上 下
77 / 208

第76話 シアとマーヤ

しおりを挟む
 

「先日は…その大変あにがとうごじゃ…ございます」

 トリンシアさんが噛んだ。シアちゃんと呼ばれているらしい。
 マーヤさんはマヤちゃんだ。

 孤児院の談話室を借りてとりあえずお話と相成った。
 先日はそれどころではなかったが二人ともかなりの美少女だね。
 かわいい女の子たちだ。

 二人とも同じ構造の服を着ているから制服だろう。
 件の聖騎士養成学園のものだとおもう。

 丈の長いプリーツスカートに丈の長いブラウスのような上着を合わせている。
 この上着の特徴的なところはセーラー服のような襟が付いていることだな。そして全体としてはかわいいよりもかっこいいという印象だ。

 養成校というのは平たく言うと士官学校のようなものだからりりしさが前に出るのは当然なのかもしれない。
 足元は編み上げのブーツで、安全性が高そうである。

 だから先日のような緊急事態の際には駆り出されて実戦に出ることにもなる。
 もちろん命がけで。

 あのワイバーンは迷いが良い方に作用したため被害は小さかったが、それでもこの子はへたをすれば死んでいただろう。

 ただ今の様子を見る限り、なんであんなけがをしたのか…そんなに勇敢には見えないんだけど…

「この女は戦闘になると前に飛び出す。結構無謀」

「ああ、そういう」

 マーヤさんに言わせるとそういうところがあるらしい。
 臆病そうに見えて案外度胸があるのかもしれない。

 さて、そのマーヤさんだが小柄な美少女だ。
 疑惑の美少女。

 彼女は茶色の髪に黒っぽい瞳。
 彫は深くなく、体形もあまりメリハリ少ない。つまり日本人なら見慣れた感じの女の子だ。
 あくまでも少なめであって無いわけではないよ。ウエストは一応あるし、おしりはちゃんと女の子のおしりをしている。
 ん? なんでおしりかって?

 それは俺がおしりが好きだからだ。
 オッパイも好きだがおしりはいい。

 この子のことは前から気になっていた。何というか言動がね。おかしい。
 うん、まあ、これはおいおい。

 そしてもう一人。シアさんは普通の美少女だ。
 身長は普通。マーヤさんよりも頭半分は高いだろう。
 スタイルは細身で、胸は大め。おしりも大きい。実に女性らしいボディーラインだ。

 だからと言って大きすぎるようなことはなく、上から下まで流れるようなラインでかなりきれい。

 特徴的なのが褐色の肌だろう。そして銀の髪。瞳の色は青だ。
 性格はおとなしい子という印象だ。
 今も雰囲気的にマーヤさんの後ろに隠れる感じで恥じらっている。

 二人とも今年十七歳だそうだ。

「今更恥ずかしがらない。もう全部見られている」

「マヤちゃん!」

 マーヤさんはかなりあけすけな性格みたいだ。もしくは仲が良くて遠慮がないのかもしれないね。

「もう、そんなこと言わないでよ。お嫁の貰い手がなくなっちゃうわ」

「もう手遅れ、秘密の花園どころかおなかの中までかき回されて、赤ちゃんの部屋まで全開だった。もう隠せるものなんてない」

 シアさんがどんどん赤くなっていく。
 しかも俺とマーヤさんを見比べながら。

 これは誤解を招いてないか?
 隣でネムが気にしている気配。

「誤解がないように言っておくけどあくまでも医療行為だった。そうしなければ死んでた。でもこの女が、人に見せてはいけないものを全部さらけ出したのも事実。
 女の子の大事なところもマリオンさんの手が入っているからもうマリオンさんにもらってもらうしかない」

 きわめて不穏当な発言だ。あれは本当に医療行為なのに。
 なのにこのセリフでネムがびくりと反応した。
 それに気が付いたのだろう。シアさんがあわあわと否定する。

「あの…それ、医療行為ならノーカウントだよ。それに奥さんに失礼だよ」

 うんうん、良識のある人というのはいいものだ。だがなぜかシアさんが期待するようにネムを見ている。
 そしてネムも。

「いえ、私なら構いませんよ。むしろ歓迎です。マリオン様の奥さんが私一人というのは確かに変ですから」

「え~~~っ」

 と驚いたのは俺だけだった。
 ほかの人はあまり気にしていないようだ。

「一夫多妻制は常識」

 とマーヤさん。

「ええ、そうですね」

 とこれはネム。

 つまりここってハーレム有りなの?

