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第二章・リウ君のそこそこ平穏な日常

第7話 しーぽん語り、クプクプさんのその後

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第7話 しーぽん語り、クプクプさんのその後


「じゃじゃーん、しーぽんですよー。
 今回はちょっと別の所の話ですよー。
 神様はすべてをみそなわすです。
 ・・・ほかのことをしてなかったら?
 というわけで今回は神様たちが見ていたことをあちしが変わってお知らせするです。
 かたりべというですよー。
 ではすたーとですよー」

 こちらはクプクプさんですよー。クプクプさんはリウ太が付けた名前です。いい名前だと思うですよー。
 そのクプクプさんはマシス爺に心を折られ、押し付けられた盗賊を連れて近くの町に帰ったです。
 〝なぜ〟は必要なかったです。マシス爺がやれといえばそれは正義なのです。

 その町は北の玄関口と呼ばれる町だったです。名前は知らねーです。この先はリウ太の暮らす『辺境』と呼ばれる地区になるですよー。
 つまりここまでが文明圏ですよー。

(それはひどい)by?

 何でこんな町にクプクプさんが来たかというと、それは知らねーですよー。
 あっ、資料で出てきたですよー。父ちゃんサンキューですよー。

 資料によるとここはリュメルクローテ公爵の派閥の貴族が領有する町なんだそうですよー。なんでも温泉で有名なところです?
 リュメルクローテ公爵も羽振りがいいとは言ってもやはり新興派閥です。
 勇者を盾にして威張っていても勇者も子供でまだ何の実績もないですよー。
 なので温泉に湯治に行くという理由で派閥の貴族が集まったりしているですよー。
 出る杭は打たれるから仕方ないですよー。

 そこにヘロヘロになったクプクプさんがたどり着いたですよー。もともとクプクプさんの目的地もここだったみたいですよー。

「ご苦労だったな、グーブノーグ子爵…クソジジイの様子を探りに行って盗賊退治とは勤勉なことよな」

 ヘロヘロのクプクプさんに向かってそう言ったのは派閥の首魁、ルーザー・リュメルクローテ公爵その人だったです。
 武断的な性格をしているおっさんですが、見た目は残念なおしゃれさんだったりします。
 髪の毛とかおひげとか横に向かってぴんと撥ねてクルクルってしているです。なんか頭にモップを乗っけているみたいですよー。
 ケラケラケラ。

「はあーーーーーーっ」

 クプクプさんは公爵とそれにくっついてきた貴族たち、そして軍人風の男たちをみて深く深くため息をついたです。
 ちなみに軍人風の男は軍人ですよー。といっても魔法が得意な魔法師団ですよー。
 リュメルクローテ公爵、子供の七光りで現在魔法師団で副団長をやっていたりするデス。
 団長にはなれなかったです?
 虎《ゆうしゃ》の威を借る狐だから実績がないですよー。

「しかし、よくやったぞクープ卿、かなりの規模の盗賊団ではないか。最近苦情の上がっているやつらに相違ない。
 じつをいうと我も困っておったのだ」

 そう言った貴族はこの町の領主を務めている貴族ですよー。名前は知らねーです。

「いや、実際問題、我らの派閥も功績の一つも欲しかったのでな。その盗賊団の討伐を考えてはいたのだ。
 それがすべて生け捕りとは畏れ入る。
 貴兄の立場もこれでかなり良くなるだろうな」

「これを勇者の手柄にするのはどうだろうか?」

「いやいや、10歳の子供では無理がないか?」

「勇者ならいけるのでは?」

 貴族は全部で10人ぐらいるです。みんな好き勝手に言っているです。クプクプさんは先日まで彼らの仲間で、彼らのようにしていたですよ。

「ふざけるなー、私がどんな目にあったと思っているんだーーーーーーー!」

 クプクプさんがキレたですよー。

 一様に驚く貴族たちですよ。

「この盗賊どもを捕まえたのはマシス公爵様だ。
 私は後処理をまかされただけだ」

 その言葉に集まった貴族たちは疑問符をまき散らしながら説明を求めたです。
 でもクプクプさんはそれには答えなかったですよ。

「私は派閥を抜けさせてもらう」

 そしてそういいはなったです。

「私は勇者についていけばいい思いができると思っていた。
 やっと自分のターンが回ってきたと思ったんだ。
 父上と比べられて馬鹿にされることもない。実績をたてて、一人前だとみんなに認めさせることができる…
 だがそれは間違いだった。
 勇者の派閥に入るということは、大医王や竜帝とやり合うということだ。あんな化け物どもと、キチ●イとやり合わねばならんのだぞ。
 勇者?
 何の役に立つんだそれ?

 勇者がいつも私らを守ってくれるのか?
 勇者がどんなに活躍しても、私が直接攻撃されれば勇者の権威なんぞ何にもならんのだぞ!

