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味方

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 公爵様は鋭い眼をルーカスに向けた。

「今の現場、私もしっかり見ていたぞ」
「なっ……!」
「お父様!!」

 まさか公爵様もこの場にるとは。
 全く気づかなかった。
 テリーヌを見れば、彼女もあんぐりと口を開けている。しかしすぐに喜びの表情へと変わる。

「これは……やったわね!最強の人が味方になったわ」
「いやまだ味方って訳じゃ……」
「お父様!違うんです!!」

 こそこそと話していると、ダリア様が飛び出して公爵の腕に抱きついた。

「私、彼に脅されていて……今のは無理矢理。怖かったです、お父様……」

 さすが社交界の華と称されるだけあって、女であるヴィオラですら見惚れてしまうような儚さで目には涙を浮かべている。
 しかし公爵は表情を変えない。

「阿呆かダリア。お前とルーカス君との逢瀬を見たっていう証言がこれまでいくつもとれている」
「だからそれはルーカス様が無理矢理……」
「言い訳ばかりのお前に何を言っても無駄なようだな。少し甘やかしすぎたらしい。お前のことは後でにする。それよりも……」

 娘をひっぺがして、公爵はルーカスに近づいた。

「……今のはどういうことかね?ルーカス君」
「それは……」

 唸るルーカス。
 追い詰められて窮地に立たされたらしい彼は、突然ヴィオラの腕をとる。

「つ、妻の仕業でして。全て彼女が仕組んだことな……」

 パシン、とテリーヌが一発ビンタをルーカスにお見舞いした。
 突然のことに呆然とする夫に向かってテリーヌが怒りの声を上げる。

「私が言えることじゃないけど、それ以上ヴィオラのことを侮辱したら許さないわ!」
「彼女の言う通りだ。どうやら君は俗に言う「最低男」らしい。奥方がいながら私の娘にまで手を出したんだ。それ相応の覚悟というものは出来ているはずだ」
「っ!」

 公爵様はヴィオラに向き直るとその腰を折る。

「私の娘が、大変すまない」
「お、お顔をお上げください!公爵様の謝罪されることでは……」
「いや、娘の躾ができていなかった私の責任もある。ヴィオラ様、何かお力になれることがあれば何でも仰ってください」

 何でも……。
 それだったら、一つだけ頼みたいことがある。

「あの……でしたら一つお願いがあります」
「何でしょう」
「……夫、ルーカスとの離婚を認めてほしいんです」

 彼とやっていくのはもう無理だ。
 これ以上一緒にいても、ヴィオラがますます不幸になっていくだけ。

「終わらせて欲しいんです」

 さっさと自由になろう。

「それが貴方の願いであれば、協力しよう」

 公爵はヴィオラの願いに力強く頷いた。

 

 
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