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私は秘密を持っている 第五話

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 行き過ぎる人たちが、私の顔を下から覗き込むようにして見ているはずだ。弱みを持っている人間への疑念はなかなか晴れない。またしても、秘密は狙われているわけだ……。今度こそ、私の力だけでは守れないのかもしれない。私は怖々と顔を上げてみた。それぞれの目的にすっかり気を取られているのか、誰もこちらを見てはいなかった。裁縫の針山の中に、一本だけ赤い針が混じっていたとしても、通常の場合、ほとんどの人はそんなことに気づかぬものだ。人間は自分にとって良い方にしか考えやしない……。いや、あるいは、それすらも、私の思い込みかもしれないのだが……。

『この男もいい加減しぶといな……。テレビやラジオの報道から察するに、あの秘密は、まだ誰にも暴かれていないようだ。しかし、自分が滅する威力の爆弾をいつまでも抱えておきたいとは思わないはずだ。いったい、どういうタイミングで、例の秘密をぶちまけるつもりなのだろう?』と多くの人が思っているのかもしれない。こちらが絶対に内心を読まれはしないことを最大の利としているのと同様に、敵方の出方も事前に知ることは出来ない。ライフル銃の銃口は、すでにこちらの方に向けられているのかも知れない。約二秒後には、その弾丸は私の心臓を貫通して、秘密ごと撃ち抜かれるかも知れぬ。そんな緊迫感を全身の神経でヒシヒシと感じながら、自然と足は震えていた。様々な事態に備えながら、駅前の人の多い通りを歩くことにした。

 私は数分のうちに、かなり寂れた、小さな商店街へと足を踏み入れた。すでに夕方になろうとしているのに、この付近を買い物目当てに通り抜けていく人の数は、容易に数えられるほどにまばらだった。次々と繰り出される悪政により、この国の経済がすっかり麻痺してから、すでに久しい。都会も農村も、どこもかしこも、否応なく寂れていくのかもしれない。自分の財布の中身だけは必死に守り抜こうとしている人々が、かえって経済を悪循環させているわけだ。惣菜屋の女将がのっそりと店の外に出てきて、なぜだか、水が溢れるほどにそそがれたバケツをそこに置いて、眉間に深いシワを寄せ、どこか不機嫌そうにしていた。周囲には客に化けそうな通行人はいない。その苛立つ気持ちも分かりそうな気もする。彼女はしばらくの間、腕を組んで仁王立ちをしていたが、それでも、ストレスの発散が叶わぬと見ると、何かにとり憑かれたかのように、鬼のような形相で道路のあちこちに水をまき始めた。もし、辺り一面の気温を下げたいと願っているのなら、太陽が沈みかけている今となっては、すでに意味はなく、数分も経たずにアスファルトは水びたしになった。

「これでもか、これでもか、みんなで私をバカにしやがって!」

 彼女は直近の嫌なことの全てを、とにかく忘れ去ろうとするかのように、真っ赤な顔をしてそう叫んでいたのだ。しかし、周囲の人々たちは、この事態を特に異常とは考えずに、いちいち反応はしなかった。病院を紹介する人も、警察に通報する人もいなかった。皆、他人ごとと、声をかけることもなしに、目もくれずに通り過ぎていった。『自分が平静を保っていれば、とりあえず、それでいい……』ああ、大都会とは寂しいところだ……。

「どうも、すいません。今日はそんなに暑いですかね? いえ、昼間はどうだったか忘れましたが、私の感覚ではね、どうもそうは感じられませんのでね……」

 そう尋ねてみると、女将はイライラしたような表情をさらに尖らせ、こちらをふり向いた。ようやく、腐り切った世間に対する、自分の懸命なアピールを見咎めてくれる人が現れたのだと、言いたいようだった。

