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第一章 異世界暮らし
第20話 VSサイクロプス
しおりを挟む9階層 ただいま休憩中
「な~な~蒼字(そうじ)、今のどうよ!
俺の動き、縫うような小刻みな動きからの
首への鋭い一撃」
リッシュは双剣を動かしながら先程一人で
倒したミノタウロスの話をしている。
とにかくテンションが高い。それにさっきから
休憩のたびに声をかけてくれるようになった。
最初はキツイイメージだったが、
今はフレンドリーで喋りやすい。
「みんな聞いてくれ」
オーバンさんが真剣な顔で話をする。
「とうとう次は目的地の十階層だ!
この下にはサイクロプスがいる。
いいか!みんなビビんなよ!」
オーバンさんは全員に気合いを入れ
それに応えるようにみんなの顔つきが変わる。
俺もなんだかドキドキする。これが冒険者か~
オーバンさんの説明によると
ボス戦は俺のイメージとは少し違った。
どこか部屋みたいな所で戦うのかと思って
いたけど、基本的には階層を徘徊している。
いつ遭遇するかは分からない。もしかしたら
降りた瞬間ばったり、なんてこともあるから
常に緊張感を持って挑まないといけない。
サイクロプスについて説明しておこう。
一つ目の巨人、全長10メートル以上と大きく、
その力はそこらの魔物とは比較にならない。
ただし知能はそれ程高くないので罠などを
仕掛けて倒すのが無難らしい。何にしても
Aランク指定の強敵である。
………………▽
10階層に到着
「静かだな」
この場所は静寂に包まれていた。基本的には
ボスの魔物しかこの階層にはいないらしい。
しかしこの静けさが恐怖心を増長している気が
して俺は喉を鳴らした。
ここからは罠を仕掛ける準備に取り掛かる。
罠に使うのは閃光箱、鉄の鎖、ネバネバ玉だ!
作戦はこうだ!
まずはサイクロプスを発見して、わざと見つ
かる。閃光箱が仕掛けられた位置に誘導し、
誘導者が通り過ぎたら閃光箱を発動、相手の
視界を奪い足に鎖を結び攻撃しつつ倒れさせ
ネバネバ玉で動きを抑制、ここからはひたすら
攻撃をする。
ここで一番危険なのは………
「もちろん誘導役は俺がやる‼」
リッシュは自ら手を挙げるが、もちろん
オーバンさんもリーザさんもいい顔はしない。
「わかってると思うけどこの中で身軽で早いのは
俺だ!最も成功率が高い」
オーバンさんは一度目をつむり少し考えてから
「分かったリッシュ頼む!」
リーザさんも心配をしているが、
納得はしているみたい何も言わない。
「それじゃまずはサイクロプスを探すぞ!」
オーバンさんの号令のもと俺達は歩き出す。
突然の攻撃を受けるかもしれないと思うと
慎重に動かざるおえないのだが、これが辛い
常に神経を張る為、体力の消耗も激しい。
しばらくして、俺達は運が良かった。
何か岩でゴソゴソと作ってまったくこっちに
気がついていないサイクロプスを発見、
全員が笑みを浮かべる。
リッシュは待機、残りのメンバーでそれぞれ
罠の準備を行い。作戦は開始された。
オーバンさんのハンドサインでリッシュが
石をサイクロプスの頭に投げると見事にヒット
頭をかきながら、振り向きリッシュを見つけると
立ち上がり、リッシュを追いかけ始める。
「ドスンドスン」と足音を鳴らしリッシュを
追いかける。
サイクロプスは早くはないが一歩が大きい為
みるみる追いつかれるリッシュ、しかし罠まで
あと少し、逃げ切るには十分だ、しかしなぜか
リッシュは足を止めてしまった。
オーバンは叫んだ
「リーーーシュ何をしている早くこっちにこーい」
しかし返って来た言葉は意外なものだった
「とーちゃん逃げろーうしろだーー」
オーバンは勢い良く後ろを振り向く。
「ば、ばかな!ありえね~」
オーバンは驚愕する。
後ろにはもう一体サイクロプスがいた。
サイクロプスが鉄の棍棒を振り上げ攻撃をする
瞬間リーザさんの魔法が顔面にあたり攻撃
位置がズレ、オーバンさんは直撃を免れたが、
吹き飛び壁に激突動かなくなった。
「とーちゃんー」
リッシュの叫びが木霊するなか、リッシュの
後ろからもサイクロプスが追いかけてくる。
俺達は挟まれる形で完全に逃場を失った。まさに
絶対絶命の状態である。
「蒼字(そうじ)さんどうしましょ~」
リルが助けてほしそうな顔をしている。もちろん
「任せろリル」
たぶん今の俺ならなんとかなるだろう!
俺は取り敢えずリッシュの方に走り
リッシュを踏み潰そうとしている足に
飛び蹴りをかます。サイクロプスはバランスを
崩したところで、
『縛筆(ばくひつ)』
サイクロプスの動きを封じる。
しかし力自慢の魔物、そう長くは持たない。
俺はリッシュの手を取り逃げる。
「蒼字(そうじ)……とーちゃんがかーちゃんが……」
泣きそうな顔で俺に助けを求める。
もちろん助けに行きます。
リッシュをリルのいる場所まで運ぶと、
そのままもう一体のサイクロプスのもとに
向かう。
リーザさんと他のハゲーズはオーバンさんの
方にサイクロプスが行かないように注意を引き
ながら逃げている。
俺がサイクロプスの前に立つと「ギロッ」と
目がこちらに向く。鉄の棍棒を俺に目掛けて
振り下ろす。
すごい衝撃と迫力、こわ~い
しかしそんな事はお構いなしで俺は棍棒に乗り
そのまま駆け上がり、顔面目掛けて飛び蹴りを
かます。
やっぱりサイクロプスは目が弱点だよね!
………いや考えると誰でも目は弱点か~
倒れるサイクロプスを横に、落下しながら
どうでもいいことを考える余裕がある。
倒れたところをハゲーズが作戦通り鎖で縛り
ネバネバ玉を使って拘束、俺はオーバンさんの
もとへと向かった。
その場所にはすでにリルとリッシュが居て
手当てをしている。
「とーちゃんしっかりしろ!」
「リッシュ、すまね~俺のことはいい、
早くかーちゃん達と一緒に逃げるんだ~」
「いやだ!とうちゃんを置いてなんていけない」
涙を流し語り合う親子、俺はリルの方を向くと
「お願いします」と言われた。
う~んどうしようかな、オーバンさんな怪我の
具合からすると動けないけど命に関わる重症って
感じじゃないからよっぽど治せるんだけど、二人
のやり取りを見ているとなんか入りづらいな~
「蒼字(そうじ)さん早く治さないと、
どんどん家族の感動話が出て、あとで二人が
恥ずかしい思いをして、あとで落ち込むことに
なりそうなんですけど」
ま~この二人あんまりそう言うこと言わなさ
そうだから逆に良いような気もするけど、そろ
そろリッシュの生まれた時の話まで進んだし
良いかな。
『治癒の朱墨』
「リッシュが生まれた時はリーザと一緒に
泣いた………あ⁉痛くないぞ」
「とーちゃん動くな!傷口が広がる」
「いや~全然痛くないんだ」
二人は傷口を確認している。
……………▽
「リル、俺はあと一体の動きを止めてるやつに
ドドメを差してくるからこっちはヨロシク~」
「はい~蒼字(そうじ)さんいってらっしゃ~い」
こうして10階層のボス討伐任務を達成した。
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