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新章になったら新兵器や新装備は当たり前ですよね?
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「……これは何の冗談?」
「新しい遊びですかぁ?」
執務机に座るオレを見てエルは呆れた声を出し、リディアは頭や顔をぺちぺちと叩いている。
「フフフ、よくぞ見破ったな。」
俺は机の下から這い出して、椅子に座る『オレ』の横に立つ。
ここに座っているのは、俺が作ったゴーレムだ。
「その名も『身代わり君初号機』……額に埋め込んだ魔石には幻術魔法が仕込んであって本人そっくりに見せるというスグレモノだぞ!」
「こんなおもちゃで誤魔化せると思ったら、お間違いなのですよ。」
リディアが、えへんっと胸を張る。
『ウム』
「わわっ、喋りましたぁ!?」
『ああ。』
「喋れるんですね、しかもシンジさんの声そっくりです。」
『そうだな。』
「じゃぁ、甘い言葉を囁いてくれたりしますかぁ?」
『前向きに善処しよう。』
「本当ですかぁ!」
『却下だ。』
「即否定!!何でですかぁ!」
『今日はここまでだな。』
「ちょっと待ってくださいっ!さっき善処するって言ったじゃないですかぁ!」
『却下だ。』
「シンジさん、コレ壊れてますよぉ。殴っていいですかぁ。」
『その件については任せる。』
「じゃぁ殴りますっ!」
『却下だ。』
「ポンコツですぅ!ポンコツがいますよぉ!」
ウン、リディアが楽しそうで何よりだ。
「……と、まぁこの様に簡単な会話も出来るようになっている……とはいっても登録してある言葉を適当にしゃべるだけだが。」
「うぅ……シンジさんにオモチャで弄ばれましたぁ……。」
よよよ、と泣き崩れるリディア。
いいけどね、いい方には気を付けてね……誤解を招くから。
俺はリディアをスルーして説明を続ける。
「更に、この手に決裁印を持たせて、書類を置くと……。」
身代わり君の眼が光り、書類にポンポンと決裁印を押していく。
「コレ、押してないわよ。」
エルが印の押されていない書類を摘まみ上げる。
「あぁ、それは前年度のデーターと照らし合わせて不備がある可能性がある物だろ?」
俺はその書類に目を通すと、おかしな箇所に印を付け不決済に回す。
ゴーレムの中に検算回路が詰め込んであって、今までの書類内容をすべて記憶させてあるから、新規の案件以外ならある程度はこのゴーレムに任せることもできる。
さらに言えば、口の所がゲートミラーになっていて、何かあれば、そこを通して俺に書類を届けることもできるので、戦闘中とかでない限り、リアルタイムに対応することも可能だ。
「なに、その無駄に優秀な能力は?」
俺が自慢気に説明すると、エルが大仰なため息をつく。
「まぁ、基本的には優秀な秘書達が殆どやってくれるから、『身代わり君』が実際にやる事はハンコを押すことだけだろうけどな。」
後は、会いたくない奴に会わなきゃいけない時に使うとか……そう呟くとリディアが呆れかえったような目で見てくる。
「で、何でこんなものを?」
エルが説明を求めてくる。
「あ、あぁ、ほら、ここの領主やって2年じゃないか?街も落ち着いてきたし……ほらっつ、な?」
「で?」
「ほらっ?って言われても分らないですよぉ。」
「いや、領主も飽きて来たし、ここらでちょっと冒険に行きたいなぁって。」
アハハ、と笑ってみる。
「……つまり、冒険に出たいがために、無駄に高度な魔道技術の髄を極めたような代物を作った……と言うわけですか?」
エルが頭を抱えている。
「まぁ、簡単に言えばそうなるかな?」
「……シンジ!アンタバカなのっ、バカでしょっ!!」
「おバカがいますぅー。」
エルがキレ気味に叫び、それにリディアが追従する……そんなに、バカバカって連呼しなくても……。
「そうは言うけどなぁ……お前らは冒険、行きたくないのか?」
「「ウッ……」」
俺の言葉に、二人とも黙り込む。
「それにな、折角冒険に出るのならと、皆の装備を一新してみたんだが……。」