「違うのよ、さっき、この前の通りを何かの影が過ぎっていったでしょ。いえ、見えてなくたっていいの。どうも、この数日、そういう怪しい気配が漂っているの。私はどこかに潜んでいる猫って奴が、とにかく嫌いなの、わかる? まず、可愛らしさを武器にして、人に寄り付いてくる態度が気に喰わない。私には誰も寄り付かないわけでしょ? そして、あの赤児の泣き声のような嗚咽を聴かされただけで、身体中に鳥肌が立つわけ。それこそ、一睡もできやしないわ。そういえば、まだ独身だった頃から、縁起を担いでいてね。自分の店の周りには、なるべく猫が寄り付かないようにしているのよ。不景気を乗り越えるおまじない。それとも、小動物が常日頃から自分のすぐ傍まで寄りついている状況で、何か得になることってあるのかしら? せっかく、芋コロッケを百個も揚げて待っているのに、こんな時間になっても、金余りの客も仏も現れないし、今日は、化粧のノリがいいくらいで、他には何もいいことが起きないから、せめて、猫だけは遠ざけて起きたいの。もうね、何も売れなくたっていいわ。せめて、猫をうちから遠ざけておく。今はそれだけでも成功させたいの」

「もし、よろしければ、その余ったコロッケを二つほど売ってくれませんか? いえ、冷めていても構いませんよ」

 このままでは、そのうち通行人に水をぶっかけ始めて、見たくもないトラブルを引き起こしてしまいそうだった。自分の手が届く範囲の災厄は、なるべく防ぐべきだ。私は彼女の荒い気性を少しでもなだめようとして、丁寧な口調で、そう話しかけた。通りすがりによる、ただの出来心であっても、それにより、犯罪が減る可能性はあるのだ。『自分から施しをすれば、いつか、自分を救ってくれる人も現れるかもしれない』ああ、常日頃から考えていることだが、余りにも都合が良すぎるだろうか……。

「本当にこのコロッケを買って貰えるの? それなら、早く、中に入ってよ。猫よりもいいものを食べたいって言いなさいよ。ああ、ようやく、匂いに釣られた猫ではなく、本物のお客さんが来たのね。これで、ようやく、目が覚めたわ。心が落ち着いてきたわ。私は意地を張っていたのかもね。でもね、本当はあなたのような、素直なお客が欲しかっただけなの」

 女将は今日初めてつくろったのだと思えるような笑顔を浮かべて、雑多に並べられている惣菜の品揃えを、すっかり見せてくれた。鶏の唐揚げ、茄子やイカの天ぷら、温泉卵、ゴーヤの煮物、ほうれん草とベーコンの炒め物、きゅうりと沢庵の漬け物、など。取るに足らないものばかりだが、需要がまったく無いということもないだろう。ただ、この厳しい不景気の折に、競争に勝ち得る商品とは言い難かった。

「から揚げもいいですね。今日のところは、こちらにしましょうか」

 自分のやろうとしていることが、ほとんどうまくいっていないので、せめて他の不幸な人たちの役に立ってやろうかと思い、私はいくつかの商品を試みに指さしてみた。

「あなた、よく見たら、有名人なんじゃないの? この間、テレビで見たわ……。何でも、政府の中枢や裏社会の機密情報を握っているとかで……」

 女将は何か重要なことにでも、気がついたかのように、惣菜の山を並び替えていた、その動きをぴたりと止めた。誰にも秘密を明かせないという大前提はあっても、定年を迎えたわけでもないのに、自宅にずっと引きこもって暮らすわけにはいかない。食糧も他人との会話や笑顔も、この先、生きていくためにはぜひとも必要なのだ。日常生活において、私と相対する可能性がある、多くの商売人たちは、これほどの著名人と接することに、まったく慣れておらず、その戸惑いを隠せなかったり、このような、ありふれた対応をしたりする。例えば、会員制高級レストランのスタッフであったなら、もっと、違うかしこまった対応をするはずだ。特別なゲストである、こちらの感情をまったく波立たせぬように、きっちりと訓練されたもてなしと、行き届いた配慮が必ずあるはずだ。それらは、万民が持つ秘密への興味とはいっさい関係がなく、少なくとも、彼らは政治家や企業幹部といった重鎮たちに幾度となく出会ったことがあるからだ。緊張の場において、慣れとはもっとも重要なファクターである。