 ◆・◆・◆

 しばらく説明の時間をいただきました。

 先ほどの『ゆとりのある家は人を雇わないといけない』というのと同じで、甲斐性のある男は奥さんを複数持つのがふつうなんだって。
 びっくりだ。

 なぜならこの世界の人間の死亡原因の上位に魔物に襲われて。というのがあるからだ。
 そして魔物に襲われるのはやはり外で働く男が多い。
 結果として人口の比率は女性の方が圧倒的に多くなり、一人の男が複数の奥さんをもらわないとあぶれてしまうのだそうな。

 ただ奥さん一人という男が一番多いというのも事実。なぜならたくさんの女を守っていけるほどの甲斐性を持った男というのも少ないからだ。
 なので甲斐性のある男が数人の奥さんを持つのは当たり前のことらしい。

「それにネムさんは虎系の獣人。だったら奥さん多数はOKのはず」

「ええ、そうですね。うちは普通に奥さん多数ですよね。ハーレムではないんですけど。種族的に」

 よくわからん。と思っていたらシアさんが説明してくれた。

 この世界は奥さん多数OK。これは人族。
 エルフやドワーフは一夫一婦制が普通。これは性差が少なく男も女も同じように外に出るからだ。
 獣族というのはその動物の特徴を引き継いでいるらしい。
 狼とか獅子とかならハーレムを作る。
 狐人なら一夫一婦。
 そんな感じだ。

 で虎はというと一夫多妻制。でもハーレムはなくオスをシェアするような感じらしい。

 つまり大きなオスの縄張りがあって、そのなわばりの中に小さな雌の縄張りがあって、そのオスは自分の縄張りに住むメスを自分の女として守る。みたいな。
 うーん、知らんかった。

 だからネムとしては俺が活動範囲のあちらこちらの町に女を作るのはいいらしい。
 港々に嫁がいるみたいなやつだ。

 もちろん獣族は獣ではなく人なので必ずしもではないが、この世界で生まれた女性は一夫多妻制を当たり前ととらえているらしい。
 まあ、そうでないと結婚もできないみたいだからね。

 ただ俺にはなじまない気がする。

「だからマリオン様もあと何人か奥さんをもらうべきだと思いますよ」

 いやいや、新婚のネムにそんなこと言われてもね…
 ん? 新婚? そうだよ、俺たちは新婚じゃないか。

「まあ、わからなくもないけど(いや、実際は全く分からんけど)ほら、俺たちって新婚でしょ? まだしばらくはネムとイチャイチャしたいなって…それにまだネムのことも開発しきってない気がするし、堪能しきっていない気がするし…(よーし、いい言い訳だ)」

「ああ、確かにそれはそうですよね。私ももっとマリオン様といろいろしたいです(エッチなこと…)」

 最後は俺の耳元にささやくように告げられた。
 いやー、嫁っていいな。いろいろ元気になるよ。
 早く家に帰ってベッドに…ってだめか。

「熱すぎる、新婚は手ごわい」
「ええっと…うらやましいです」

 かくして俺の思惑通りこの話はうやむやになった。

 今だってネムといろいろ、エロエロ楽しいことがいっぱいなのにそんなよその女に手を出している暇なんかない。という感じか?

 ◆・◆・◆ side お嬢さんたち。

「残念。うまくかわされた」

 孤児院から帰り道、私は隣を歩くシアにそうささやいた。

「マーヤちゃん、なんでそんなに私を売り込むの?」

「親友として心配している」

「大丈夫だよ、わたしまだ若いし、焦らなくてもいい男が見つかります」

 シアが自信をもってそうつぶやく。だけど私は否定できる。

「絶対無理」

「なんでよー」

 大声で文句を言うがこればかりは仕方ない。はっきり言ってこの女は男運が悪いと思う。
 このままだとろくでもない男につかまってしまう気がする。

「そんなことないもん」

「そんなことある。前にも言った。あなたはまるで男にレイプされるために生まれてきたような女だと」

 これは私の確信だ。シアは見た目は実に美少女だ。
 はかなげで押せばそれだけで行けてしまいそうなほどたおやかな美少女だ。

 おまけにスタイルもいい。

 一緒にお風呂なんかに入るとその艶めかしいボディラインはうらやましいの一言。男ならこんな女をぜひ手に入れたいと思うだろう。

 なのにこの女は隙が多い。

 ふとした時に露出が多くなったり、くねくねしたときにおっぱいが魅力的に揺れたり、ボディラインのはっきりしたズボンなんかをはくから歩くとおしりが蠱惑的に揺れたりする。

 この女はその自分を見て男が生唾を飲み込んでいることに全く気が付いていない。

 しかも男と女をあまり意識しないから遊びに誘われるとホイホイついていく。

「この間だって私がフォローしなかったらあのまま連れ込まれて処女から男性経験数十人に一気にレベルアップするところだった」

「うう、ああいうのは…めったにないもん」

「普通の女なら一生に一度だってない」

「うううっ」

 毎度毎度こうして注意喚起して、なお隙が多いっていうのは問題がある。
 でも、今日は珍しくシアは自分の『女』を意識していた。
 男の前で自分が『女』なんだと意識していた。
 つまりガードが堅かった。これはよい傾向。

 ガードが堅いとかえってダメだと思うかもしれないけど、逆だと私は思う。

 あのマリオンさんの前ではシアは女で、シアにとってあのマリオンさんは『男』だった。

 つまりシアはあのマリオンさんを『セックスの対象』として意識していた。

「つまりあなたはマリオンさんに犯されたがっている」

「そそそそそそんなこと!」

 うん、この反応でさらに確信した。

「あなたはあの人と結ばれないと絶対に幸せになれない。シアが幸せになるための条件はあの人とのセックス。それだけ」

 シアがズガビーンと衝撃を受けた。漫画なら背景が雷だ。
 できればマーヤちゃん恐ろしい子とか言ってほしい。
 無理か。

「でででも、私の家は一応貴族だし、私後継ぎだし…お嫁さんのいる人をお婿に来てもらうとか無理だし」

「だから一夫多妻制。あなたの母親も未婚の母。跡継ぎを作るために結婚せずに気に入った男と子供だけ作った。
 ネムさんのことを考えればあなたがターリの町の現地妻になるのは難しくない」

「でもそんな…ああ、でも…」

「グダグダ言っていると私がもらう。私もあの男にならぶち込まれてもいい。私が先に犯られたらあなたの出番はない」

「うっ」

 シアがよろめいた。落ちたな。

「大丈夫、まだ時間はある。あの人は犯れるからといって簡単に女に手を出したりしない。でも一緒に活動していて情がうつれは見捨てたりできない。そういう人。やりようはある。
 とりあえず…今度のあれを利用する」

「あれ?」

「そう、パーティー結成あれ

 ◆・◆・◆

「はっくしょん!」

「マリオン様。大丈夫ですか」

「ああ、大丈夫。ちょっと寒気が…」

 なんだべ?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異種族ちゃんねる

kurobusi
ファンタジー
ありとあらゆる種族が混在する異世界 そんな世界にやっとのことで定められた法律 【異種族交流法】 この法に守られたり振り回されたりする異種族さん達が 少し変わった形で仲間と愚痴を言い合ったり駄弁ったり自慢話を押し付け合ったり そんな場面を切り取った作品です

欲しいのならば、全部あげましょう

杜野秋人
ファンタジー
「お姉様!わたしに頂戴!」 今日も妹はわたくしの私物を強請って持ち去ります。 「この空色のドレス素敵!ねえわたしに頂戴!」 それは今月末のわたくしの誕生日パーティーのためにお祖父様が仕立てて下さったドレスなのだけど? 「いいじゃないか、妹のお願いくらい聞いてあげなさい」 とお父様。 「誕生日のドレスくらいなんですか。また仕立てればいいでしょう?」 とお義母様。 「ワガママを言って、『妹を虐めている』と噂になって困るのはお嬢様ですよ?」 と専属侍女。 この邸にはわたくしの味方などひとりもおりません。 挙げ句の果てに。 「お姉様!貴女の素敵な婚約者さまが欲しいの!頂戴!」 妹はそう言って、わたくしの婚約者までも奪いさりました。 そうですか。 欲しいのならば、あげましょう。 ですがもう、こちらも遠慮しませんよ? ◆例によって設定ほぼ無しなので固有名詞はほとんど出ません。 「欲しがる」妹に「あげる」だけの単純な話。 恋愛要素がないのでジャンルはファンタジーで。 一発ネタですが後悔はありません。 テンプレ詰め合わせですがよろしければ。 ◆全4話+補足。この話は小説家になろうでも公開します。あちらは短編で一気読みできます。 カクヨムでも公開しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...