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第二章・リウ君のそこそこ平穏な日常
第18話 軍曹殿、降臨
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第18話 軍曹殿、降臨
森についたらさっきの冒険者たちがすでに森に到着していた。
うーん、湖で遊びすぎたか…
少し木の上から彼らを観察する。
大人組の姿は見えないからすでに別行動なんだと思う。
子供冒険者の方はというと周辺を調べまくり、何かを探している。
「あっ、傷薬あったー」
「薬草な」
「じゃなくて!」
「ああ、はいはいなんだな」
「ウサギの痕跡、鼠の痕跡」
「おっ、ここにふんがあるぞ」
「よし、わな張るぞ」
獲物を捕るために罠を作り、ついでに薬草とか探して回っている感じだ。
ただこの辺りで見つかる薬草は村でも見かけるやつばかりであまり目新しくはないね。
《仕方ないですよー、この辺りは浅い森ですよー。
でも気候が違うからもっと奥に行けば変わったのもあると思うですよー》
なるほど、この辺りはうちの村に比べるとずいぶん陽気がいいからね。
とか思っていたら子供たちは結構真剣に薬草類を探している。
タンポポみたいなやつとかヨモギみたいなやつとか、どくだみのようなやつとか結構真面目にとっている。
背負子に括り付けた籠に結構たまっていく感じだ。
《ここは医の魔塔がある町なので薬草類は全部ノヴァ公爵家で買い取ってくれるです。常設依頼ですよー、まじめにやれば薬草だけでも食べていけるぐらいは稼げるですよー》
物知りしーぽん。誰かの受け売りだな。
しかしそう言う恵まれた環境にいるのなら集《タカ》りはやめろと言いたい。
何で自分よりも弱そうなやつに集ろうとするんだ?
《人間は楽な方に流される生き物ですよー。ひたすら努力とか研究とかにまい進しちゃうのはどちらかというと変態ですよー》
チラ。
悪かったね。
でも僕の場合は変態じゃないぞ。前世持ちのアドバンテージってやつさ。
今やっていることが将来の自分にどういうものをもたらすか、理解し想像するだけのおつむがあるから手を抜かないだけだね。
それに中身が大人だから簡単に流されたりはしないしね…
そんなことを考えながらしばらく観察していたが、多少の植生の違いはあってもふつうに買える薬草関係ばかりであまり目新しいものはない。
まあ、こういうものが普通に需要があるんだけどね。
というかもう少し丁寧に摘め、なんか背負子の中の籠が草むしりの後みたいになってんぞ。
「あっ、出た! 角ウサギだ!!」
「罠の方に追い込め!」
「あー、罠が壊れた!」
「「あーっ、まてー、ぎゃふん!」」
一匹の兎に二人で飛び掛かるからぶつかってるし。
「チクショウ! 正面に回り込んで! げふうっっ!」
角ウサギにもろに頭突きを食らってら。
そして誰もいなくなった…っていうか動けるやつがね。
全員兎を追いかけ疲れてぶつかって転げて満身創痍。死屍累々だ。
「ううっ、チクショウ! これじゃ今日もまともなご飯が食べられないじゃんか」
「泣くな、まだ一匹目だ。すぐに罠を直してもう一回だ」
そう言うと彼らはよたよたと起き上がると半べそを掻きながら落とし穴の修理に向かった。
〝みじめ〟を絵にかいたような光景だ。
『しーぽんさん、ご飯が食べられないって言ってますよ』
優遇されてるんじゃなかったんか?
《当然ですよー、あんな雑な採取の仕方でまともな買取金額は出ないですよー、多少でももらえるだけ優遇ですよー》
僕はちらりと籠を見た。
相変わらず雑草を詰め込んだ籠みたいになってる。
適当に葉っぱちぎっているし、枝とか圧し折って入っているし、量を入れるのに上からぎっしぎっし押し込んでいる。
うん、言われてみれば確かにあれはゴミだ。
ゴミでもお金を払ってくれるのならやっぱり優遇なんだろう。
というか取り方教えねえのか!