 そんな高貴で神聖なる特殊な世界を、まるで知りもしない一般庶民たちは、自分の巣へと繰り返し餌を運ぶ、無数の兵隊アリたちのように、どんなときに、誰と出会ったとしても、常に同じ対応を繰り返すのみである。日頃から、常にボケーっとした顔をして、少しの金と誤った情報にのみ反応する、同じような生活を送っていては、何十年経ったとしても、国家を揺るがすような秘密は、自分の心に染み込んでこないわけだ。それは自明である。

「ええ、今、あちこちで騒がれている、秘密を持っている男というのはですね、実をいうと、この私のことなんです。この顔をテレビや新聞で見たことありますか?」

 少し偉ぶって、そう語りながらも、やや照れ臭くなって、私は身体をもじもじさせた。少し考えてみれば、この私の顔を街を行き交う、全ての人々が知っていたとしても、何ら不思議は無いわけだ。ただ、すれ違う庶民たちから、何度となく指を差されても、まだ、自分が特別な存在であることに慣れきってはいなかった。『この秘密は、いずれ漏れ出して、破裂してしまい、この社会全体を大きく揺るがす』という基本原理を、この自分でさえ、うまく飲み込めていないせいである。しかし、その絵もいわれぬ人間臭さが、自分の魅力であり、今後、人を惹き付ける良いところだとも思うわけだ。マスコミ各社には、全く肉眼で捉えられない秘密をしつこく嗅ぎ回すよりも、この表面に見えている、庶民っぽい部分にこそ、もっとスポットライトをあててもらえれば、今は有名になり切れていない、この私だって、さらなる人気を獲得できるはずだ。

「いいわねえ、若いって……。社会に出て、まだ間もないんでしょう? その歳で、体内に立派な秘密があるなんてねえ……。老いも若きも、誰からも注目されている、あなたのような人から見れば、惣菜や揚げものを売ることで、日銭を稼ぐ人生なんて、ずいぶん、つまらないものに見えるんでしょうね……」

「そんなことありませんよ。秘密っていうものも、身体に馴染んでくると、それほど良いものじゃないんです。目や手といった器官を用いても、まったく捉えどころがないのに、ざわざわと心を責めたててきます。何とかその奥を見通してやろうと、深く深くと考えているうちに、少しずつ、悩み事へと変化して、最初は良好だったこの気持ちを、少しずつ暗くすることもあるんですよ」

 私は余計な説明をしてしまってから、素早く商品の代金を支払った。女将は唐揚げとコロッケを手慣れたてつきで丁寧に梱包してくれた。

「あなたは立派な人だわ……。もし、私にその秘密を打ち明けてくれるのなら、惣菜の代金なんて、必要ないんだけど……」

 女将は頬を赤く染めて、少し恥ずかしそうに、そして、半ば悔しそうに、ほとんど聴こえないようにそう呟いた。私は商品を受けとると、真実を巧みに濁す苦笑いをして、それ以上は何も語らずに店の外へと飛び出した。時間を余計に潰してしまった。報道陣には自分の姿を見られぬように、なるべく速足で、その場を離れなければならなかった。『君は我が国にとって特別な存在だ。無関係の一般庶民とは、余計な親交を持たないように』まるで、誰かにそう命じられているかのようだった。

 夜からは傘が必要との予報であったが、まだ、天気は崩れそうになかった。これなら、家に帰りつくまで、十分にもちそうだった。この寄り道は、ほとんどが期待外れであり、無駄足にはなったが、まるで役に立たなかった精神科病院の医者を、今さら恨むわけにはいかないだろう。秘密を取り除くことは、今日のところはあきらめるしかなかった。そんなことを頭に思い描きながら、駅までの裏通りを呼吸を整えながら、ゆっくりと歩き、道路脇の美しいイチョウ並木に見惚れていた。思ったより人通りはなかった。最近では感じられなかったほどに、平和な雰囲気が漂っていた。そのために、私はすっかり油断してしまっていた。自分が枯渇した宝石のように稀有な存在であるにも関わらず、ボディーガードすらも付けずに、危険な外界を出歩いていることをすっかり忘れていたのだ。どんな平和な農村地帯でも、残酷な殺人事件は起きているというのに。

 嫌な気配に気がつくと、真っ黒なスーツを着た、二人組の不審な男たちが、私を取り囲むように、ゆっくりと近づいてきた。秘密から目を逸らし、上の空であったこともあり、それに反応して身構えることは出来なかった。サングラスをかけた男がその右手に、刃渡り十五センチはあろうかという、サバイバルナイフを取り出した。無事に済むはずがない。私は凶器を見せられて、すっかり仰天し、顔を真っ青にして、慌てて振り返り、逆方向に向けて、一目散に走り去ろうとした。しかし、相手の方が一枚上手だった。動きを予期していた、もう一人の男が、素早いフットワークで回り込み、そのまま、背後から羽交い締めにされてしまった。

「今日はこんな日なんですよ! な、何をやっても、うまくいかない日なんです! こんなことなら、サイコロを三回ほど振ってから出て来れば良かったのに!」

 混乱と興奮が渦巻く中、私は周囲に危機を知らせて、視界に入っていない誰かに助けを呼ぶために、声を張り上げ、思いっきりそう叫んだ。

「うるせえ! 黙れ!」

 もう一人の男が素早く近づいてきて、私の喉元に鋭いナイフをあてがった。私の身体を大事に扱うつもりなど最初からないらしい。明確な目的を持った凶漢に対すると、訓練を受けていない人間など、こんなものだ。すでに万事休すである。スパイ映画では、こんな局面から、主人公が相手の股間を蹴り上げて、背負い投げにして、窮地を脱する見せ場がよくあるのだが、実際にこんな局面を迎えると、とにかく恐ろしくて、顎がガクガクと震えて、そんな持ってもいない格闘術を発揮できそうにはなかった。学生の頃に少しだけ習った柔道ではまるで無駄だった。私はもはや抵抗することさえ出来なかった。おそらくは、こんな目に遭うのも、秘密が原因なのだろうが、いくらなんでも、こんな乱暴にされたことはないので、襲撃してきた相手方の目的が、ぜひとも知りたくなった。

「ま、待ってください、とにかく、事情を聴かせてください。あなたがたは、いったい、どちらの団体の方ですか? なぜ、こんなところに? もしや、敵対する宗教や思想信条の持ち主ですか? テレビで流されてきた、これまでの私の行動や発言に対して、いい加減腹を立ててしまったんですか? それとも、裏社会のボスからの極秘命令でしょうかね。ひとまず落ち着いてください。他人の一つひとつの行動によって、どんなに激しい感情が呼び起こされたとしても、直線的に行動してはいけません。見えないカウンターを恐れましょう!」

「うるせえ! 俺達の目的のものさえ、すぐに出すんなら、命だけは許してやる。だが、余計なことを、それ以上、ぺらぺら喋ると、このまま刺し殺すぞ」

 男たちは私の心からの説得に対して、まるで耳を貸すことはなく、殺気をみなぎらせ、すごい剣幕だった。これで判明したわけだが、彼らは疑いようもなく、ギャングだった。思想哲学や道徳などを微塵も持ち合わせておらず、最初から、私に危害を加える目的だけで、近づいてきたように思えた。この私に悪意を持つことになった要因をぜひとも探ってやりたいとも思っていたが、そもそも、大衆酒場の席に座って穏便に話し合う余地なんて、どこにもなかったのだ。それでも、私は焦りと混乱のあまり、何とか男たちを説得して、この窮地を脱する術はないかと考えていた。

