上 下
16 / 27

※妹の末路1

しおりを挟む
 私は公爵家の次女としてこの世に生を受けた。幼少期は体が弱くて、お母様もお父様も私につきっきりで看病してくれていた。
 私には姉が一人いたけれど、姉は何故だが容姿は人並み、要領においては人並みかそれ以下でしかなかった。
 私は別にお姉様が嫌いではなかった。だってお姉様が落ちぶれてくれているおかげで、自然と私に称賛が向くもの。勉強も裁縫も社交ダンスも私に取っては楽なものだった。お姉様がどうして何も出来ないのか、私に取っては不思議でならなかった。
 完璧な私には自然と人も集まった。
 両親の愛情も、周りからの関心も、お姉様の婚約者である王太子の愛だって、全て私に向けられていた。どうしていつまでもお姉様が王太子エリック様の婚約者でいられるのか、不思議でならなかった。
 だからお姉様が平民になりたいと言った時、心の底から嬉しかった。愚かなお姉様は自ら平民になることを望み、王太子妃の座を辞退したのだ。考えればもっと良い方法があるというのに、やっぱりお姉様は頭が悪かった。だから私が最高の形で送り出してあげた。
 エリック様も国王様も私のことを歓迎してくれた。でも、それから私がエリック様の婚約者として過ごすこと二年、私は王妃様からのいじめに悩むようになった。完璧な私に嫌味にも注意してくる王妃様。私は彼女が嫌でエリック様にも国王様にも訴えたが、誰も解決しようとはしてくれなかった。エリック様は優しいけれど、へなちょこだったのだ。
 でもそんな時に私の運命の人が現れた。砂漠の国の王イーモン様だ。褐色の肌に短く癖のある黒髪。奥の深い黒目を見た途端、私は彼に一瞬にして恋に落ちた。そしてそれは彼も同じだった。
 イーモン様にプロポーズされ、私は慣れない砂漠の国で一彼と一生を共にすることを決めた。
 エリック様の何倍もイーモン様は素敵だったし、王太子妃より王妃になれるなんて、イーモン様を選ばない理由がなかった。
 そのことを両親に伝えると慌てていた。エリック様との結婚式も近づいているのに何を言っているのか、と怒られた。
 娘の幸せを願わない親なんて要らない。
 彼らの反応を見て私はそう思った。そしてその日のうちに引き留めようとする両親を置いて、イーモン様と共に砂漠の国に向かった。



 あれから二週間経ち、やっとのことで砂漠の国についた。砂漠の国は予想していたより暑かったが、私はここの王妃になるのだから慣れなくてはいけない。

「イーモン様ぁ、これからどこへ向かうんですか?」
「それはついてからのお楽しみだ」

 隣で腕を組むイーモン様に連れられ、私は王宮内を歩いた。そして着いたのは……。


「ここが、今日から貴殿が暮らすハーレムだ」

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

奪い取るより奪った後のほうが大変だけど、大丈夫なのかしら

キョウキョウ
恋愛
公爵子息のアルフレッドは、侯爵令嬢である私(エヴリーヌ)を呼び出して婚約破棄を言い渡した。 しかも、すぐに私の妹であるドゥニーズを新たな婚約者として迎え入れる。 妹は、私から婚約相手を奪い取った。 いつものように、妹のドゥニーズは姉である私の持っているものを欲しがってのことだろう。 流石に、婚約者まで奪い取ってくるとは予想外たったけれど。 そういう事情があることを、アルフレッドにちゃんと説明したい。 それなのに私の忠告を疑って、聞き流した。 彼は、後悔することになるだろう。 そして妹も、私から婚約者を奪い取った後始末に追われることになる。 2人は、大丈夫なのかしら。

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

妹の事が好きだと冗談を言った王太子殿下。妹は王太子殿下が欲しいと言っていたし、本当に冗談なの?

田太 優
恋愛
婚約者である王太子殿下から妹のことが好きだったと言われ、婚約破棄を告げられた。 受け入れた私に焦ったのか、王太子殿下は冗談だと言った。 妹は昔から王太子殿下の婚約者になりたいと望んでいた。 今でもまだその気持ちがあるようだし、王太子殿下の言葉を信じていいのだろうか。 …そもそも冗談でも言って良いことと悪いことがある。 だから私は婚約破棄を受け入れた。 それなのに必死になる王太子殿下。

必要ないと言われたので、元の日常に戻ります

黒木 楓
恋愛
 私エレナは、3年間城で新たな聖女として暮らすも、突如「聖女は必要ない」と言われてしまう。  前の聖女の人は必死にルドロス国に加護を与えていたようで、私は魔力があるから問題なく加護を与えていた。  その違いから、「もう加護がなくても大丈夫だ」と思われたようで、私を追い出したいらしい。  森の中にある家で暮らしていた私は元の日常に戻り、国の異変を確認しながら過ごすことにする。  数日後――私の忠告通り、加護を失ったルドロス国は凶暴なモンスターによる被害を受け始める。  そして「助けてくれ」と城に居た人が何度も頼みに来るけど、私は動く気がなかった。

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。  しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。  だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。 ○○sideあり 全20話

【完結】どうかその想いが実りますように

おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。 学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。 いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。 貴方のその想いが実りますように…… もう私には願う事しかできないから。 ※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗 お読みいただく際ご注意くださいませ。 ※完結保証。全10話+番外編1話です。 ※番外編2話追加しました。 ※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...