はー、仕方ないなあ…。
◇・◇・◇・◇
「ちくしょう面倒くさいな!」
そう言いつつ草むしりをする子供。
断じて薬草採取ではない。これはただの草むしり。
「それはね、根元の赤いところから取らないといけないんだ。そこが一番大事だから。でも根っこごと取ってはダメなんだ。
そうすると毒素が上がってきちゃうから。
それに根っこと根元を半分残しておくと再生するのが速いからまたすぐ取れる」
僕は男の子を押しのけ、爪の先で細く柔らかい茎をつまんでぶつりと切る。
これがこの薬草の正しい採取方法だ。
子供の僕は使わないけど、これをちゃんと精製した薬品をのむとなんか筋肉がいい感じにぐわっとなるらしい。
この間パイプをくわえたセーラー服のおっちゃんが良い薬だってほめてた。
「何だよお前、わけわかんないこというなよ、さいていって何だよ」
「再生じゃぼけ! って再生もわからんのか~」
こりゃ思ったよりも根が深いなー
うちの村の子供の方が勉強できるんじゃないのか?
「どーしたどーした。む?」
「なんだなんだ」
「かんだかんだ」
「むむ、子供たちが寄って来たな」
「「「お前が子供じゃん」」」
「というかこいつこの前のギルマスの!」
ギルマスの名前は恐ろしいらしい。子供らビビってる。
「よーし貴様ら、ここに一列に並べ!」
操魔で周辺にプレッシャーを掛けながら偉そうに命令をする。
子供たちは戸惑いながらも言われたとおりに一列に並んだ。まあ、蛇行してるけどな。
「これより貴様らクソムシに薬草の採取方法を教えてやる。
貴様らはクズだ。この世で一番劣った生き物だ。
だがこのミッションを完遂したならば、自分を養えるぐらいの生き物に進化できる。
そのつもりでやるがいい」
「おい、なんかいってっぞ」
「いみわかるか?」
「いや、なーんもなんも」
うん、全然意味なかった。
でも偉い人には逆らわないみたいな空気があるので指示には従うらしい。
かさ!
「てい!」
後ろで動いた気配に俺はナイフを投射する。魔力投射だから投擲ではないぞ。
そしてそのナイフは一撃でそこにいた動物の額を射抜き、止めを刺した。
「シッポタヌキだ」
「すげー」
「一撃だ」
「狸汁? ねえ、狸汁?」
いや、生のタヌキを見てよだれ垂らすなよ。なんかやばい生き物みたいだぞ。
ただ言われてことは守るらしく、よだれを垂らして(二名ほど)いるやつも含めて動かずに並んでいる。
僕はシッポタヌキという魔獣を尻尾で縛り、首筋をすっぱり切って血抜き状態にして木の枝につるす。
血が垂れるあたりには穴を掘っておく。あとで内臓も捨てよう。
そんな作業をしている間、子供冒険者は直立したまま顔だけで俺の動きを追いかけ、もの欲しそうにしている。
そうだ。
「よし、クソムシども、これから私の教えることを余すことなく憶えられたなら、この狸は貴様らにくれてやろう。
ただし一人でも落第したらなしだ。
気合を入れろ」
「「「「「はい、坊ちゃん」」」」」
ギルマスの所の坊ちゃんだからか?
「私のことは軍曹殿とよべ」
「「「「「はい、ぐん?そうど?の」」」」」
意味わかってないね。群島とか薫陶とか混ざってるよ。
「ま、まあいい、では薬草の種類とその取り方講座である」
「「「「「はいぐ×〇△どの」」」」」
ごちゃごちゃ。もういいや何でも。
しかし食い物でつったのがよかったのは数種類の薬草の種類と採取法を彼らはわずかな時間で習得した。
まあ、もともと種類とかも多くなかったしね。
特徴的なのばかりだからね。
《いえいえ、あれは欠食児童の底力ですよー》
そういうものか…
そして欠食児童の興味の向かう先は当然『肉』である。
木にぶら下がってかすかに揺れれる狸の死体、それを囲んでじっと見つめる数人の子供。
シュールだ。シュールすぎる。
「さて、約束通りこの肉はお前たちにやろう。お前たちは今日をかぎりにクソムシを卒業したのだ。
だからこれは卒業祝いである。
解体してみんなで仲良く…」
「しくしくしく」
「めそめそめそ」
「うううっ、かいたい…」
「かじる? かじる?」
「解体もできないのか! それでも冒険者かお前ら!」
卒業を取り消そうかな、もう。
仕方ない、最後まで面倒見るか。
にしてもけったいな生き物だ。
僕は木につるされた『シッポタヌキ』をじっと見つめた。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
偶にですが厚かましくお願い。
いつもリウ太の話を読んでいただきありがとうございます。
当小説は皆様の温かい応援で運営されております。
面白い、続きを読みたい。と思っていただけましたら是非応援をお願いします。
作者の情熱が燃え上がります。
お願いしいたします。m(_ _)m
森についたらさっきの冒険者たちがすでに森に到着していた。
うーん、湖で遊びすぎたか…
少し木の上から彼らを観察する。
大人組の姿は見えないからすでに別行動なんだと思う。
子供冒険者の方はというと周辺を調べまくり、何かを探している。
「あっ、傷薬あったー」
「薬草な」
「じゃなくて!」
「ああ、はいはいなんだな」
「ウサギの痕跡、鼠の痕跡」
「おっ、ここにふんがあるぞ」
「よし、わな張るぞ」
獲物を捕るために罠を作り、ついでに薬草とか探して回っている感じだ。
ただこの辺りで見つかる薬草は村でも見かけるやつばかりであまり目新しくはないね。
《仕方ないですよー、この辺りは浅い森ですよー。
でも気候が違うからもっと奥に行けば変わったのもあると思うですよー》
なるほど、この辺りはうちの村に比べるとずいぶん陽気がいいからね。
とか思っていたら子供たちは結構真剣に薬草類を探している。
タンポポみたいなやつとかヨモギみたいなやつとか、どくだみのようなやつとか結構真面目にとっている。
背負子に括り付けた籠に結構たまっていく感じだ。
《ここは医の魔塔がある町なので薬草類は全部ノヴァ公爵家で買い取ってくれるです。常設依頼ですよー、まじめにやれば薬草だけでも食べていけるぐらいは稼げるですよー》
物知りしーぽん。誰かの受け売りだな。
しかしそう言う恵まれた環境にいるのなら集《タカ》りはやめろと言いたい。
何で自分よりも弱そうなやつに集ろうとするんだ?
《人間は楽な方に流される生き物ですよー。ひたすら努力とか研究とかにまい進しちゃうのはどちらかというと変態ですよー》
チラ。
悪かったね。
でも僕の場合は変態じゃないぞ。前世持ちのアドバンテージってやつさ。
今やっていることが将来の自分にどういうものをもたらすか、理解し想像するだけのおつむがあるから手を抜かないだけだね。
それに中身が大人だから簡単に流されたりはしないしね…
そんなことを考えながらしばらく観察していたが、多少の植生の違いはあってもふつうに買える薬草関係ばかりであまり目新しいものはない。
まあ、こういうものが普通に需要があるんだけどね。
というかもう少し丁寧に摘め、なんか背負子の中の籠が草むしりの後みたいになってんぞ。
「あっ、出た! 角ウサギだ!!」
「罠の方に追い込め!」
「あー、罠が壊れた!」
「「あーっ、まてー、ぎゃふん!」」
一匹の兎に二人で飛び掛かるからぶつかってるし。
「チクショウ! 正面に回り込んで! げふうっっ!」
角ウサギにもろに頭突きを食らってら。
そして誰もいなくなった…っていうか動けるやつがね。
全員兎を追いかけ疲れてぶつかって転げて満身創痍。死屍累々だ。
「ううっ、チクショウ! これじゃ今日もまともなご飯が食べられないじゃんか」
「泣くな、まだ一匹目だ。すぐに罠を直してもう一回だ」
そう言うと彼らはよたよたと起き上がると半べそを掻きながら落とし穴の修理に向かった。
〝みじめ〟を絵にかいたような光景だ。
『しーぽんさん、ご飯が食べられないって言ってますよ』
優遇されてるんじゃなかったんか?
《当然ですよー、あんな雑な採取の仕方でまともな買取金額は出ないですよー、多少でももらえるだけ優遇ですよー》
僕はちらりと籠を見た。
相変わらず雑草を詰め込んだ籠みたいになってる。
適当に葉っぱちぎっているし、枝とか圧し折って入っているし、量を入れるのに上からぎっしぎっし押し込んでいる。
うん、言われてみれば確かにあれはゴミだ。
ゴミでもお金を払ってくれるのならやっぱり優遇なんだろう。
というか取り方教えねえのか!
