14 / 14
晴れやかな日常
しおりを挟む
「なかなか美味しいわね」
ティーカップをソーサーに戻しながら、テリーヌは清々しい表情でそう言った。
「良かったわ。それ、昨日わざわざ並んで買いに行った、ティーフラワーの新作なのよ」
「あの人気店にわざわざ買いに行ったの!?暇ねぇ~」
「そういう貴方も、このチョコレートケーキ、わざわざ買いに行ったんでしょう?」
「それ、スウィートバブルの限定品よ。貴重なんだから味わって食べなさいよ!」
「はいはい」
ヴィオラが実家に戻ってからしばらく経った。社交界ではもっぱら話題の今回の不倫騒動。両親はどう反応すれば良いのか分からないらしく、怒ることも慰めることもなく、少し気まずい関係が続いている。
しかしヴィオラが傷心していないとが分かったのか、食事の席などでは他愛のない話をすることも徐々に増えて来た。
テリーヌもヴィオラの協力の元、無事離婚を成立することが出来た。しかも彼女らしく、たんまり慰謝料をぶんどっていった。
彼女の夫は遊び癖が激しかったため敵が多く、評判が地に落ちるのはあっという間だった。
社交会ではヴィオラとテリーヌがよく一緒にいることもあって、傷物令嬢仲間と揶揄されることもあるが、それ以上にルーカスやテリーヌの元夫に厳しい目が向けられていた。それに誰かが突っかかって来ても、テリーヌの気の強さの方が圧倒的に優っており、今ではそういうことも無くなった。
「……そういえば、あなたの元義母、懲りずにまた貴方の悪口言いふらしていたわよ。悪女だとか、息子は騙されただけだとか」
「そんなの放っとくとが一番よ」
「まぁそうね。こっちが何もせずとも、勝手に評判は急降下だもの。……だって、貴方のところの場合は公爵様が絡んでいるのよ? 貴方を非難することは、遠まわしに公爵様の判断が間違っていると言っているようなものだというのに」
「そうよねぇ。あの方、あんなに頭悪かったかしら」
社交界では爪弾きにされていると聞く。
「ダリア様も婚約破棄されて、反省するまで修道院送りのようよ。不倫は重罪だもの。よくある事だけれど……バレたら終わり。公爵家の名誉より真実を優先した公爵様は尊敬に値するわ。愛妻家として有名なお方だから、不倫なんて許すまじき事だったのでしょうね」
「あのお方には感謝しかないわ。丁寧にお断りしたけれど、慰謝料も払うと言ってくれたし。……むしろその誠実さが今では評価されていると聞くわ」
「ええそうね。でも、もし評判が少し落ちても、一筋縄ではいかないあのお方なら、あっという間に元通りよ」
「それもそうね」
ふっと笑ってケーキを一欠片、口に入れる。
舌の上であっという間に溶けて無くなったそれは、甘さも口溶けもこの上なく極上だ。
「そうそう、ヴィオラ。あなた、良い人出来た?」
「そんな人がいれば、ここで貴方とお茶なんて飲んでないわよ。……そういうテリーヌは?」
「バカね。私は今の生活を気に入っているのよ。モテモテだけど、全て断っているわ」
「モテモテって……年上ばっかじゃない」
「っ!私の魅力は人生経験の浅い人にはわからないのよっ!」
プイッとそっぽを向いたテリーヌに、ヴィオラはコロコロと笑う。
そして「私ももう少しくらいこの生活を楽しんでも良いかな」と心の中でテリーヌに同意した。
ティーカップをソーサーに戻しながら、テリーヌは清々しい表情でそう言った。
「良かったわ。それ、昨日わざわざ並んで買いに行った、ティーフラワーの新作なのよ」
「あの人気店にわざわざ買いに行ったの!?暇ねぇ~」
「そういう貴方も、このチョコレートケーキ、わざわざ買いに行ったんでしょう?」
「それ、スウィートバブルの限定品よ。貴重なんだから味わって食べなさいよ!」
「はいはい」
ヴィオラが実家に戻ってからしばらく経った。社交界ではもっぱら話題の今回の不倫騒動。両親はどう反応すれば良いのか分からないらしく、怒ることも慰めることもなく、少し気まずい関係が続いている。
しかしヴィオラが傷心していないとが分かったのか、食事の席などでは他愛のない話をすることも徐々に増えて来た。
テリーヌもヴィオラの協力の元、無事離婚を成立することが出来た。しかも彼女らしく、たんまり慰謝料をぶんどっていった。
彼女の夫は遊び癖が激しかったため敵が多く、評判が地に落ちるのはあっという間だった。
社交会ではヴィオラとテリーヌがよく一緒にいることもあって、傷物令嬢仲間と揶揄されることもあるが、それ以上にルーカスやテリーヌの元夫に厳しい目が向けられていた。それに誰かが突っかかって来ても、テリーヌの気の強さの方が圧倒的に優っており、今ではそういうことも無くなった。
「……そういえば、あなたの元義母、懲りずにまた貴方の悪口言いふらしていたわよ。悪女だとか、息子は騙されただけだとか」
「そんなの放っとくとが一番よ」
「まぁそうね。こっちが何もせずとも、勝手に評判は急降下だもの。……だって、貴方のところの場合は公爵様が絡んでいるのよ? 貴方を非難することは、遠まわしに公爵様の判断が間違っていると言っているようなものだというのに」
「そうよねぇ。あの方、あんなに頭悪かったかしら」
社交界では爪弾きにされていると聞く。
「ダリア様も婚約破棄されて、反省するまで修道院送りのようよ。不倫は重罪だもの。よくある事だけれど……バレたら終わり。公爵家の名誉より真実を優先した公爵様は尊敬に値するわ。愛妻家として有名なお方だから、不倫なんて許すまじき事だったのでしょうね」
