

 オオカミ型の魔物に取り囲まれているが、
さすがは国王軍、上手く連携を取って
着実に魔物を倒し減らしている。

 
「蒼字(そうじ)どうします?
加勢しますか」

「今は良いでしょ、被害もなければ
苦戦もしていない。様子見で、
何かあったら加勢しましょう」
 このまま行ったら俺の正体がバレる!
それは出来るだけ避けたい。もしもの事を
考えておかないと……


◆アルヴィア姫の視点

 冒険者ギルドで衝撃の情報を聞いた
私達は、イスブルと言う森に向かう
ことにした。正直かなり唐突な指示を
してしまったと少し後悔をしている。
あの後ギルドマスターに黒ずくめの男に
ついて聞いたのだが、守秘義務があり
答えることが出来ないと頑なに教えて
くれなかった。しかしギルド職員から
一緒に治療を協力していた美人の女性が
同じパーティだと思うとポロッと教えて
くれた。当然の如く、ギルドマスターに
げんこつをくらっていたが、これは
黒ずくめの男に再び会うことが出来る
かもしれない。そう思うと居ても立っても
居られなかった。


◆陽菜乃(ひなの)の視点
 黒ずくめの男がその場所にいるかも
しれない!今度こそ負けないんだから!
私はアルヴィア姫が攫われた時、
自分の無力さに嘆き落ち込んだ。
これ程落ち込んだことは過去になかった
かもしれない。
これがさくらだったら、私は狂い修羅に
なっていたと思う。
ちょっと言い過ぎかもしれないけど、
ここは何があってもおかしくない
異世界なんだ!私はさくらやアルヴィア姫
友達を守れる力が欲しい。そう思い私は
アルヴィア姫の紹介で王国お抱えの
宮廷魔術師を紹介して貰った。
 私は師匠から様々な魔術を教えて貰った。
ここで活躍したのが固有スキル
『追求する者』、これのおかげて新たな
魔術を習得することが出来た。ここは
まずは因縁の相手、黒ずくめの男を捉えて、
私のステップアップの礎になって貰うわ!


◆さくらの視点
 黒ずくめの男………一体何がしたいの?
初めて会った時は、アルヴィア姫を攫った
最低の人だと思ったけど、アルヴィア姫は
何事もなく返してくれた。
そしてさっきの事だけど、多くの人達を
治療して助けてくれた。本当にただの悪人
だったらしないと思うけど……
黒ずくめの男には何か目的があるのかも
しれない。
 それと黒ずくめの男と別に気になる
ことがある。さっきからお母さんの様子が
おかしい?すごく落ち着きがないし、
聞いたら聞いたでマンガで出そうな
くらい震えて動揺するし、お母さん
……秘密をするの苦手だもんな!
何を隠してるんだろう。ずいぶん必死で
頑張るな~


◆一花(いちか)の視点
 どうしよう!どうしよう!どうしよう!
何やってるのよ!蒼字(そうじ)くん
このままだとさくらと戦うことに
なっちゃうよ!どうしよう~
 ここは私が上手く誤魔化さないと、
さくらを守りつつ蒼字(そうじ)くんを
逃がす作戦を考えないとね!

 そんな事を考えていると、魔物の大群に
囲まれた。も~う、こっちは忙しんたがら
邪魔しないでよね!

 私は魔物を念動力でぶっ飛ばした!

◆蒼字(そうじ)の視点
 
「さすがは勇者様、いい動きをする」
 前戦った時より着実に実力を上げている。
あれはただレベルが上がっただけじゃなくて
技術も上がっている。

 陽菜乃(ひなの)は前と同じ二丁拳銃
スタイルだが前とは違う圧倒的な安定感、
それを可能にしているのが連射性能の向上、
陽菜乃の銃の回りを弾丸が円を動くように
回っている。撃つたびに弾丸が自動的に
装填され隙を作らず撃ち続けることが可能。
 さくらと一花(いちか)さんは単純に
念動力パワーが上がっている。周辺の魔物
をほぼ同時にぶっ飛ばして圧倒している。

 ほぼ魔物を殲滅した所に2体の魔物が現れた。

 オークキングとオルトロス

 さくらと陽菜乃(ひなの)は分かれて
それぞれを迎え撃つ。

 陽菜乃(ひなの)VSオルトロス

「ワン公、私が相手よ!かかって
きなさい!」
 陽菜乃(ひなの)は銃をオルトロスに
向け撃った。オルトロスは横っ飛びで
躱し、陽菜乃(ひなの)はそれを追う様に
連射、高速移動で躱されているが接近
させない。

「もう~早いはね!」
 陽菜乃(ひなの)は戦法を変更、
両腕を上に向け

『ファイアーレイン』
 空に向かい赤い弾丸か放たれた。
 オルトロスは隙が出来たと思い一気に
距離を詰める。

「もちろん、ワザと隙を作ったんだよ!」
 陽菜乃(ひなの)は笑顔で真正面の
地面に弾丸を放つ、地面に魔法陣が展開
され土壁が迫り上がり、壁が出来た。
 オルトロスは壁を破壊しようと衝突する。

「無駄だよ!その壁かなり硬いから!
土壁に硬化魔法と金属化魔法のトリプルで
かかってるんだ~」
 オルトロスはあまりの硬さに頭に
効いたようでフラフラと足が動き、
定まっていない。

「ドドメだよ!」
 オルトロスの真上から赤い線が多数
飛来しオルトロスを貫ぬていき、雄叫びを
あげ倒れた。

「ん~まだまだね!あのくらいの魔物に
こんなに手こずってたらダメ、もっと
訓練しないと!」
 
 

 陽菜乃(ひなの)は倒し終わったか、
やるな~さくら達の方はどうかな。

 さくら、一花(いちか)
          VSゴブリンキング

 俺が見た時、ゴブリンキングは所々から
出血して膝を着いていた。

「さっすがさくら!余裕じゃん、
こんなに大きい敵に一人で戦いたいって
言った時はどうしょうかと思ったけど
心配しなくても良かったわね!」

「う~んそんな事ないよ!ゴブリンキングは
速さも力もすごくあるから油断は出来ない。
……けど対応出来ないほどじゃない。

 ゴブリンキングは人よりも大きな大剣を
片手で扱いさくらに振り下ろす。さくらは
槍の柄で受け止め、槍を巧みに動かし力を
受け流した。剣は地面に刺さり、その隙に
さくらは接近し、すれ違いざまに薙ぎ払い
腹部を切り裂いた。

「お母さん、もう十分かな、動き止めて!」

「は~い、『念動力発動』」
 ゴブリンキングの動きが完全に止まる。

 さくらは少し腰を落として左手を前に
右手を後ろに構え身体を捻った。

『魔力大槍』
 槍に魔力を込め突撃力を上げ
放った一撃は、

 ゴブリンキングの腹部に大穴を空け、
大きな音をたて倒した。


 ゴブリンキング相手に余裕か、
さすがさくら。それに本当は一花(いちか)
さんと協力すればもっと早く
倒せたのに試したなこれは……

 二人の実力は確かなものになっていた。
これならこのまま任せても良いかも
しれないな!


「みんな聞いてくれ、俺達はこれから
先行して森の中央に向かおうと思う」

 キャンベルは現状把握のため質問をする。

「蒼字(そうじ)それは100体近くの
高レベルの魔物とこのまま戦うと言う
ことですか?」

「そうだ!ただし俺達がやるのは
おとりと間引きだ!」

「おとりと間引き?」

「俺達はまず先行して中央の敵陣に
向かい攻撃を仕掛ける。ある程度注意を
引けたら、引きながら敵を誘導しつつ敵を
分断して残りの魔物と黒幕は
勇者達と国王軍に任せる。そんな感じ~」

「そんな感じ~でいけますか?敵の戦力が
あくまで50レベル以上と言うことが
分かるだけで80レベルクラスが数体
いたら間違いなく殺されてしまいます」

「ん~じゃ~どうしようかな~自分より
レベルが高い魔物は検索出来ないことが
多いし、実際に行って確かめるしかないか、
了解!キャンベルさんの言うことも
もっともな話だ!先行して行くことには
変わりはないが、想定以上の魔物がいたら、
勇者達と国王軍に知らせて
逃げる。これで行こう!」

「あまり作戦らしい作戦ではありませんが
分かりました」

「すいません、頭悪くって……」
 キャンベルさんの一言がグサリと刺さり
落ち込む俺……

 こうしてそれぞれの思惑が動き出す。

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