はー、仕方ないなあ…。
◇・◇・◇・◇
「ちくしょう面倒くさいな!」
そう言いつつ草むしりをする子供。
断じて薬草採取ではない。これはただの草むしり。
「それはね、根元の赤いところから取らないといけないんだ。そこが一番大事だから。でも根っこごと取ってはダメなんだ。
そうすると毒素が上がってきちゃうから。
それに根っこと根元を半分残しておくと再生するのが速いからまたすぐ取れる」
僕は男の子を押しのけ、爪の先で細く柔らかい茎をつまんでぶつりと切る。
これがこの薬草の正しい採取方法だ。
子供の僕は使わないけど、これをちゃんと精製した薬品をのむとなんか筋肉がいい感じにぐわっとなるらしい。
この間パイプをくわえたセーラー服のおっちゃんが良い薬だってほめてた。
「何だよお前、わけわかんないこというなよ、さいていって何だよ」
「再生じゃぼけ! って再生もわからんのか~」
こりゃ思ったよりも根が深いなー
うちの村の子供の方が勉強できるんじゃないのか?
「どーしたどーした。む?」
「なんだなんだ」
「かんだかんだ」
「むむ、子供たちが寄って来たな」
「「「お前が子供じゃん」」」
「というかこいつこの前のギルマスの!」
ギルマスの名前は恐ろしいらしい。子供らビビってる。
「よーし貴様ら、ここに一列に並べ!」
操魔で周辺にプレッシャーを掛けながら偉そうに命令をする。
子供たちは戸惑いながらも言われたとおりに一列に並んだ。まあ、蛇行してるけどな。
「これより貴様らクソムシに薬草の採取方法を教えてやる。
貴様らはクズだ。この世で一番劣った生き物だ。
だがこのミッションを完遂したならば、自分を養えるぐらいの生き物に進化できる。
そのつもりでやるがいい」
「おい、なんかいってっぞ」
「いみわかるか?」
「いや、なーんもなんも」
うん、全然意味なかった。
でも偉い人には逆らわないみたいな空気があるので指示には従うらしい。
かさ!
「てい!」
後ろで動いた気配に俺はナイフを投射する。魔力投射だから投擲ではないぞ。
そしてそのナイフは一撃でそこにいた動物の額を射抜き、止めを刺した。
「シッポタヌキだ」
「すげー」
「一撃だ」
「狸汁? ねえ、狸汁?」
いや、生のタヌキを見てよだれ垂らすなよ。なんかやばい生き物みたいだぞ。
ただ言われてことは守るらしく、よだれを垂らして(二名ほど)いるやつも含めて動かずに並んでいる。
僕はシッポタヌキという魔獣を尻尾で縛り、首筋をすっぱり切って血抜き状態にして木の枝につるす。
血が垂れるあたりには穴を掘っておく。あとで内臓も捨てよう。
そんな作業をしている間、子供冒険者は直立したまま顔だけで俺の動きを追いかけ、もの欲しそうにしている。
そうだ。
「よし、クソムシども、これから私の教えることを余すことなく憶えられたなら、この狸は貴様らにくれてやろう。
ただし一人でも落第したらなしだ。
気合を入れろ」
「「「「「はい、坊ちゃん」」」」」
ギルマスの所の坊ちゃんだからか?
「私のことは軍曹殿とよべ」
「「「「「はい、ぐん?そうど?の」」」」」
意味わかってないね。群島とか薫陶とか混ざってるよ。
「ま、まあいい、では薬草の種類とその取り方講座である」
「「「「「はいぐ×〇△どの」」」」」
ごちゃごちゃ。もういいや何でも。
しかし食い物でつったのがよかったのは数種類の薬草の種類と採取法を彼らはわずかな時間で習得した。
まあ、もともと種類とかも多くなかったしね。
特徴的なのばかりだからね。
《いえいえ、あれは欠食児童の底力ですよー》
そういうものか…
そして欠食児童の興味の向かう先は当然『肉』である。
木にぶら下がってかすかに揺れれる狸の死体、それを囲んでじっと見つめる数人の子供。
シュールだ。シュールすぎる。
「さて、約束通りこの肉はお前たちにやろう。お前たちは今日をかぎりにクソムシを卒業したのだ。
だからこれは卒業祝いである。
解体してみんなで仲良く…」
「しくしくしく」
「めそめそめそ」
「うううっ、かいたい…」
「かじる? かじる?」
「解体もできないのか! それでも冒険者かお前ら!」
卒業を取り消そうかな、もう。
仕方ない、最後まで面倒見るか。
にしてもけったいな生き物だ。
僕は木につるされた『シッポタヌキ』をじっと見つめた。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
偶にですが厚かましくお願い。
いつもリウ太の話を読んでいただきありがとうございます。
当小説は皆様の温かい応援で運営されております。
面白い、続きを読みたい。と思っていただけましたら是非応援をお願いします。
作者の情熱が燃え上がります。
お願いしいたします。m(_ _)m
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