「代々木ってのは、まったくいい土地だぜ。新宿と渋谷という二大都市に挟まれていながら、通勤時間帯以外は、ほとんど通行人を見ねえ、この場で前代未聞の拉致事件が起きているのに、この静けさだ。お巡りやパトカーなんて、どこを見回しても、駅前以外はほとんど見ねえ。おまえが、どんな驚愕の秘密をここで語ったところで、あるいは何も語らずに、俺たちを徹底的に怒らせて、ここでどんな無様な死に方をしたところで、それを見ている人間は、誰もいないということだぜ。天国に着いた後で、死に方すら証言して貰えなかったのを知るってのは、いささか、寂しいもんじゃねえのか?」

 男は耳元で、そう囁きつつ、トカゲのように舌なめずりをしながら、私の首の皮の上で、銀色に輝くナイフをゆっくり滑らせていった。鋼鉄の冷たい感触が心臓まで伝わってきて、生き延びることが出来るなら、何でもするという思いが急速に湧いてきた。自分の身を危険に晒してまで、黙秘を貫く気など、どんどん失せていった。

「待ってください! この広い世の中には、様々な思想の持ち主がいるとは言え、短絡的で極端な思考を持った一部の人間たちは、筋の通った賢明な議論をすることを、すぐに避けて、暴力的な直接行動に出ると思うんです。今のあなたがたのやり口がまさにそれです。自分たちの通るはずもない極論を何とか認めさせようと、強引に押し続けていくだけで、相手方からの反論は徹底的に無視する。そもそも、話し合いにもなりはしない。そんなやり方では、結局のところ、大衆の多数派を納得させることなんて出来るわけないんです。思想の統一を図る近道のように見えて、実は大きな回り道をしているわけです。まるで、戦争でしか、結着をつけることを知らなかった、前世紀以前の人間たちの考え方です。現代はもはや、強大な武器を突き付け合って、互いに脅し合いながら、意見をぶつけ合う時代ではありません。今は、大衆の心の微妙な揺れ幅が世論の土台となって、政治を動かしていく時代になったんです。多くの犠牲を払いつつも、ようやく、市民も議会での話し合いに参加する時代になりました。旗を立てて、顔をマスクで隠して、付近の住民を威圧しながら、デモ行進をする時代はすでに終わりました。今は個人個人の小さな主張こそが大事です。これまで見向きもされなかった、目立たない職業の人々の明確な主張が、これまで政治に無関心だった小市民の感情を激しく揺れ動かす時代です。直接行動よりも、まずは話し合いです。憎しみや怒りはさておいて、お互いが少しずつでも譲歩していきませんと、多くの大衆を納得させるような合意には至りませんし、本当にいい社会は生まれないと思うんです」

「だから、うるせえ! 何をぶつぶつ言ってやがる! 早くこっちへ来い!」

 これだけ胸に迫る、実直な話を聞かせてやったというのに、まるで取り付く島もなく、彼らは私の上着を掴んで、強引に引きずったまま、少しづつ、ひと気のない細い路地の方へと移動していった。この恐るべき事態を見ている人は、彼らの主張していた通り、残念ながら一人もいなかった。私はもはや無駄な抵抗はしなかった。強力な武器を持った相手を、これ以上逆上させるのは、さすがにまずいと思った。しかし、このまま無抵抗でいても、秘密を抜き取られた後に、結局殺される危険もあり、何もしないわけにもいかない。まして、ここで弱気の風に吹かれて、どこの馬の骨かも知れない相手に、簡単に秘密を明け渡してしまうわけにもいかない。何とか、彼らを言いくるめることで、秘密を守りつつ、無事に解放してもらう他なかった。
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