勇者がアレなので小悪党なおじさんが女に転生されられました

第7章 王都への帰還

第23話 カロリーネの手並み

　カロリーネは、城門の前にリヒャルト王とサヴォア伯爵、ヴォーデモン男爵の首をさらす。彼らの頭は魔人の本性を現した化け物の姿のままである。
　彼女は集まった民衆を前に演説をする。
　「わが父は、人身売買にかかわるだけでなく、魔族とも取引をしていた。この首が証拠だ。」
民衆はざわめく、カロリーネが民衆を見回すと静かになる。
　「心配はいらない。我々は、父たちを討ち取るとともに力を貸していた７大魔族の１人嘆きのグリフを討ち取った。」
民衆から安堵の声が聞こえ始めるとともにカロリーネを称える声が聞こえ始める。カロリーネは右手を上げて民衆に言う。
　「私は、人身売買組織チョチョリクンを壊滅するとともにこの国を正そう。皆さまの力を私に貸してほしい。」
民衆は熱を持ち始める。
　「カロリーネ様ー」「女王になってくれー」「新女王の誕生だ」「「「カロリーネ、カロリーネ」」」
民衆は彼女一色に染まる。もう、カロリーネが女王にならなければおさまりが着かないだろう。リヒャルト王が討たれてから１週間経つと続々と貴族たちが王都にやって来る。
　皆、カロリーネに挨拶に来たのだ。彼女は宰相に自分のことを認めさせる。教皇はカロリーネを認めようとしなかったが彼女が今後の地位を約束すると態度を変える。
　カロリーネは外堀を埋めてから父に近かった者たちに認めさせていった。
　俺はアネットやローズ、カスパーに元の信頼を取り戻そうとした。アネットは俺に言う。
　「親友だと思っていたわ。でも今は怖いのよ。時間をちょうだい。」
俺は待つしかなさそうだ。ローズは頭を抱えながら言う。
　「私があなたに教えていた時、もっとすごいことが出来たのでしょ。私は役に立ったのかしら。」「私は先生に教えられたから魔法が上達できたのです。魔力のことを隠していたのはすみませんでした。」
　「謝らなくてもいいわ。見抜けなかったのは私が未熟だったからでしょ。」「私はずっと魔力を抑えて生活していました。」
　「私は魔力を抑えていることに気づけなかったんだわ。」「先生・・・」
ローズは自己嫌悪に落ち込んでしまっている。どう声をかければいいのかわからない。カスパーは落ち着きを取り戻した様子で俺に言う。
　「アニエス様のおかげで再び冒険が出来ました。アニエス様のことはショックでしたが、そう言うものだと考えることにします。アニエス様、力に飲まれないでくださいね。」
俺にとってカスパーの言葉はありがたかった。