俺はそう言って二人にブレスレットを差し出す。
「それを装着した後、魔石に魔力を流して『ふわふわコスプレで、あなたのハートを撃ち抜くゾ♪』って叫んでみな。」
「な、何でそんな恥ずかしい事……バッカじゃないの!?」
エルが真っ赤になってわなわなと震えている横で、リディアが早速試していた。
『撃ち抜いちゃうゾ♪』
リディアの身体が光の粒子に包み込まれ、その光が収束すると新しい装備を纏ったリディアの姿が現れる。
薄いパステルピンクを基調として、要所に黒やネイビーをあしらう色彩。
全体のフォルムはスカートの裾がふわりと翻るドレスアーマーで、ふんわりとした柔らかい素材で出来ているように見えるが、魔力伝導・反射率が高く、常に強化魔法がかかっている為、ヘタな金属鎧より堅牢で、下手なマジックローブより魔法抵抗力が高いという、ぶっ飛んだ性能となっている。
加えて普段付けている左右の指輪にイヤリング、ネックレスに仕込んだ魔石を核とした防護結界も張られるため、理論上ではドラゴンクラスのパワーじゃないと防護を破ることは出来ないはずだ。
更にドレスアーマーに魔力増幅と消費軽減の魔法陣を仕込んである為、魔法の効果が従来の2.25倍、使用魔力量は約半分ななっている……はず。
「うぅ、……でも……。」
リディアの姿を見て触発されたのかエルがどうしようか悩んでいる。
「もぅ!……『ふわふわコスプレで、あなたのハートを撃ち抜くゾ♪』」
真っ赤になりながらそう叫ぶエルが光の粒子に包まれ、やがて新しい姿を現す。
エルの装備は黒を基調としたスタンダードなゴシックカラーで、デザインに多少の差異は有れど、基本的にはリディアと同じ仕様のドレスアーマーだ。
これは二人の戦闘スタイルが似ているので、ある意味必然であり、また二人が並んだ時のコントラストが映えるんじゃないかと、期待した結果である。
「どうしたの?」
エルが覗き込んでくる。
「いや……予想以上に似合っているから……。」
俺は二人の姿に目を奪われて、それ以上の言葉を紡ぐことが出来なかった。
「ありがと……。」
エルは顔を真っ赤にしながら、俯いて礼を言ってくる。
「でも、装備する度にあのセリフは……何とかならないの?」
「……、ゴメン。アレは冗談で、魔力を流して念じるだけで……ったぃ。」
「バカシンジっ!殴るわよっ!」
……もう殴ってる、っていうのはお約束ですか、そうですか。
「あと『杖』は、好きなイメージを思い描けば、それで固定できるから。」
俺がそう言うと、二人はこうかな?と色々試行錯誤をし始める。
「……どうだ?その装備で冒険に行きたくはないか?」
俺は二人の耳元でそう囁く。
二人にとってはまさしく「悪魔の囁き」だったに違いない。
「うぅ……でも、実際、執務はどうするのよ?」
エルが最後の抵抗とばかりにそんな事を言ってくる。
「リオナとレムに任せておけば、大抵の事は片がつくよ。その補佐の為の『身代わり君』だしな。」
意外というとあの二人に悪いが、実際リオナとレムは有能な文官だった。
事実、8割はあの二人に任せて、俺は決裁印を押すだけと言うのが現状だったりする。
ただ他の国出身の下級貴族という事で、やっかみを含んだ妨害を受けやすいが、それも俺の側室候補と発表した事で解決済だ。
やっかみの半分以上が俺の方に来たのは計算外ではあったが。
正式に結婚していないにもかかわらず、婚約者が4人……それも全員王女で、更に側室二人……しかも美人姉妹ってどんなハーレム野郎だ!?と俺でもそう思うからなぁ、仕方がないのかもしれない。
「まぁ、後何か困った事があれば、アイリスやクリスが助けてくれるだろ?」
「え?置いていくの?」
エルがびっくりしたように言う。
「いや、実際あの二人を連れていくのはマズいだろ?」
今や二人ともそれぞれの国で、いないと政務が滞ると言われるほど重要なポストについている。
そんな二人を連れだした日には何を言われるか……。
「シンジ様、酷いです!!」
気づくと入り口にアイリスが立っていた。
「アイリス、何でここに?」
「私が呼んだのですよ。冒険に出るならアイリスも一緒でしょ?」