「あのお方には感謝しかないわ。丁寧にお断りしたけれど、慰謝料も払うと言ってくれたし。……むしろその誠実さが今では評価されていると聞くわ」
「ええそうね。でも、もし評判が少し落ちても、一筋縄ではいかないあのお方なら、あっという間に元通りよ」
「それもそうね」
ふっと笑ってケーキを一欠片、口に入れる。
舌の上であっという間に溶けて無くなったそれは、甘さも口溶けもこの上なく極上だ。
「そうそう、ヴィオラ。あなた、良い人出来た?」
「そんな人がいれば、ここで貴方とお茶なんて飲んでないわよ。……そういうテリーヌは?」
「バカね。私は今の生活を気に入っているのよ。モテモテだけど、全て断っているわ」
「モテモテって……年上ばっかじゃない」
「っ!私の魅力は人生経験の浅い人にはわからないのよっ!」
プイッとそっぽを向いたテリーヌに、ヴィオラはコロコロと笑う。
そして「私ももう少しくらいこの生活を楽しんでも良いかな」と心の中でテリーヌに同意した。
122
お気に入りに追加
1,736
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完結】ハーレム構成員とその婚約者
里音
恋愛
わたくしには見目麗しい人気者の婚約者がいます。
彼は婚約者のわたくしに素っ気ない態度です。
そんな彼が途中編入の令嬢を生徒会としてお世話することになりました。
異例の事でその彼女のお世話をしている生徒会は彼女の美貌もあいまって見るからに彼女のハーレム構成員のようだと噂されています。
わたくしの婚約者様も彼女に惹かれているのかもしれません。最近お二人で行動する事も多いのですから。
婚約者が彼女のハーレム構成員だと言われたり、彼は彼女に夢中だと噂されたり、2人っきりなのを遠くから見て嫉妬はするし傷つきはします。でもわたくしは彼が大好きなのです。彼をこんな醜い感情で煩わせたくありません。
なのでわたくしはいつものように笑顔で「お会いできて嬉しいです。」と伝えています。
周りには憐れな、ハーレム構成員の婚約者だと思われていようとも。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
話の一コマを切り取るような形にしたかったのですが、終わりがモヤモヤと…力不足です。
コメントは賛否両論受け付けますがメンタル弱いのでお返事はできないかもしれません。
【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!
山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」
夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。
この罰は永遠に
豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」
「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」
「……ふうん」
その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。
なろう様でも公開中です。
私には婚約者がいた
れもんぴーる
恋愛
私には優秀な魔法使いの婚約者がいる。彼の仕事が忙しくて会えない時間が多くなり、その間私は花の世話をして過ごす。ある日、彼の恋人を名乗る女性から婚約を解消してと手紙が・・・。私は大切な花の世話を忘れるほど嘆き悲しむ。すると彼は・・・?
*かなりショートストーリーです。長編にするつもりで書き始めたのに、なぜか主人公の一人語り風になり、書き直そうにもこれでしか納まりませんでした。不思議な力が(#^^#)
*なろうにも投稿しています
身代わりーダイヤモンドのように
Rj
恋愛
恋人のライアンには想い人がいる。その想い人に似ているから私を恋人にした。身代わりは本物にはなれない。
恋人のミッシェルが身代わりではいられないと自分のもとを去っていった。彼女の心に好きという言葉がとどかない。
お互い好きあっていたが破れた恋の話。
一話完結でしたが二話を加え全三話になりました。(6/24変更)
お父様、ざまあの時間です
佐崎咲
恋愛
義母と義姉に虐げられてきた私、ユミリア=ミストーク。
父は義母と義姉の所業を知っていながら放置。
ねえ。どう考えても不貞を働いたお父様が一番悪くない?
義母と義姉は置いといて、とにかくお父様、おまえだ!
私が幼い頃からあたためてきた『ざまあ』、今こそ発動してやんよ!
※無断転載・複写はお断りいたします。
(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!
青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。
図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです?
全5話。ゆるふわ。
やめてくれないか?ですって?それは私のセリフです。
あおくん
恋愛
公爵令嬢のエリザベートはとても優秀な女性だった。
そして彼女の婚約者も真面目な性格の王子だった。だけど王子の初めての恋に2人の関係は崩れ去る。
貴族意識高めの主人公による、詰問ストーリーです。
設定に関しては、ゆるゆる設定でふわっと進みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる