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第一章 異世界暮らし
第4話 あの可愛いリルはいずこへ?
しおりを挟む牢屋を脱出した俺とリルは慎重に隠れ
ながら進む。しばらく牢屋がいくつか続き
その先で問題が発生した。
「なにあれ!こわ」
牢屋の先には筋骨隆々の斧を持った門番が
立って居た。しかも普通の人じゃない、
あれはミノタウロスだ!
「リル、あれも獣人なの?」
なんとなくだけど気になったから聞い
てみた。
「いいえ違います。あれは魔物ですけど……」
当たり前のことだったみたいで、リルが
少し呆れたような顔をしている。
「オホン、リルさん次はどうしようか」
誤魔化しながら、さっき素晴らしい作戦を
立ててくれたリルに聞いてみる。しかし
リルの反応がおかしい、もしや私みたいな
小さな子に聞くなんてダッサ~と思っている
のでは?いやリルはそんな悪い子じゃない
はず。
「蒼字(そうじ)さん蒼字(そうじ)さん」
リルの表情が青ざめている。なんで?
リルが指を差すその先に目線を向けると、
くっさい息がかかる程近くに牛顔があった。
「うぎゃー」ミノタウロスは2体居たのだ!
俺はリルを抱えて走る。しかし位置的に
挟まれた状態になりすぐに足を止めた。
ミノタウロスは以外にも襲いかかっては
来ない。もしかしたらリルに危害を加えない
ように命令されているのかもしれない。
しかし逃がしてくれるわけでもないか、
徐々に2体のミノタウロスが接近してくる。
これは悠長にしている場合じゃないか、
俺は懐から筆を出し構える。
「蒼字(そうじ)さん?」
不安そうな目で俺を見るリル。
この技は人に向けて使うなって言われて
いたけど魔物なら問題ないよな!
………………▽回想
「この術は人に決して向けてはならんぞ!」
「じいちゃん今度はなにを教えてくれるんだ!
ワクワク」
※当時10歳の蒼字(そうじ)
「もちろんカッコいい技じゃ期待せい!
だが危ないから真面目にやるんだぞ。
良いな!」
「我ら霊能力者は霊と対話し浄化また状況に
応じては滅却することもある。そのどちらも
霊力を扱い行うのだが妖怪を相手にする
場合は少し対応が変わってくる。
対話が可能であれば良いのだが殆どの
場合はこちらに耳を傾けることはない
じゃろう。その場合は滅する必要がでて
くる。妖怪は実体を持っていることが多い。
ではどうやって倒すかだが、どう思う蒼字
(そうじ)」
「う~ん……実体があるなら蹴るとか殴る
とか?」
「そうだな間違っちゃーいないな、けどな
素手でゴリラやライオンと闘うくらいの
リスクがあるからやめとけ、人とは身体
能力が違う」
「それじゃーどうするんだ?じいちゃん」
「霊力を実体化させるんだ。
こうやってな!」
じいちゃんの手のひらに丸い光の玉が
現れた。
「おーじいちゃんスゲー」
「そうだろうそうだろう、それじゃー
蒼字(そうじ)もやってみるか、霊力を
感じることはできるからまずは、身体の
一部に纏わせる練習、これがうまく行った
らさっきじいちゃんがやったみたいに放出
して維持、最後は物に纏わせれれば
一人前だ。最初のうちは難しいから日頃から
身に着ける物にしろ、やりやすいから、
蒼字(そうじ)なら筆とかが良いん
じゃないか!」
「おーし、じいちゃん俺!か○は○波か
波○拳を打てるようになるぞ!」
「おお、夢は大っきい方がいいな!
たぶんあんなの打ったらその瞬間霊力
切れて死ぬけどな」
……………▽回想終わり。
「じいちゃん、ミノタウロスなんて妖怪
みたいなもんだし問題ないよな!」
俺は筆を斜め後ろに構え霊力を纏わせる。
「リルしゃがめ、早く」
「はい!」急いでリルはしゃがみこむ。
「うまく行ってくれよ!」筆を横に一直線
に引き回った。
…………『一文字 一閃』…………
墨で空中に『一』を書くように黒の刃
が飛来、2体のケンタウロスの腹部に
赤い線が入り上半身がズレ落ちた。
「スッゲー」あまりの威力に自分がドン
引きする。
「なんでやった本人が驚いてるんですかー」
「え!うん思いの外ね威力があったんで
びっくりしちゃった」
異世界に来て牢屋での出来事から
身体能力が急上昇していることが分かって
いた。だから今の術もかなり手加減した
のだが、それでこの威力、もう少し力の
調整が必要みたいだ。
「蒼字(そうじ)さん魔石を拾っても良い
ですか?」
リルが目をキラキラさせている。
魔石とは?
「お、良いけど魔石なんてどこに落ちて
るんだ?」
「蒼字(そうじ)さんの目は節穴ですか?
それとも頭?」
リルになんか凄くトゲのある言われ
かたをした。
さっきまでの可愛いリルはどこに
行ったのー
「魔物を倒したんですからあそこと
あそことにあるじゃないですか!
良く見て下さい」
ホントだ赤い2センチくらいの宝石が
ある。ゲームでもあるけど魔物を倒すと
宝石が出るんだ。
いっぱい倒すと大金持ちになれそう。
「な~リル、魔石って売れるのか?」
「はぁー」今のドスの効いた声はどこから
だろうな~
聞こえない聞こえない。しかしリルの
呆れ顔を見た瞬間俺は崩れ落ちた。
初めに会ったリルじゃない。
「その…ずっと気になってたんですけど、
もしかして蒼字(そうじ)さんって勇者様
ですか?」
「え?」崩れ落ちていた身体を起こし、
「いや、違うよ!俺は勇者じゃない。
けど異世界人なんだ」
「やっぱりとてもお強いですし服装も見た
ことのないものでしたか、あと言動が頭が
おかしいな人だと思いました」
「リル、もう許してくれる。これ以上は
へこみたくない」
「あーーすいません蒼字(そうじ)さんが
異世界人って知らなかったのでこちらの
常識がなかったんですね」
「そうなんだ!リルここ出たら色々教えて
くれる」
「はい!喜んで」
笑顔で答えてくれる。最初の可愛いリルが
そこに居た。
……………『良かった!』
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