 大医王は勇者のなかまだからといって遠慮なんかしてくれないぞ。俺は地獄を見たんだ。
 立身出世なんかいらん。
 死ぬまで大医王の犬でもいいんだ。
 あんな目にはもう二度と会いたくないんだっ!!!!!!!!」

 魂の叫びですよー。
 その後クプクプさんはおいおいと鳴きだし、地面を両手でたたき、慟哭したです。
 慟哭なんてなかなかできるものではないですよー。

 クプクプさんの後ろにいた騎士たちは同じように嗚咽を漏らし、時にケタケタと笑ったです。

 その異様な光景は派閥の貴族たちの心胆を寒からしめたですよー。

 このままではまずいとおもったです?
 派閥の主要な貴族たちは説得を試みたです。このままでは派閥にものすごく悪影響がでそうなので当然です。

「我々は今代の勇者を擁しているのだぞ。
 実績を積んでいけばその権威は絶大だ。先代勇者の例も…
 いや、なればこそ、勇者の権威があれば国王とだって対抗できるようになるのだ。ワシらが王国を導くものとなるのだぞ。
 その理想を捨てるというのか!」

 だがクプクプさんは言い返す。

「なぜ先代勇者の所で言葉を濁したんだ、わかっているさ、その先代勇者の仲間が大医王であり竜帝なんだ。
 今もって国王だって頭が上がらない!」

 みんながぐっと黙ったですよー。

「ふはははっ、そうさ、将来性があったって今は手も足も出ない。お前たちだってあの人たちには何も言えないじゃないか。
 相手は先代勇者の仲間なんだ。
 竜殺しの英雄様だ。
 あなたの息子は勇者かもしれないが、まだ何の実績もない。
 先代勇者さまの功績を上回らない限り大医王様や竜帝様の権威に対抗などできないじゃないか。
 あなたたちも目を覚ますといいんだ。勇者の権威なんて今の段階じゃ大して役に立たないんだ。
 今からいい気になっていたら権力を手にする前に叩き潰されてしまう」

 血を吐くような叫びだったです。
 よほど怖かったですよー。

 確かに勇者は貴重です。
 同時に二人は存在しないです、タタリが出てきた場合、勇者や聖女の特攻持ちがいなければ被害がどんどん大きくなるですよー。
 そして今代の勇者はリュメルクローテ公爵の息子です?。

 だからみんな気を使うし、大事にしてくれるですよー。
 でも実際問題、タタリに負けて死ぬ勇者も結構いるのですよー。歴史的には…

 今代の勇者も今は希望の光のように扱われているですが、それがいつまでも続くとは限らないですよー。
 虎の威を借る狐は虎がいなくなれば狩られるだけですよー。

「まっ、まあ、彼もいろいろ思うところがあるのでしょう。
 ここは少し時間をおいて、落ち着きましょう」

 ルーザーの最側近(腰ぎんちゃく)の一人がそう言って貴族たちを引き上げさせたです。
 このまま話を続けると派閥から抜けようとするものが続出するにきまっているです。

 ここに集まった貴族は即物的なものが多く、それだけに利益が見込めないとなればどう行動するかは火を見るより明らかだったですよー。
 彼は派閥の領袖であるリュメルクローテ公爵とは違い『派閥の力』が勇者の権威だけでどうこうなるものだとは考えていなかったです。割と頭がいいです。力は数なのですよー。

 その日の内にクプクプさんは盗賊関係の諸々を済ませて直ちに町を出ていったです。
 盗賊の賞金は彼のものになったわけです。でもね、これは罠なのですよー。罠。
 賞金が自分のものになったことでクプクプさんはなんとなく慰められて『大医王様…いい人だなあ…』なんて気分になっていたりするですよー。

 恐ろしい目にあったときに、その恐ろしいことをする相手と同化しようとすることで恐怖から逃れようとする心理が働いたりするです。それがこれですよー。
 本気で忠実な下僕一人完成だったですー。

 そしてルーザー・リュメルクローテは『ぐぬぬぬぬぬっ』と歯噛みをしていたです。

「おのれ、おのれ、おのれ、おのれ、おのれ―――――――! 過去の遺物どもがあぁぁぁぁぁぁぁっ!!
 俺は勇者の父なんだぞ。我妻は王女なのだぞ!
 俺は王族に比肩する存在なのだ!
 クソジジイが!
 このままではすまさん。絶対に済まさん。必ずひれ伏させてやるぞ…くそくそくそくそくそくそ!!」

 その顔はひどく歪んでいたです。
 まるで怨念そのものでもあるかのように…

◇・◇・◇・◇

《ほへ? ですよー》

「どうしたのしーぽん」

 いきなりムクッと起きだした寝るこは育つなしーぽんに僕は声をかけた。
 状況が分かっていないようにきょろきょろしている。

《うーむですよー、なにか夢を見ていたような気がするですよー》

「ゆめ?」

《はいです⤴ でも覚えてないですよー。父ちゃん母ちゃんが近くにいたような…》

 ぼくはうむむとうなるしーぽんをほほえましく見た。
 神様たちの夢でも見たんだろう。
 本人が元気バリバリなので問題なし。

「それよりもそろそろ着くってよ」

 しーぽんは跳ね起きて空に舞い上がり、車の風圧で飛ばされて僕の顔に体当たりした。そんでヨジヨジと頭に登って立ち上がり、そして遠くを眺めやった。
 そこにはマシス爺ちゃんが領主をやっている領都アクアムンダムがその威容を見せつけていたのだった。

□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □

 オネガイ。
 リウ太の話を読んで面白い、続きを読みたい。と思っていただけましたら【☆】とか【♡】とか押してやってください。
 今ちょっと作者が真剣にエネルギーを必要としております。
 お願いします。
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