11 / 21
本編
11、それは傷に響くほどの衝撃で
しおりを挟む
周囲が物音ひとつたてないのでカーテンを引く手も気をつかう。もしかしたら部屋には誰もいないのではないか。それくらい気配がしないのだ。
カーテンレールが静かに滑ってベッドがあらわになった。安達の右目に飛び込んできたのは深緑色の制服、肩にはやんごとなき飾りがあった。それを見てすぐに上官であることに気がつく。
安達は慌てて姿勢を正した。
「安達四季三等陸曹、ただいま戻りました!」
「ああ、安達くん? ご苦労さま」
そのにいたのは方面隊の連隊長を務める近藤一等陸佐であった。左目は厚手のガーゼのせいで視野が狭かったが、気づくことができてよかったとひとまず安堵した。
おそらく今回の集合訓練の責任者でもある近藤連隊長が、怪我をした隊員たちを見舞っているのだろう。安達はそう理解した。
「わざわざ申し訳ありません。この通り、怪我も大したことありませんのでしたので本日退院いたします!」
「おお、それはよかった。間に合った、間に合った」
「間に合った、のですか?」
ほぼ初対面の近藤連隊長は連隊長らしからぬ優しい笑みで頷いた。安達の頭の中は疑問符でいっぱいだった。連隊長が言わんとすることを理解しようと頑張っているのだが、さっぱり分からない。
「分からないよね。それから、左目は見えているのかな? ああ、視界が遮られているのか。なるほどなるほど。これは、面白い」
「れ、連隊長。あの?」
連隊長の口角が怪しげに上がったかと思うと、耳を疑うような言葉を発した。
「きみ、今日と明日は駐屯地には入れないよ。土日はね、訓練後の休養日になっている」
「わたしは帰れないのですか。それは困りました。実家に連絡をしなければ」
「だがしかし心配は無用。こちらのお嬢さんが安達くんを預かってくれるそうだ。よかったなぁ。ぐははは」
「お嬢さんって……」
近藤は顔を安達から見た左側に向けた。そして、眉をぐっと上げて得意そうにどうだという顔をして見せるのだ。
安達はつられるがまま、顔を左側に向ける。ガーゼで半分隠れた視界をカバーするように右目もしっかりと向けた。
なんとそこにはもう一人いたのだ。しかもどう見ても自衛官でもなく、看護師でもなく、でも見覚えのあるこじんまりとしたあの可愛いらしい姿。
困ったように眉を八の字に下げた萌木若菜が座っていた。
「なっ……あ……わ……」
安達は驚きすぎたのか単語にすらならない声を発してしまう。それを見た連隊長はさらに声を出して笑うのだ。
「わっ……わかなさん!!!!」
ようやく出た言葉である。
「さて、安達三曹」
「はっ!」
「いま言ったように駐屯地に戻ることはできない。退院手続きを済ませたのだから病院は出なければならない。分かるね?」
「はい」
「大人しく萌木さんのお世話になりなさい。これは、連隊長命令だ。ではわたしはこれで失礼する」
近藤はとんでもない命令を安達に下して椅子から立ち上がった。なぜか連隊長の右手には、萌木醤油店の紙袋が握られているが今はそれどころではない。
安達は反射的に最敬礼で近藤の背中を見送った。
(若菜さんの、実家の醤油……)
それはさておき、安達は連隊長が去ったというのに下げた頭をなかなか上げられない。なぜならば安達の後ろには若菜がいるからだ。先ほどは驚いて名前を叫んでしまったが、あらためて彼女の存在を確認すると、どんな顔をしたらよいのか分からなくなっていた。
(こんな顔を若菜さんに見せるとは……恐ろしくて顔を強張らせていたじゃないか。なんということだ)
「四季、さん?」
「はい」
「こちらを向いてくれないのですか?」
「いや、その。恐ろしいでしょう、こんな顔では」
安達は若菜に背中を向けたまま返事をした。
安達以外の5つのベッドは変わらずカーテンが引かれていて、静かなままだ。
「四季さん。そんなこと言わないで。わたしは誇らしいんですよ。怪我をしても自分の任務をやり遂げたんですもの。もちろん怖いですよ。でも、その顔が怖いんじゃないです。あなたが死んじゃったらどうしようって。それがいちばん怖いです!」
若菜は少し声をあげて、安達の手を後ろから握りしめた。安達よりは遥かに柔らかくて小さい、それでいてとても温かい手が絶対に離さないと強く握ってくる。
恐る恐る肩越しに若菜を見た。若菜は俯いたままで、その表情は見えない。
「若菜さん」
「……」
「若菜さん?」
「……」
若菜は返事をしなかった。その代わりに、握りしめられた手にぽたりと雫が落ちてくる。
若菜が泣いている!
