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第五章 黒尽くめの正体、そしてアルヴィア姫の判断
第79話 サマリンの現状と動き出した蒼字医療団
しおりを挟むオルトロスを倒すと戦局は一気に傾き、
魔物を殲滅することが出来た。今は怪我人
の治療と遺体の処理が行われている。
「増援に来てくれたか、助かる」
俺は気まずい顔で、
「ガルムさん悪いんだけど俺達だけなんだ、
どちらかと言うと現状の確認が主の目的
だと思う」
「そ~う気にすんな!実際俺達は助けられた
わけだしそれに『電影の騎士』様が来て
くれたんだ100人力だ!」
「やぁ、やめてくださいそんな昔のこと」
「わるいわるい、嬉しくてな、
つい思い出しちまった」
「ガルムさん…それってキャンベルさんの
二つ名ですか?」
「そうだ!カッコイイだろ!
俺が付けた!……は!?」
腰に手を当て自慢気に言っていると、
横から「バチバチ」と音がした。
「そうでしたか!ガルム、貴方が……」
「ま、待て話せば分かる……オギャーー」
ガルムの骨が見える……
ガルムの制裁が終わり……
「あたうたそあ……まだ口がピリピリ
しておへ、まだ上手く喋れね~わ
……良いじゃね~かよ!『電影の騎士』は
カッコイイだろ、俺なんて
『残虐で飲んだくれのガルム』
だぞ。上級冒険者に付ける
名前じゃね~だろ。誰だよ!」
「あ~それ私ですね!酔ったときに
適当に付けたやつです」
「……………え!?」ガルムの顔が
無表情から驚きに変わり
最後に真っ赤な顔で……
「てぇ、おまえか~キャンベル~」
ガルムは飛びかかるが「シュンッ」と
軽やかに躱しキャンベルとガルムの
追いかけっこが始まった。
「意外だ!……あの二人、仲が良かった
…いや…それよりも」
キャンベルさんの素と思われる部分が
見えまくっている。
予想外の言動にやや驚きを隠せない俺……
しばらく動き回り、
「は~は~は~くそ~相変わらずの
軽やかな身のこなしだ
腹立つが捕まらん!」
「ガルムの動きは昔から直線的過ぎます。
それでは躱されて当然です!」
俺はその発言を聞いて、確かに
ガルムさんの動きは直線的ではあるが、
速さは一介の冒険者の比では無いため
実際躱すのは困難、つまりキャンベルさんの
動きはそれ以上と言う事。
集まっていた冒険者の一人が、
「ガルムさん、すまないがサマリンに
戻りたい。着いてきて貰ってもいいか!」
「あ~分かった!一度戻ろう。
これは急いで対策を打たんと身が持たん!」
「悪いな!早速だが戻ろう」
冒険者はガルムの了承を得ると
そのまま冒険者が集まっている
場所に戻った。
「ガルムさん、現状は芳しくない感じ
みたいだね!」
「ま~な、とにかくお前達にも話を
聞いて意見を聞きたい。
まずはサマリンに戻るぞ」
俺達はサマリンに向う。サマリンは
砦のように高い壁に覆われ、ちょっとや
そっとの事では魔物の侵入を防げそう
な構造で出来ている。しかし、かなりの
魔物に襲撃を受けたことが伺える。
所々が損傷して隙間が空いている。
このままだとそう長くは保たない。
門をくぐり中に入ると、中は酷い状態
だった。建物はボロボロに崩れており、
多くの人がその瓦礫を片付けていた。
「なんで!!街の中にこんなに被害が……」
「あれだ陸からだけじゃね~だろ!
空もある。さすがにここの設備じゃ~な、
カバーしきれね~」
そうか、キメラやグリフォンのように
飛行することが出来る魔物も多くいる。
耐えてるようで被害はすでに多く
出ているんだ。
門を通り、商店街だったと思われる
大通りを抜け目の前には大きな建物が、
「ここがこの町の冒険者ギルドだ」
ガルムさんの案内でギルドに入ると、
濃い血の匂いが、そこら中に怪我人がおり
通路にまで、怪我の具合はかなり悪そうだ、
まともに動けない人ばかり、医師や
回復魔法師、治療薬のすべてが足りて
いない。応急処置で手一杯みたいだ。
「1ヶ月前からだ、町の近くで魔物の
目撃情報が多く出始めたのは、最初は
依頼を増やし対応していたがそのうち
おかしいことに気がついた。倒しても
倒しても一向に減る様子がなく、
それどころかその勢いが上がりやがった。
今は国王軍と冒険者で協力してなんとか
この町を守れているが……時間の問題だな!」
「でも、希望はあります!」
40後半のスレンダーなメガネを
かけたイケオジが俺達の話に入ってきた。
「ギルマス、こんなところで良いのか?」
「え~現場に出て頑張っている人を
出迎えるのも長としての務めですから」
「ふん!そうかい、なんとか今回も
なったよ」
「ガルムさんには感謝しかありません!
貴方がいなければここはもっと酷い状態
だったでしょう」
「はぁ!大した事ねぇーよ!
……それで希望ってのはあれか!」
「はい、勇者様この町に来られました」
「そうか……これで希望は二つだな」
………………▽
◆さくらの視点
「アルヴィア姫、応援を呼びましょう。
早く怪我人の治療をしないと……」
「さくらさん、落ち着いて下さい。
もちろんです。すでに手配は済んでいます。
……ただ早くても1週間はかかるでしょう。
それまでここが保てば良いのですが」
私達の護衛として国王軍の50人を
連れて来ましたがこれだけ被害が出て
いるとは、魔術師も居ますが回復魔法には
大量の魔力を消費する。とてもこの人数に
対応出来ません。どうすれば……
「アルヴィア姫、さくら、
一花(いちか)さん私達が今出来ること
をしよう。私達には治療が出来ない。
なら早く原因を見つけてそれを
ふっ飛ばせば良いんだよ!
そうすればこれ以上被害は増えない。
陽菜乃(ひなの)から強い意志、
覚悟を感じる。私は無言で頷いていた。
私達はまず冒険者ギルドから
情報を得るため向かう。
ギルドに入るとそこには驚くべき光景が
広がっていた。
…………………▽
◆キャンベルの視点
想定していたより被害が多い、
応援要請の必要はありそうだけど、
それだけじゃダメね!教会から回復魔法が
出来るシスターと司祭様を呼びないと、
死人が増える一方だわ。
周りを見渡しているとふと
蒼字(そうじ)の様子がおかしい
何かを考え悩んでいる。この状況を見て
悲しんでいるのかもしれない。
ここは私が受付嬢として冒険者の心のケアを
いえ、同じパーティの仲間として話を
しなければ、
「あ!そうじー……」
「良し!決めた!」
私が声をかけようとした時、
突然何かが吹っ切れた
ような顔で声をあげた。
蒼字(そうじ)は声をかけかけた
私に気が付き、
「キャンベルさん、これをお願い
しても良いですか?」
蒼字(そうじ)は私に200枚程ある
薄い紙のような物を渡した
「それは『絆創膏(ばんそうこう)』
って言って『キュア』と同程度の効果が
あります。軽傷の方に使って下さい」
これってリルちゃんの店で出してる
話題の商品
「ジャンヌ!」
「は!何でしょうご主人様」
「ジャンヌも回復魔法は使えるよな」
「はい、しかし……申し訳ありません。
あまり得意では」
「いや、気にするな。まずはできる範囲の
ことをやろう俺も出来ることをやる」
「はい、分かりました」
ジャンヌはすぐに怪我人のもとへ
移動する。
私も今できることをしないといけない。
ジャンヌを追うように私も走っていった。
◆ガルムの視点
「ガルムさん、ここのギルマスに
お願いして貰いたいんですけど」
「何をお願いするんだ」
俺は手をアゴにあて考えるように話を聞く。
「どこかの小部屋を借りたくって」
「は?そこで何するんだ」
「怪我人の治療をしても良いですか?」
「は!?お前回復魔法まで使えるのか」
俺は驚いた!元々こいつは筆を使う
かなり特殊な戦い方をするし、
召喚魔法も使う。さらに回復魔法だと!?
いくら何でも多彩過ぎる。
本当にこいつ……何なんだよ?
「あ~分かった待ってろ。
すぐにギルマスを呼んでくる」
その後ギルマスに話を通し
小部屋を借りることができた。
「ガルム……本当に……この方なんだな」
ギルマスのナトリが戸惑いながら
俺に聞いた。俺としても今の状態では
自信を持って返事がしにくい……
蒼字(そうじ)は何故か黒ずくめの格好を
して顔も見えないかなり怪しい姿を
している。
「な~その格好………どうにかならんのか」
俺は不満を蒼字(そうじ)に言うと、
「すいません、出来るだけ正体が
バレたくないんです。協力して下さい」
「ま~仕方ないか……」
俺は不満を持ちつつも、今は怪我人の
治療を優先したいので我慢することにした。
「ガルム、患者だ、どこに運べば良い」
「あ~こっちのベットに頼む!」
患者を二人の冒険者がベットに運び終わると
ナトリ意外は出ていった。
「すいません、ナトリさんも出ていって
貰えませんか!」
「悪いが、そうはいかない。私はここの
ギルマスです。君がすることを見届ける
義務がある」
ナトリは強い口調で蒼字(そうじ)
言い放ち睨みつける。
「………ナトリさん、ここで見たことを
公言しないで頂けますか?」
「あ~もちろんです。約束しましょう」
「そうですか、それは助かります!」
蒼字(そうじ)はそう言うと、
患者の方に歩き。
『治癒の朱墨(しゅずみ)』
一瞬だった、患者には左肩から
右脇腹にかけて大きな切り傷があったが、
それが綺麗さっぱりと消えてしまった。
これは魔法か?……魔法だよな……
俺はしばらく呆然と患者が怪我が
治り喜んでいる姿を見ていた。
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