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21話 水族館へ行く

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 九郎はいつもより早く目が覚める。今日は、あやめと水族館へ行く日である。
 玉枝が料理を始める。今朝は、はちみつをたっぷり塗った食パンに目玉焼き、焼いたソーセージ、サラダである。
 九郎が着替えると玉枝は着ている服を白い花柄のワンピースに変える。
 2人は、時間に遅れないように出かける。玉枝が言う。
 「九郎ちゃん、昨日はよく寝られた。」「緊張してよく寝られなかった。」
 「あやめちゃんとするときのことを考えていたの。」「ちがいます。」
九郎は否定するが少しくらい仲が進展することを考えていた。でもやらしいことは考えていない、夢の中以外では。
 彼は夢の中であやめとキスをする夢を見ていた。玉枝には言えない、からかわれるだろうから。
 5分前に久沓神明社に着く。あやめの家のインターフォンを押すとすぐにあやめが出てきて九郎の手を引っ張る。
 「翼君、行きましょ。」「社本さんどうしたの。」
後ろから一久の声が聞こえる
 「翼君、あやめをよろしく。」
あやめは父親にからかわれるのを避けるため、速攻で離脱したようだ。2人が鳥居まで来るとあやめが
 「ごめんね、父がテンション高かったから逃げてきちゃった。」「構わないよ。社本さん、服かわいいよ。」「ありがとう。」
九郎が服を褒めたのは玉枝に言われていたからである。2人はバス停でバスに乗る。そして、列車に乗り換え30分程乗る。
 駅を降りると水族館行のバスに乗る。あやめは九郎に言う
 「水族館は久しぶりよ。」「僕もそうだよ。」
 「何か楽しみにしていることある。」「イルカショーとペンギンかな。」
本当はあやめと水族館へ行けることが楽しみだがあやめには言えない。
 水族館に着くとゲートを通るが九郎は子供の霊を見つける。九郎は見えないふりをする。
 まずはアーチ形の水槽の下をくぐる。イワシの群れが円を描ききれいである。そこを通りぬけると大水槽がある。
 説明では、太平洋側の近海の魚を展示しているらしい。あやめが目を輝かせて言う。
 「きれいね。あの魚大きいい。」「ジンベイザメだって。」
九郎は後ろが気になる、ゲートにいた子供がついて来ているのだ。
 九郎とあやめは水槽をバックにスマホで写真を撮る。
 次に淡水魚の展示エリアに行く、ここでも子供の霊がついて来ている。
 「九郎ちゃん、気づいている。子供の霊、普通じゃないわよ。」
玉枝が警告して、九郎はうなづく。
 あやめは楽しそうにしている。あやめには気づかれたくないと思う。今日のデートを楽しく終わらせたいのだ。
 熱帯の展示エリアに行く。ここにも大きな水槽がある。あやめは九郎の腕を引っ張り、スマホで写真を撮る。
 深海の展示エリアに行くと薄暗くなっている。ここで子供の霊に変化が出る。霊は黒くなり大きな影に変化する。
 そして、あやめに向かっていく。九郎はあやめを抱きしめ、かばう。あやめは驚くが、さらに目の前で青い炎が空中で燃える。
 玉枝が燐火で黒い影を燃やして消し去ったのだ。九郎はあやめの抱き着いたままだ。
 「翼君、そろそろ離してくれる。」「あっ、ごめん。これはその・・・」
 「守ってくれたんでしょ。」「分かってくれる。」
 「また、青い炎が出たわよ。」「ゲートから子供の霊がついて来ていたんだけど、突然、大きな黒い影になって社本さんに向かっていったんだ。」
 「守ってくれてありがとう。でも、青い炎の説明になっていないわよ。」「それはその・・・」
玉枝が九郎に言う。
 「そろそろ隠し切れないんじゃないの。」「どう説明するんだ。」
 「私に任せて、大丈夫よ。」「人のいないところで説明しよう。」
九郎は小声で答える。あやめがムッとして言う
 「何、独り言いっているの。」「ごめん。あとで人のいないところで説明するよ。」
 「本当ね。」「嘘は言わないよ。」
 「なら、水族館。」「楽しみましょ。」
あやめは機嫌を直す。九郎はこれであやめとの仲も終わりかもしれないと思う。
 九郎の腕にはあやめの柔らかくて華奢な体を抱いた感じが残っている。
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