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150話 九郎の失恋

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 九郎は、金縛りにあったまま眠りにつくと、玉枝は金縛りを解く。彼女は横になることなく、座り続ける。
 玉枝は九郎の寝顔をいとおし気に見続ける。彼女にとって九郎の気持ちは困るものであるが、怨霊である自分を愛そうとしてくれことは心底うれしい。
 彼女は朝になるといつものように朝食を作り始める。しばらくすると九郎が起きてくる。
 玉枝は九郎に声をかける。
 「おはよう、気分はどお?」「玉枝さん、おはよう。気分はすぐれないよ。」
 「ご飯食べてね。」「うん、いただきます。」
九郎は顔を洗いに行く。彼は鏡で自分の顔を見る。お前は何やっているんだ。鏡の中の自分に問いかける。
 昨夜も玉枝が金縛りで止めなければ、また最低の気分を味わっていただろう。それでも彼女を泣かせてしまっている。
 自分は彼女に酷いことをしてしまっている。どうすればいい・・・
 九郎が戻るとテーブルに朝食が並べられている。ご飯にだし巻き卵、アジの干物に大根の味噌汁である。
 彼は「いただきます」をして食べ始める。玉枝は黙って九郎が食べるのを見ている。その表情は昨夜と違って穏やかである。
 九郎は、玉枝に今の気持ちを伝えようとする。
 「玉枝さん、昨日はごめん。でも君のことを好きになってしまったんだ。」「その話はやめましょ。これまで通りの仲でいましょう。」
彼女の顔は微笑んでいるが目は本気であることを言っている。九郎は、玉枝が自分の気持ちにこたえてくれないのだと理解する。
 それでも彼は諦めることが出来ない。九郎は拒絶されることを承知で言う。
 「僕は、玉枝さんのことが好きです。君が答えてくれなくても好きなままでいます。」「九郎ちゃんが私をどう思ってもこれまでと関係は変わりません。」
 「でも、僕はうそをつけないよ。」「その気持ちをあやめちゃんに向けてください。」
玉枝は九郎の気持ちはうれしいが、それにこたえることはできない。彼女は、九郎の言葉をはねつける。
 九郎は玉枝の言葉を予想していた。それでも彼女に対する恋心はなくすことが出来ない。
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