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17話 あやめ部屋に来る

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 九郎が目を覚ますと目の前に玉枝の顔がある。きれいな寝顔である。唇は桜色で形が整っている。
 彼は頭の中で「これは怨霊、これは怨霊」と呪文を唱える。
 すると玉枝が目を開けて言う
 「九郎ちゃん、キスしてくれないの。」「お、起きてたの。」
九郎はキスしそうになった自分に「セーフ」と判定を下す。
 玉枝は起きて朝食を作り始める。九郎は心臓の鼓動を抑える。そして、玉枝は怨霊なんだと自分に言い聞かせる。
 朝食は、ごはんに卵焼き、サラダ、みそ汁である。
 九郎は玉枝に言う
 「おいしいよ。」「ありがとう。作る甲斐があるわ。」
玉枝は喜ぶ。
 大学へ行くため九郎が着替えると玉枝も服装を変える。
 今日は、白のシアーブラウスに黄緑のスカートである。
 九郎は誰も見えないのに服を毎日変える必要があるのかと思う。
 九郎は玉枝に聞く
 「毎日、服変えているけど何かあるの。」「九郎ちゃんが見ているでしょ。」
 「僕は同じ服でも構わないよ。」「気分の問題よ。女性はきれいに見てもらいたいのよ。」
 「うん、今日も似合っているよ。」「よろしい。」
九郎と玉枝は大学へ出かける。
 大学へ行く途中、あやめと行き会う。
 「社本さん、おはよう。」「翼君、おはよう。早く出て正解だったわ。」
 「早く家を出たの。」「うん、早く出たら会えないかと思って。」
 「これからは待ち合わせする。」「いいわよ。帰りにどこで待ち合わせるか決めましょ。」
 「今日も一緒に帰れるね。」「そうね。」
九郎とあやめは一緒に大学へ向かう。
 大学に入るとどこからともなくつよしが声をかけてくる
 「九郎、おはよう。」「おはよう、つよし。」
 「今朝は社本さんと一緒か。」「途中であったんだ。」
3人が教室に入って席に着く。しばらくすると美琴が教室に来てつよしの横に座る。
 2時限目の講義でレポートの課題が出される。4人は昼食を学食でとる。
 いつものように九郎とあやめは弁当で、つよしと美琴はランチである。
 午後の講義も無事終了する。つよしと美琴はハイキング部に顔を出すと言って別れる。
 九郎とあやめは一緒に大学を出る
 あやめが九郎に聞く
 「翼君のアパートどこなの。」「歩いて10分くらいだよ。」
 「近くね。寄っていい。」「いいよ。通り道だから。」
九郎はあやめをアパートに案内する。あやめはあきれて言う。
 「私の通学路にあったのね。」「うん、黙っていてごめんね。」
2人は九郎の部屋の205号室に行く。あやめが思い出したように言う。
 「ここ、お父さんがお祓いしたところよ。すぐに入居者が出ていくって聞いたわよ。」
 「それで格安で借りているんだよ。」「大丈夫なの。」
 「僕、霊とか見えるでしょ。」「そうか、何もいないのね。」
怨霊の玉枝さんがいるとは言えない。
 「中入る。」「お邪魔するわ。」
あやめは部屋がきれいに片付いているので感心する。これは玉枝のおかげなのである。
 九郎はコーヒーを淹れて出す。菓子は玉枝が買わないのでない。
 九郎は緊張する。自分の部屋に友達が来たことは全くないのだ。それも気になっている女子が部屋に来て2人きりである。
 「翼君、趣味は何なの。」「本を読むくらいかな。」
 「これ読んでいるの。」「そうだよ。」
本はラノベを何冊か持って来ている。
 「面白いかな?」「僕は好きだけど。好みに寄るよね。」
 「1冊借りてもいい。」「いいよ。これなんかどうかな。」
九郎は一番気に入りの本を渡す。
 「九郎ちゃん、エッチな本じゃないでしょうね。」
玉枝が心配する。
 「ありがとう。借りるわね。」「うん、気に入るといいかな。」
 「明日から迎えに来るね。」「いいよ。」
 「どうせ通り道だから同じでしょ。」「お願いします。」
 「そろそろ帰るね。」「スーパーまで一緒に行くよ。」
玉枝が九郎に言う
 「何もしないで帰しちゃうの。」
九郎は玉枝の言葉を無視する。九郎はあやめとの関係が今の状態でも十分に幸せである。
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