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第30話 たすくの叫び

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 古馬沙也加は朝宮駅の近くに探偵事務所を構えている。
 その事務所に妙齢の黒づくめの女性が訪れる。
 沙也加は、直ぐその人物が五條美月と気づき身構える。
 「あら、私を知っているの。」
美月が微笑みながら言う。
 「何の用ですか。」
 「私は客よ、良賢ていうじじいが探っていた物を探してもらおうと思って、知っているでしょ。」
 「何のことでしょう、お年寄りをそのように言う人の依頼は受けられません。」
 「言い方を変えるわ、良賢から送られた物を渡して、言い値で買い取るわよ。」
 「そのようなものはありません、帰ってください。」
 「私は、舟戸の血縁だから警戒していたけど、あなたは、ただの子猫ちゃんね、殺されたいのかしら。」
沙也加はペットボトルから水を出し、水の刀を作る、美月は呆れた顔をして言う
   「何それ、まずは水で陣を作るんでしょう、もういいわ死になさい。」
美月は右手を振り、何かを飛ばす、沙也加は何かを刀で切り裂くが、二つに分かれて沙也加に張り付く。
 何かは沙也加の顔と左肩に張り付くとうごめき始める。
 それは、汚物のような気味の悪い物で、沙也加は呪いにかけられたことに気づく。
 美月は、沙也加は終わったとばかりに良賢から送られた物を事務所の中を探し始める。

 沙也加は急速に呪いが広がっていくのを感じる、全身を何か冷たい物で掴まれているようで苦しく寒い。
 丹田に力を籠めようとするか集中できない、沙也加の瞳から意思の光が切れていく。
 そして沙也加は暗く冷たい闇の中に沈んでいく。
 彼女の全身は呪いに包まれ死を待つばかりになっている。

 沙也加は深い闇の中で声を聴く何を言っているのか分からない。
 冷たさの中にぬくもりを感じる、きっと気のせいだ。
 彼女はぬくもりに包まれる、何かが起きている。
 自分の名を呼ぶこれが聞える、聞き覚えのある声だ。
 闇に光がさす、温かい光だ。
 沙也加の瞳に光が戻る。
 「沙也加さん、沙也加さん、沙也加さん・・・」
たすくが泣きながら叫んでいる。
 倒れた沙也加にたすくが覆いかぶさり、泣き叫んでいる。
 沙也加は無意識にたすくを抱きしめる。
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