安達はそう思った。だからすぐに振り返って床に膝をついて若菜の顔を覗き込んだ。
「若菜さん、泣いているのですか」
「泣いてなんかっ……」
安達の視線から逃げるように若菜は上を向いた。でも、見えてしまった。その頬にキラリと光る一本の筋を。
「ああ、なんてことだ。俺は本当にダメな男だな。こんなに可愛い人を泣かせるなんて」
「だから、泣いていません」
「若菜さん、俺は簡単に死にませんよ。俺が死んだら救護された隊員がかわいそうだ。それに、あなたがくれたお醤油でバニラアイスが食べられなくなる」
気の利いた言葉が思いつかない。もっと真っ直ぐに若菜がいるから死ねないと言えばよかっただろうか。しかし、その言葉はやはり彼女には重いのではないか。自衛官は国民のためにこそ存在し、命をかけて職務を全うするものである。家族や彼女は二の次になってしまうから。そんな要らぬことを考えてしまうのだ。
「もう、四季さんてバカなんだから」
「はい。根っからの自衛官なもので」
「真面目で、誠実で、純粋で、それでいて甘いものが大好きな自衛官だなんて。もう、どうしたらいいんでしょうね」
「すみません」
若菜は握った安達の手を持て余したかのように、指の一本一本を順に触れていった。どの指も太いし皮が厚くて、カサカサしている。手のひらも分厚くて、所々にマメの痕がある。
この手が私たちを守ってくれる。でも、私だけのものにはならないというもどかしさが若菜の胸を締め付けた。
「ごめんなさい」
「え?」
「わたし、国民のために働く自衛官を独り占めしたいって思ってるの。安達四季三等陸曹さん、あなたのことです」
安達は若菜の告白に心臓が跳ね上がるような感覚に陥った。急にたくさんの酸素が送られて、血が体中を駆け巡り、急激に体温が上がっていく。額の傷がドクドクと疼くほど、胸のドキドキが止まらなくなっていた。
(若菜さんが、俺を……そんなに!)
安達は確かに若菜に好意を持ってた。お見合いの流れでこうやって交流を続けられてラッキーだと思っている。けれどその想いは一方通行だとどこかで思っていた。いつか、この交流がなくなるかもしれないという覚悟も頭の隅にあったのだ。
◇
安達は一生懸命に冷静になろうとしていた。若菜のあなたを独り占めしたいという気持ちは驚き以外のなにものでもなかった。こんな得体の知れないずうたいばかりが大きな男を、上品で可愛らしいお嬢さんが求めてくるなんてまさに青天の霹靂だ。
そして何よりも気になるのは連隊長だ。どうして一端の自衛官のために病院までやって来たのか。そして、明らかに手土産らしき袋を下げて帰った。まさか袖の下で動くような組織ではあるまい。民間人からの寄付や土産は受け取らないことになっている。
だがしかし、確かに連隊長の近藤は萌木醤油店の紙袋を提げていた。
ドキドキとザワザワが安達の身体を襲う。
「若菜さん。どうしてあなたは俺を? 叔母の京子が無理にお願いしたんですよね。俺が怪我をしたこともたぶん」
「確かに叔母さまから怪我のことは聞きました。でも、お見合いは違うんです」
「違う、とは」
「わたしからお願いしたんです。どうしても四季さんとお見合いがしたいって」
「ええ! イデデ……」
「大丈夫ですか? とりあえずベッドに」
傷に響くほどの驚きだった。安達は少し興奮しすぎたのかもしれない。
「いや、ちょっと信じられなくて。なんで俺のことを知っていたんですか。俺は高校を卒業してからほぼ駐屯地の中でしたよ」
「それは……」
若菜は恥ずかしそうに俯いた。さっきまで泣いていたのに、今は頬が赤くなっている。
「では、お話しますね」
「はい」
「驚かないでくださいね」
「はい」
若菜は安達に何を話そうとしているのだろうか。
カーテンレールが静かに滑ってベッドがあらわになった。安達の右目に飛び込んできたのは深緑色の制服、肩にはやんごとなき飾りがあった。それを見てすぐに上官であることに気がつく。
安達は慌てて姿勢を正した。
「安達四季三等陸曹、ただいま戻りました!」