俺が驚いていると、リディアがさらりと言う。
「私だけのけ者なんですかっ!?酷いですよ!!」
アイリスが目に涙を一杯浮かべて訴えてくる。
「いや、のけ者とか、そう言うんじゃなくて……。」
取りあえずアイリスを引き寄せて撫でる。
「ほら、アシュラムも、まだまだ大変な時だろ?そんな時に冒険だなんて……なぁ?」
俺は二人に助けを求めるが、知らんぷりをされる。
「大変なのは、ミーアラントも一緒ですよね?」
ギクッ……。
「それでも、シンジ様は冒険に出るとおっしゃるんですよね?」
「あ、アハハ……ウチには優秀な秘書が居るから……。」
「何かあれば押し付けようとしていましたよね?」
……聞かれていたらしい。
「そ、そんなことないよ。アイリスを置いていくなんて、そんな事するわけがないだろ?なぁ?」
俺は再度二人に助けを求めるが、二人とも面白がっているのか、助けてくれる様子は無かった。
「ほ、ほら、証拠に、アイリスの新装備もあるんだよ。」
俺はそう言ってアイリスに二人に渡したのと同じブレスレットを渡す。
「これを装着して魔力を流してごらん。」
アイリスの意識がブレスレットに向いたので、装着を進める。
「こうですか?……っ!。」
光の粒子がアイリスを包み込み、新しい装備を装着させる。
アイリスの装備も、基本性能は先の二人と同じだが、回復・補助がメインという事で、白を基調に紅をあしらった色彩の巫女服を、オマージュしたデザインになっている。
ボトムが袴の代わりにフレアスカートになっているのは俺の趣味だ、誰にも文句は言わせない。
「これは……。」
新しい装備に身を包んだ自分の姿を見て、アイリスの表情がはにかんだ笑顔になる。
「シンジ様、ありがとうございます。とっても素敵です。」
「気に入ってもらえて、俺も嬉しいよ。」
よかった、どうやらうまく誤魔化せたようだ。
しかし、これでクリスを置いて行ったら、かなり恨まれるだろうなぁ……ヘタすれば戦争になりかねない。
仕方がないので、クリスにも連絡を入れておくか。
新しい装備をお互いに見せ合っては、楽しそうにおしゃべりをしている三人の姿を横目に見ながらそう思った。
「新しい遊びですかぁ?」
執務机に座るオレを見てエルは呆れた声を出し、リディアは頭や顔をぺちぺちと叩いている。
「フフフ、よくぞ見破ったな。」
俺は机の下から這い出して、椅子に座る『オレ』の横に立つ。
ここに座っているのは、俺が作ったゴーレムだ。
「その名も『身代わり君初号機』……額に埋め込んだ魔石には幻術魔法が仕込んであって本人そっくりに見せるというスグレモノだぞ!」
「こんなおもちゃで誤魔化せると思ったら、お間違いなのですよ。」
リディアが、えへんっと胸を張る。
『ウム』
「わわっ、喋りましたぁ!?」
『ああ。』
「喋れるんですね、しかもシンジさんの声そっくりです。」
『そうだな。』
「じゃぁ、甘い言葉を囁いてくれたりしますかぁ?」
『前向きに善処しよう。』
「本当ですかぁ!」
『却下だ。』
「即否定!!何でですかぁ!」
『今日はここまでだな。』
「ちょっと待ってくださいっ!さっき善処するって言ったじゃないですかぁ!」
『却下だ。』
「シンジさん、コレ壊れてますよぉ。殴っていいですかぁ。」
『その件については任せる。』
「じゃぁ殴りますっ!」
『却下だ。』
「ポンコツですぅ!ポンコツがいますよぉ!」
ウン、リディアが楽しそうで何よりだ。
「……と、まぁこの様に簡単な会話も出来るようになっている……とはいっても登録してある言葉を適当にしゃべるだけだが。」
「うぅ……シンジさんにオモチャで弄ばれましたぁ……。」
よよよ、と泣き崩れるリディア。
いいけどね、いい方には気を付けてね……誤解を招くから。
俺はリディアをスルーして説明を続ける。
「更に、この手に決裁印を持たせて、書類を置くと……。」
身代わり君の眼が光り、書類にポンポンと決裁印を押していく。
「コレ、押してないわよ。」
エルが印の押されていない書類を摘まみ上げる。
「あぁ、それは前年度のデーターと照らし合わせて不備がある可能性がある物だろ?」
