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5、結果
しおりを挟むあれから何日か経ち、あの事件をきっかけに私はアンジェリカ様と仲良くなった。晴れ空の下、アンジェリカ様の屋敷の庭でティーパーティーを楽しむ。
アンジェリカ様は優雅にティーカップを置く。その所作に見惚れていると、彼女はゆっくりと口を開いた。
「それにしても、あの時は本当に助かりましたわ。お陰でこうしてお茶を楽しむことも出来ていますし」
「いえいえ。ティアナ様の独り言をたまたま私が聞いただけですから。王子の婚約者を狙っている割には、化粧なんて小心者だなぁって思ってしまいましたけれど」
「でもそのお陰で私は助かりましたもの。アドルフ様に求婚されるとは思いませんでしたけれど」
「私も驚きました。あそこまで胸を張って堂々と言うなんて、と。私が隣にいたんですよ?呆れてしまいます」
あれからアドルフ様と私との婚約はすぐに破棄された。無理もないだろう。私の父もアドルフ様のお父様も相当彼に腹を立てており、アドルフ様の処分は廃嫡に決まった。
今は彼のお父様が領有している辺境地で暮らしているらしい。
「まぁ、廃嫡は当然の結果ですよね」
「ええ、むしろ王子と同様、幽閉しても良かったのではないかしら。王子、ティアナ子爵令嬢と仲良くやっているかしら?」
「おそらくその逆かと」
「まぁ、そうよね」
王子と言えば、「ティアナに騙された!アンジェリカ、許してくれ!」と叫ぶも虚しく、幽閉が決まったらしい。それもティアナ嬢と二人きりの。
今さら二人が仲良くやれるとは思わないが、それを可哀想だと思う心はない。まぁ、諦めがついた頃くらいにお互い仲良くなれるかもしれないのでは、と思うくらいだ。
それより私が気になるのは……。
「アンジェリカ様はこれからどうなさるのですか?新しい婚約者とかは……」
「まぁ、私ですか?そうね、婚約者……」
私の質問を考えているうちに、アンジェリカ様の顔はどんどん赤くなっていく。そして頬を両手で挟んで恥じらいながら小声でこう言った。
「……実はここだけの話だけれど、初恋の人に告白されたの」
「まぁ、素敵!」
「ま、まだ、婚約者とかではないけれど、一応その……両思いですし、ゆくゆくは……」
そう言ってアンジェリカ様はチラチラと遠くに立っている従者の一人を見た。きっとその人が相手なのだろう。
「良いですね」
「でも身分のこととかまだ色々壁があるから、これから二人で頑張って行かなくてはいけないわ」
「大丈夫ですよ。今回の騒動で、周りはもうアンジェリカ様に強く出られませんから」
嘘の証言をした者や証拠を作った者は、罰せられなかったものの次々と名前が挙げられていった。
周りの彼女に対する態度はひっくり返ったと言っても過言ではない。
「ありがとう、あなたがいたら何故か心強いわ。それより、貴方は何かそういうことないのかしら?」
「え、私?無いですよ何も……」
嘘だ。ちゃっかりうっかり幼馴染に告白されたりしている。まだ返事は保留中だけれど。
「嘘よ、絶対何かあるわ。でないと、顔がそんなに真っ赤になる理由なんてないもの」
コロコロと笑ったアンジェリカ様に釣られて私も笑った。
今回の騒動、被害を被った私たちだけれども、こうして仲良くなるなど不思議な縁もあるものだ。
人生何があるかわからないな、と思いながら私はアンジェリカ様に恋の相談をすることを決めたのだった。
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