「ああ、安達くん? ご苦労さま」
そのにいたのは方面隊の連隊長を務める近藤一等陸佐であった。左目は厚手のガーゼのせいで視野が狭かったが、気づくことができてよかったとひとまず安堵した。
おそらく今回の集合訓練の責任者でもある近藤連隊長が、怪我をした隊員たちを見舞っているのだろう。安達はそう理解した。
「わざわざ申し訳ありません。この通り、怪我も大したことありませんのでしたので本日退院いたします!」
「おお、それはよかった。間に合った、間に合った」
「間に合った、のですか?」
ほぼ初対面の近藤連隊長は連隊長らしからぬ優しい笑みで頷いた。安達の頭の中は疑問符でいっぱいだった。連隊長が言わんとすることを理解しようと頑張っているのだが、さっぱり分からない。
「分からないよね。それから、左目は見えているのかな? ああ、視界が遮られているのか。なるほどなるほど。これは、面白い」
「れ、連隊長。あの?」
連隊長の口角が怪しげに上がったかと思うと、耳を疑うような言葉を発した。
「きみ、今日と明日は駐屯地には入れないよ。土日はね、訓練後の休養日になっている」
「わたしは帰れないのですか。それは困りました。実家に連絡をしなければ」
「だがしかし心配は無用。こちらのお嬢さんが安達くんを預かってくれるそうだ。よかったなぁ。ぐははは」
「お嬢さんって……」
近藤は顔を安達から見た左側に向けた。そして、眉をぐっと上げて得意そうにどうだという顔をして見せるのだ。
安達はつられるがまま、顔を左側に向ける。ガーゼで半分隠れた視界をカバーするように右目もしっかりと向けた。
なんとそこにはもう一人いたのだ。しかもどう見ても自衛官でもなく、看護師でもなく、でも見覚えのあるこじんまりとしたあの可愛いらしい姿。
困ったように眉を八の字に下げた萌木若菜が座っていた。
「なっ……あ……わ……」
安達は驚きすぎたのか単語にすらならない声を発してしまう。それを見た連隊長はさらに声を出して笑うのだ。
「わっ……わかなさん!!!!」
ようやく出た言葉である。
「さて、安達三曹」
「はっ!」
「いま言ったように駐屯地に戻ることはできない。退院手続きを済ませたのだから病院は出なければならない。分かるね?」
「はい」
「大人しく萌木さんのお世話になりなさい。これは、連隊長命令だ。ではわたしはこれで失礼する」
近藤はとんでもない命令を安達に下して椅子から立ち上がった。なぜか連隊長の右手には、萌木醤油店の紙袋が握られているが今はそれどころではない。
安達は反射的に最敬礼で近藤の背中を見送った。
(若菜さんの、実家の醤油……)
それはさておき、安達は連隊長が去ったというのに下げた頭をなかなか上げられない。なぜならば安達の後ろには若菜がいるからだ。先ほどは驚いて名前を叫んでしまったが、あらためて彼女の存在を確認すると、どんな顔をしたらよいのか分からなくなっていた。
(こんな顔を若菜さんに見せるとは……恐ろしくて顔を強張らせていたじゃないか。なんということだ)
「四季、さん?」
「はい」
「こちらを向いてくれないのですか?」
「いや、その。恐ろしいでしょう、こんな顔では」
安達は若菜に背中を向けたまま返事をした。
安達以外の5つのベッドは変わらずカーテンが引かれていて、静かなままだ。
「四季さん。そんなこと言わないで。わたしは誇らしいんですよ。怪我をしても自分の任務をやり遂げたんですもの。もちろん怖いですよ。でも、その顔が怖いんじゃないです。あなたが死んじゃったらどうしようって。それがいちばん怖いです!」
若菜は少し声をあげて、安達の手を後ろから握りしめた。安達よりは遥かに柔らかくて小さい、それでいてとても温かい手が絶対に離さないと強く握ってくる。
恐る恐る肩越しに若菜を見た。若菜は俯いたままで、その表情は見えない。
「若菜さん」
「……」
「若菜さん?」
「……」
若菜は返事をしなかった。その代わりに、握りしめられた手にぽたりと雫が落ちてくる。
若菜が泣いている!
安達はそう思った。だからすぐに振り返って床に膝をついて若菜の顔を覗き込んだ。
「若菜さん、泣いているのですか」
「泣いてなんかっ……」
安達の視線から逃げるように若菜は上を向いた。でも、見えてしまった。その頬にキラリと光る一本の筋を。
「ああ、なんてことだ。俺は本当にダメな男だな。こんなに可愛い人を泣かせるなんて」
「だから、泣いていません」
「若菜さん、俺は簡単に死にませんよ。俺が死んだら救護された隊員がかわいそうだ。それに、あなたがくれたお醤油でバニラアイスが食べられなくなる」
気の利いた言葉が思いつかない。もっと真っ直ぐに若菜がいるから死ねないと言えばよかっただろうか。しかし、その言葉はやはり彼女には重いのではないか。自衛官は国民のためにこそ存在し、命をかけて職務を全うするものである。家族や彼女は二の次になってしまうから。そんな要らぬことを考えてしまうのだ。
「もう、四季さんてバカなんだから」
「はい。根っからの自衛官なもので」
「真面目で、誠実で、純粋で、それでいて甘いものが大好きな自衛官だなんて。もう、どうしたらいいんでしょうね」
「すみません」
若菜は握った安達の手を持て余したかのように、指の一本一本を順に触れていった。どの指も太いし皮が厚くて、カサカサしている。手のひらも分厚くて、所々にマメの痕がある。
この手が私たちを守ってくれる。でも、私だけのものにはならないというもどかしさが若菜の胸を締め付けた。
「ごめんなさい」
「え?」
「わたし、国民のために働く自衛官を独り占めしたいって思ってるの。安達四季三等陸曹さん、あなたのことです」
安達は若菜の告白に心臓が跳ね上がるような感覚に陥った。急にたくさんの酸素が送られて、血が体中を駆け巡り、急激に体温が上がっていく。額の傷がドクドクと疼くほど、胸のドキドキが止まらなくなっていた。
(若菜さんが、俺を……そんなに!)
安達は確かに若菜に好意を持ってた。お見合いの流れでこうやって交流を続けられてラッキーだと思っている。けれどその想いは一方通行だとどこかで思っていた。いつか、この交流がなくなるかもしれないという覚悟も頭の隅にあったのだ。
◇
安達は一生懸命に冷静になろうとしていた。若菜のあなたを独り占めしたいという気持ちは驚き以外のなにものでもなかった。こんな得体の知れないずうたいばかりが大きな男を、上品で可愛らしいお嬢さんが求めてくるなんてまさに青天の霹靂だ。
そして何よりも気になるのは連隊長だ。どうして一端の自衛官のために病院までやって来たのか。そして、明らかに手土産らしき袋を下げて帰った。まさか袖の下で動くような組織ではあるまい。民間人からの寄付や土産は受け取らないことになっている。
だがしかし、確かに連隊長の近藤は萌木醤油店の紙袋を提げていた。
ドキドキとザワザワが安達の身体を襲う。
「若菜さん。どうしてあなたは俺を? 叔母の京子が無理にお願いしたんですよね。俺が怪我をしたこともたぶん」
「確かに叔母さまから怪我のことは聞きました。でも、お見合いは違うんです」
「違う、とは」
「わたしからお願いしたんです。どうしても四季さんとお見合いがしたいって」
「ええ! イデデ……」
「大丈夫ですか? とりあえずベッドに」
傷に響くほどの驚きだった。安達は少し興奮しすぎたのかもしれない。
「いや、ちょっと信じられなくて。なんで俺のことを知っていたんですか。俺は高校を卒業してからほぼ駐屯地の中でしたよ」
「それは……」
若菜は恥ずかしそうに俯いた。さっきまで泣いていたのに、今は頬が赤くなっている。
「では、お話しますね」
「はい」
「驚かないでくださいね」
「はい」
若菜は安達に何を話そうとしているのだろうか。
11
お気に入りに追加
506
あなたにおすすめの小説
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。
出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
古代魔法を専門とする魔法研究者のアンヌッカは、家族と研究所を守るために軍人のライオネルと結婚をする。
ライオネルもまた昇進のために結婚をしなければならず、国王からの命令ということもあり結婚を渋々と引き受ける。
しかし、愛のない結婚をした二人は結婚式当日すら顔を合わせることなく、そのまま離れて暮らすこととなった。
ある日、アンヌッカの父が所長を務める魔法研究所に軍から古代文字で書かれた魔導書の解読依頼が届く。
それは禁帯本で持ち出し不可のため、軍施設に研究者を派遣してほしいという依頼だ。
この依頼に対応できるのは研究所のなかでもアンヌッカしかいない。
しかし軍人の妻が軍に派遣されて働くというのは体裁が悪いし何よりも会ったことのない夫が反対するかもしれない。
そう思ったアンヌッカたちは、アンヌッカを親戚の娘のカタリーナとして軍に送り込んだ――。
素性を隠したまま働く妻に、知らぬ間に惹かれていく(恋愛にはぽんこつ)夫とのラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる