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二十二話

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 さて、何を作ろう。
 今ある材料は、パン、水、じゃがいもやにんじんなどの根菜類に最低限の調味料、小麦粉に塩と胡椒それから油だけだ。卵や肉はない。
 それにパンは固く顎の力が足りないルイスが食べるのには適さない。
 ……無難だけど、スープね。
 出汁は野菜で取れるし、塩胡椒で味を整えればそれなりのものが出来るはず。
 私はじゃがいも、にんじん、玉ねぎをそれぞれ適量取り出し、皮を剥き食べやすい大きさに切り始めた。
 ジャガイモの皮は土が多く付いていて手で擦るのにも取りきれなかったので出汁には使わず、他は全て出汁用に皮や芯も鍋に入れる。そして水を加えて煮込んでいく。
 途中で灰汁を取ったり出汁用の皮や芯を抜いたりして全ての具材に火が通ったら、最後の仕上げに軽く塩胡椒で味を整えた。

「うん、上出来!」

 味見をすればそれなりに美味しいと言えるくらいのスープになっていた。
 いつのまにかルイスが立ち上がって鍋の中を覗き見ている。

「わぁ、美味しそうだね」
「いっぱい食べて良いのよ、ルイス。ここまで疲れたでしょう?」
「オデットお嬢様、どうやらスープを作って下さったようで。良い香りです。片付けは私が」
「良いわよ、ティアナも疲れているんだから。ルイスと先に食べていて」

 匂いを嗅ぎつけてか、ティアナも作業を中断して私の元まで来ていた。
 ティアナが残してきた作業場を見れば、サイアス様が馬車に木で作った代理の扉をはめているところだった。
 サイアス様がこちらを見ていることに気づいて、私は口を開く。

「サイアス様に最後の仕上げをしてもらっています。作業はもう終わりです」
「そうなの。早かったわね」
「ええ。スープを飲みましたら、出発しましょう。あの馬車は流石に人目に付くところでは走ることができないので、今晩限りのものとなってしまいましたが」
「そう……」

 確かに明らかに木の扉は浮いている。馬はサイアス様の白馬だから一緒についてくるのだろうけれども、大量の荷物はどうするのだろう。

「ねぇ、荷物はどうするの?結構量があるわよ」
「明日の朝、取り敢えず隣国の下町で宝石やドレスを売るつもりです。そこである程度は減るかと」

 確かに先程少し漁った時に見えたのは、ドレスがほとんどだった。そのボリュームで荷物は膨らんでいるようだったし、それが無くなればかなり減るのかもしれない。
 ティアナが出来るだけ生活に困らないように、お金になりそうな物を積んでくれたんだわ。

「宝石やネックレスについてですが、お嬢様が大事にしている物がありましたら事前に抜いていただけると助かります」
「分かったわ」

 ティアナはしばらくして、小さな箱のような物を私に差し出した。そこには私が今まで贈り物で手にした宝石やアクセサリーがぎっしり詰まっている。
 ほとんどが元婚約者のエリオットがくれたものだった。婚約破棄する前まではそれなりに仲が良かったので大切に保管していたけれど、今となっては必要性を感じない。
 私の手元に残ったのは、ティアナが初給料を費やして私に贈ってくれた、小さなお花の飾りがついたバレッタのみ。

「やっぱり、これしか無いわよね」

 私はそれを自分の髪に付けると、他のものはしまい直して、焚き火の側にいるルイスの隣に腰掛けた。
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