勇者がアレなので小悪党なおじさんが女に転生されられました

第7章 王都への帰還

第22話 俺、疑われる

　俺が立ち上がろうとするとアネットが高速詠唱してウインドバインドで俺を拘束する。俺は突然両腕を拘束されて地面倒れる。アニタがアネットに抗議する。
　「アニエス様に何をするんですか。」「ごめんなさい。こうでもしないと落ち着けないわ。ウインドバインドなど気休めにもならないでしょうが。」
俺はアネットたちに話をするために言う。
　「私は何もしないわ。友達でしょ。」「その友達に隠していたのよね。信用できないわ。」
俺は仕方なくうつぶせになつている体を仰向けにする。するとローズが警告する。
　「不用意に動くと攻撃するわよ。」「分かりました、アニタ体を起こしてちょうだい。」「はい。」
アニタは俺の上半身を起き上がらせる。それだけで、アネット、ローズ、カスパーは後ろに下がる。これはかなり警戒されているようだ。説明しても理解されるか疑わしい。
　カロリーネが広場に入るとローズが警告する。
　「カロリーネ様、近づいては危険です。アネットは魔族かもしれません。」「私は人間です。魔力が大きいことを隠してきましたけどアニエス・ド・ボドリヤールと言う人間です。」
ジルベールがアネットたちに言う。
　「アネットは私の娘に間違いない。」「どこかですり替わっているかもしれません。」
　「私が言うんだ。彼女はアニエスだよ。」「信じるわけにはいきません。」
　「私は生まれた時から強大な魔力を持っていました。ローズ様が家庭教師に来た時、ローズ様が人間では魔力が大きい方だと知って、騒ぎにならないように魔力を抑えたのです。」
カスパーが俺に言う。
　「私は多くの魔法士に会ってきたがあなたのように大きい魔力は規格外だ。勇者ナツキ様の魔力も他に会ったことがないほど大きいが、あなたは別格だ。」
　「では、私が人間でないとしたら何だというのです。」「魔王ミームよ。」
　「私が魔王なわけないでしょ。」「魔王ミームは美少女の姿をしているというわ。あなたほどの美少女他にいないでしょ。」
　「確かに美少女ですが人間です。生まれ変わる時、女神ティアに人の１０倍の魔力を与えられたのです。」「生まれる前の記憶があるというの。」
　「そうです。私は別の世界で男でした。死んで女神ティアに勇者を導く代償として大きな魔力を与えられてのです。」「それを信じろとでも言うの。」
　（何、暴露しているのよ。転生のことは秘密にしてほしかったのよ。）（それより身の潔白を晴らしてくださいよ。）
　（それはできないわ。自分で何とかして。）（この駄女神！）
これでは、身の潔白は証明できない。アネットたちは完全に疑っている。これでは魔王退治どころではない。
　カロリーネが再び庭に入って来る。カスパーが彼女に言う。
　「危険です。さがってください。」「アニエス様の拘束を解いてください。」
　「しかし・・・」「嘆きのグリフを倒した功労者ですよ。アニエス様がいなかったら私たちは死んでいたのですよ。」
　「分かりました。」
アネットはウインドバインドを解く。俺はカロリーネの前に膝まつく。
　「アネット様、見事です。これからも我々に力を貸してください。」「はっ。」
　「それからアニタ様、あなたも見事でしたよ。」「ありがとうございます。」
アニタは片膝をついて礼を言う。これでアネットたちの追及はなくなった。しかし彼女らの信用が戻ってきたわけではない。