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ネリーが目を開けると、ボルフが自分をのぞき込んでいた。

「ありがとう、キヤイルは成人になれるそうだよ」

メドジェ族の服を着せられている。
今ならなんとなく分かる、あの衣も捧げものだったのだろう。
お腹に重みを感じて目を向けると、キヤイルの幼い顔が眠っていた。

「君が目を覚ますまでは魔獣に変わらない方がいいと婆様が言ったんだ。キヤイルはどうせ動けないなら君のそばがいいらしい」

ボルフが小さな筒を確認しながら言う。

「キヤイルの身体には魔力が満ちた。しかし君は魔力を貯めておけなかったらしい。つがいを選び直していいんだとキヤイルには言ってある」

細長い糸のついた筒はシャラリシャラリと音を立てた。

「メーユでは国の宝なんだろう?」

そうだ。
孤児院の子どもたちも待っている。
何よりキヤイルはまだ幼い少年なのだ。

「戻りたいかい?」

しばらく黙り込んだ後、ネリーは小さく聞いた。

「キヤイルが成人になるには何年かかるの?」
「君次第だ。キヤイルは君じゃなきゃイヤだとごねているけれど、君だって王都に想う人はいないのかい?竜使いの騎士のピンを7個も持っているような君が」

黙ったままネリーはキヤイルの暗い赤色の頭をなでた。

「ここにいたいわ」

ぱっ、とキヤイルの空の色の瞳が開いた。

「お前は寝たふりをして」

ボルフが呆れた声を出す。

「僕も早く妻や娘に会いたいよ」

ネリーに抱きつこうとするキヤイルの首根っこを掴んでボルフが何てことはないという声で言う。

「最後の戦だ。メーユ軍を蹴散らして滅ぼしてしまおうね」
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