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140話 燐火の原野

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 陰陽師の鬼たちは、呪いの中を呪物に向かって進む。しかし、1匹、また1匹と呪いに圧殺されていく。
 市松人形が動き出す。人形は呪いの中を漂いながら部室の窓へと向かって行く。
 呪いが見えない人には市松人形が宙を浮いているように見えるだろう。
 水鏡たちは、逃すまいと次の鬼を呪いの中に飛ばす。
 呪いは窓のガラスを割りクラブ棟の外へと流れ出る。
 外には九郎と玉枝と数人の人がいた。呪いが見えていない人は突然窓が割れ、ガラス片が落ちてきて驚いている。
 窓の近くにいた男子が危うくガラス片に当たりそうになり叫ぶ。
 「あぶねー、誰だ割った奴はー」
そして上を見る。そこに呪いが落ちてくる。男子は呪いに飲まれる。九郎が叫ぶ。
 「危ない!逃げて。」
他の人たちは訳が分からず立ち尽くしている。呪いは流れ落ちてきて次の人を飲み込もうとする。
 九郎は、思わずその人の手を引っ張って助けようとする。しかし、間に合わず九郎も一緒に呪いに飲み込まれる。
 九郎は呪いの中で倒れる。玉枝は目を見開く、彼女はとっさのことで九郎を止めることが出来なかった。
 玉枝は、燐火を巨大な炎にして呪いを焼き、九郎の元に駆け付ける。九郎は生きていたが意識が無い。
 彼女は九郎を抱きしめる。彼女の口が声にならず動く「ごめんなさい」九郎をいとおし気に見つめる。
 玉枝の上には巨大な呪いの塊に包まれた市松人形が浮いている。彼女は上を見上げる。
 その目は、憎しみに満ちており、無言で「殺す」と告げている。
 クラブ棟の外の風景が変わり始める。一面、青白い炎の野原に変わって行く。
 玉枝の力が現実を侵食していく。呪いのうつろな目が玉枝を捉える。
 水鏡たちは呪いがいなくなった部室に入り、窓から外を見て絶句する。
 人形は、玉枝に向かって呪いを飛ばす。しかし、燐火の原野の前に一瞬で焼き尽くされる。
 燐火の原野は炎の渦を作り始める。市松人形は上へ逃げようとする。
 炎の渦はクラブ棟を飲み込むほどの大きさになり、市松人形を呪いごと飲み込む。
 人形は炎の渦の中で焼かれて砕け、跡かたなく消える。
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