俺はその書類に目を通すと、おかしな箇所に印を付け不決済に回す。
ゴーレムの中に検算回路が詰め込んであって、今までの書類内容をすべて記憶させてあるから、新規の案件以外ならある程度はこのゴーレムに任せることもできる。
さらに言えば、口の所がゲートミラーになっていて、何かあれば、そこを通して俺に書類を届けることもできるので、戦闘中とかでない限り、リアルタイムに対応することも可能だ。
「なに、その無駄に優秀な能力は?」
俺が自慢気に説明すると、エルが大仰なため息をつく。
「まぁ、基本的には優秀な秘書達が殆どやってくれるから、『身代わり君』が実際にやる事はハンコを押すことだけだろうけどな。」
後は、会いたくない奴に会わなきゃいけない時に使うとか……そう呟くとリディアが呆れかえったような目で見てくる。
「で、何でこんなものを?」
エルが説明を求めてくる。
「あ、あぁ、ほら、ここの領主やって2年じゃないか?街も落ち着いてきたし……ほらっつ、な?」
「で?」
「ほらっ?って言われても分らないですよぉ。」
「いや、領主も飽きて来たし、ここらでちょっと冒険に行きたいなぁって。」
アハハ、と笑ってみる。
「……つまり、冒険に出たいがために、無駄に高度な魔道技術の髄を極めたような代物を作った……と言うわけですか?」
エルが頭を抱えている。
「まぁ、簡単に言えばそうなるかな?」
「……シンジ!アンタバカなのっ、バカでしょっ!!」
「おバカがいますぅー。」
エルがキレ気味に叫び、それにリディアが追従する……そんなに、バカバカって連呼しなくても……。
「そうは言うけどなぁ……お前らは冒険、行きたくないのか?」
「「ウッ……」」
俺の言葉に、二人とも黙り込む。
「それにな、折角冒険に出るのならと、皆の装備を一新してみたんだが……。」
俺はそう言って二人にブレスレットを差し出す。
「それを装着した後、魔石に魔力を流して『ふわふわコスプレで、あなたのハートを撃ち抜くゾ♪』って叫んでみな。」
「な、何でそんな恥ずかしい事……バッカじゃないの!?」
エルが真っ赤になってわなわなと震えている横で、リディアが早速試していた。
『撃ち抜いちゃうゾ♪』
リディアの身体が光の粒子に包み込まれ、その光が収束すると新しい装備を纏ったリディアの姿が現れる。
薄いパステルピンクを基調として、要所に黒やネイビーをあしらう色彩。
全体のフォルムはスカートの裾がふわりと翻るドレスアーマーで、ふんわりとした柔らかい素材で出来ているように見えるが、魔力伝導・反射率が高く、常に強化魔法がかかっている為、ヘタな金属鎧より堅牢で、下手なマジックローブより魔法抵抗力が高いという、ぶっ飛んだ性能となっている。
加えて普段付けている左右の指輪にイヤリング、ネックレスに仕込んだ魔石を核とした防護結界も張られるため、理論上ではドラゴンクラスのパワーじゃないと防護を破ることは出来ないはずだ。
更にドレスアーマーに魔力増幅と消費軽減の魔法陣を仕込んである為、魔法の効果が従来の2.25倍、使用魔力量は約半分ななっている……はず。
「うぅ、……でも……。」
リディアの姿を見て触発されたのかエルがどうしようか悩んでいる。
「もぅ!……『ふわふわコスプレで、あなたのハートを撃ち抜くゾ♪』」
真っ赤になりながらそう叫ぶエルが光の粒子に包まれ、やがて新しい姿を現す。
エルの装備は黒を基調としたスタンダードなゴシックカラーで、デザインに多少の差異は有れど、基本的にはリディアと同じ仕様のドレスアーマーだ。
これは二人の戦闘スタイルが似ているので、ある意味必然であり、また二人が並んだ時のコントラストが映えるんじゃないかと、期待した結果である。
「どうしたの?」
エルが覗き込んでくる。
「いや……予想以上に似合っているから……。」
俺は二人の姿に目を奪われて、それ以上の言葉を紡ぐことが出来なかった。
「ありがと……。」
エルは顔を真っ赤にしながら、俯いて礼を言ってくる。
「でも、装備する度にあのセリフは……何とかならないの?」
「……、ゴメン。アレは冗談で、魔力を流して念じるだけで……ったぃ。」
「バカシンジっ!殴るわよっ!」
……もう殴ってる、っていうのはお約束ですか、そうですか。
「あと『杖』は、好きなイメージを思い描けば、それで固定できるから。」
俺がそう言うと、二人はこうかな?と色々試行錯誤をし始める。
「……どうだ?その装備で冒険に行きたくはないか?」
俺は二人の耳元でそう囁く。
二人にとってはまさしく「悪魔の囁き」だったに違いない。
「うぅ……でも、実際、執務はどうするのよ?」
エルが最後の抵抗とばかりにそんな事を言ってくる。
「リオナとレムに任せておけば、大抵の事は片がつくよ。その補佐の為の『身代わり君』だしな。」
意外というとあの二人に悪いが、実際リオナとレムは有能な文官だった。
事実、8割はあの二人に任せて、俺は決裁印を押すだけと言うのが現状だったりする。
ただ他の国出身の下級貴族という事で、やっかみを含んだ妨害を受けやすいが、それも俺の側室候補と発表した事で解決済だ。
やっかみの半分以上が俺の方に来たのは計算外ではあったが。
正式に結婚していないにもかかわらず、婚約者が4人……それも全員王女で、更に側室二人……しかも美人姉妹ってどんなハーレム野郎だ!?と俺でもそう思うからなぁ、仕方がないのかもしれない。
「まぁ、後何か困った事があれば、アイリスやクリスが助けてくれるだろ?」
「え?置いていくの?」
エルがびっくりしたように言う。
「いや、実際あの二人を連れていくのはマズいだろ?」
今や二人ともそれぞれの国で、いないと政務が滞ると言われるほど重要なポストについている。
そんな二人を連れだした日には何を言われるか……。
「シンジ様、酷いです!!」
気づくと入り口にアイリスが立っていた。
「アイリス、何でここに?」
「私が呼んだのですよ。冒険に出るならアイリスも一緒でしょ?」
俺が驚いていると、リディアがさらりと言う。
「私だけのけ者なんですかっ!?酷いですよ!!」
アイリスが目に涙を一杯浮かべて訴えてくる。
「いや、のけ者とか、そう言うんじゃなくて……。」
取りあえずアイリスを引き寄せて撫でる。
「ほら、アシュラムも、まだまだ大変な時だろ?そんな時に冒険だなんて……なぁ?」
俺は二人に助けを求めるが、知らんぷりをされる。
「大変なのは、ミーアラントも一緒ですよね?」
ギクッ……。
「それでも、シンジ様は冒険に出るとおっしゃるんですよね?」
「あ、アハハ……ウチには優秀な秘書が居るから……。」
「何かあれば押し付けようとしていましたよね?」
……聞かれていたらしい。
「そ、そんなことないよ。アイリスを置いていくなんて、そんな事するわけがないだろ?なぁ?」
俺は再度二人に助けを求めるが、二人とも面白がっているのか、助けてくれる様子は無かった。
「ほ、ほら、証拠に、アイリスの新装備もあるんだよ。」
俺はそう言ってアイリスに二人に渡したのと同じブレスレットを渡す。
「これを装着して魔力を流してごらん。」
アイリスの意識がブレスレットに向いたので、装着を進める。
「こうですか?……っ!。」
光の粒子がアイリスを包み込み、新しい装備を装着させる。
アイリスの装備も、基本性能は先の二人と同じだが、回復・補助がメインという事で、白を基調に紅をあしらった色彩の巫女服を、オマージュしたデザインになっている。
ボトムが袴の代わりにフレアスカートになっているのは俺の趣味だ、誰にも文句は言わせない。
「これは……。」
新しい装備に身を包んだ自分の姿を見て、アイリスの表情がはにかんだ笑顔になる。
「シンジ様、ありがとうございます。とっても素敵です。」
「気に入ってもらえて、俺も嬉しいよ。」
よかった、どうやらうまく誤魔化せたようだ。
しかし、これでクリスを置いて行ったら、かなり恨まれるだろうなぁ……ヘタすれば戦争になりかねない。
仕方がないので、クリスにも連絡を入れておくか。
新しい装備をお互いに見せ合っては、楽しそうにおしゃべりをしている三人の姿を横目に見ながらそう思った。
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