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やっぱり金かっ!金なのかっ!

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 チュン、チュン、チュン……。
 ……と、普通なら雀の鳴き声で目を覚ますと頃なんだろうけど、ここは異世界、雀なんているはずもなく、普通に目を覚ました俺。
 ・・・・・・そして目の前にある美少女・・・・・・エルの寝顔。
 すっと筋の通った鼻、小振りの口元、頬にかかる、少し乱れたアッシュブロンドの髪の毛、寝顔は年相応で可愛く・・・・・・こうして改めてみると美少女だと再認識する。

 女の子の寝顔をマジマジと見るのはあまり誉められたことではないらしいが、仕方がないと思う。
 エルの両腕は俺の首に、足は俺の腰を、しっかりとホールドしていて、身動きがとれない状態になっている。
 しかも俺の手は、エルの胸に当たっており、先程からその柔らかさがダイレクトに伝わってきている。
 俺が少しでも動くと・・・・・・。
 「アッ・・・・・・ん・・・・・・。」
 ・・・・・・と、妙に艶めかしい吐息を漏らす。
 そして何より問題なのは、朝と言うこともあって、体の一部が元気一杯だと言うことだ。
 エルが密着しているせいもあり、かなりヤバい事になっている。

 「なぁ、エル……朝だぞ……。」
 俺はエルを起こすことにした。
 顔が近いため、あまり大きな声を出すのはマズいかと思ったが、結果として囁くことになってしまった。
 「んっ……だめぇ……行っちゃいやだぁ……。」
 エルはイヤイヤと身を捩り、俺をギュっと引き寄せる。
 ……こ、これはかなりマズい。
 エルの顔がすぐ目の前まで来ている……と言うか、もうあと数ミリで唇が接触する。
 下手に動くと、その反動で触れてしまうかもしれないと思うと身動きが取れない。
 それ以上に、エルの寝顔の破壊力に、頭がクラクラして正常な判断力が失われつつある。

 このまま流れに身を任せるか……そう思った時、エルの目が開く。
 薄い碧眼だが右目だけがほんのりと紅い……『金銀虹彩ヘテロクロミア』と呼ばれるその瞳の色は、エルが魔法を使用するときや、感情が高ぶった時は、より鮮やかに色が濃くなる……そう、今みたいに……。
 「えっ……イヤぁー!」
 エルが目を覚ますと同時に、俺を突き飛ばす。
 「このヘンタイ!私が寝てる隙に、お、襲うなんて!」
 「ちょ、ちょっと待て!ベットに引っ張り込んだのも、抱き着いてきたのも、全部お前だろ!」
 「そ、そんなわけないでしょ!」

 ◇

 「悪かったわよ。」
 エルはひとしきり怒鳴った後、落ち着きを取り戻し、昨夜の事とか起きた時の状況から、俺が悪いわけじゃないと納得してくれた。
 理不尽ではあるが、キモチが分からないわけでも無いし、何より、しばらくはパートナーとして稼がなければならないので、関係の悪化は望む所ではない。
 
 「まぁ、おあいこだしな……取り敢えず行こうぜ。」
 俺は真っ赤になっているエルを促し、軽く身支度を整え、食事をしてからギルドに向かうのだった。

 ◇

 「んーと、依頼は・・・・・・と。」
 俺達はギルド内に設置してある依頼ボードをチェックするが、受けれそうなものが見当たらない。
 ボードの角の方に『常設依頼は受付で』と書かれていたので、受付カウンターに行ってみる。
 「シンジさんとエルフィーさん、いらっしゃい。どうなされました?」
 昨日、手続きをしてくれたお姉さんに声をかけてみる。
 「あぁ、依頼を受けようかと思ったんだが、手頃なのが無くて『常設依頼』ってのについて聞きたくて。」
 「そうですね、最初は常設依頼から慣れていくのがいいでしょうね。常設依頼は……。」
 
 お姉さんの説明によると、薬草採集や、食肉の確保など、常に需要のあるモノが「常設依頼」となっていて、これは受注するのに特に手続きは必要ないらしい。
 つまり、勝手に出かけて、もしくは他の依頼のついでに、得た物を一定量納品することで自動的に依頼完了になる仕組みだ。
 例えば、薬草などは「採集籠」1つ分納品すれば、それで「薬草採集依頼」の完了となる。

 「各種薬草採集、各種ローポーション納品、食肉確保(ホーンラビット・オーク・ミッドル鳥・ビックトードなど)・皮素材納品(フォックス種・ウルフ種・ベア種など)・錬金素材納品(応相談)……こんな所かしらね。」
 お姉さんが、今ある常設依頼を教えてくれる。
 報酬も銅貨5枚から銀貨3枚ぐらいまで様々だ。
 ただ、設定してある報酬額は基本額で、納品した物の品質によっては増減することもあるらしい。
 「最初は、慣れる意味でも、近くの森で薬草採集をしてくるのがいいと思いますわ。」
 俺はエルに目をやると、エルも頷いてくれる。

 「そうだな、そうしようか。」
 俺がそう告げると、受付のお姉さんが「はい、これ」と採集籠と何やら細々したものが入ったものを出してくる。
 どうやら薬草採集に使う道具みたいだ……用意してあるなんて準備がいいよな。
 「ありがとう。」
 俺は、その道具類に手を伸ばすが、掴む寸前に引っ込められる。
 「初心者採集セット、二人分で銅貨5枚よ。」
 お姉さんがニコニコしながら片手を差し出している……。

 銅貨1枚の価値を日本円に換算すると、大体100円ぐらいになる。
 物価とか色々違うので一概には言えないが、大体そんなところだ。
 そう考えれば安いと言えるのかもしれないが……。
 ちなみに銅貨10枚で大銅貨1枚なので、宿代は一部屋2000円となる……比べる基準が違うので何とも言えないが、この世界の一般の農民や町民の月の収入が小金貨2~3枚(日本円換算20万~30万円)と考えると、かなり安い部類と言える。
 ……俺はそんな事を考え、大金じゃないんだ、大金じゃない……と呟きながらお姉さんに大銅貨1枚を渡し、採集セットとお釣りの銅貨5枚を受け取る。

 所持金の内訳を知っているエルが、黙ってポンポンと俺の背中を叩く。
 うぅ、残金大銅貨1枚と銅貨9枚……薬草を採集籠一杯に摘んで、二人分で大銅貨1枚……。
 「ほら、落ち込む暇があったら出かけるわよ……って、何て顔してるのよ……もぅ。」
 エルがちょっと困った顔をする。
 いかん、エルに情けない所を見せる訳にはっ!

 最初出会ったときは、小生意気なマセガキ、という印象だったのだが、この2~3日一緒にいれば、本質は、マセた事を言う割には初心《うぶ》で、意外と面倒見が良く優しい性格をしている、と言うのがわかる。
 そして、分かってしまうと、俺の中では「生意気なクソガキ」から「守ってやる妹」へと、存在が変わっりつつある。
 そう、施設にいた妹達と同じだ……笑顔でいられる場所を作る、それが同じ境遇の年長者の役目だと、俺は思っている……俺がそうしてもらったように、俺も出来る事をやらないと。
 
 「そうだな……そうだな!落ち込む暇があったら稼ごう!」
 「そうだよ!がんばろうね。えっと、こういうとき何て言うんだっけ……。」
 俺が声を上げると、エルが、少しうれしそうに応えてくれる。
 「あ、そうだ、思い出した……この甲斐性なし!」
 エルがにっこりと笑って、そう言ってくれた…………orz。

 ◇

 あれから3日……。
 俺たちは毎日のように、森に来て採集に精を出している。

 「エル、これはどうだ?」
 「ちょっと待って……ウン、結構品質高いよ、よく見つけたね。」
 「あぁ、なんとなく……な。」
 俺は、エルに確認してもらった薬草を摘んで籠に入れる。
 大体2/3位か……すべて品質が高めの物ばかりだ。
 初日に、エルの提案で普通品質の物を避けて高品質の物だけを採集した。
 その結果、査定ボーナスを含め、大銅貨2枚の報酬を得ることが出来、無事に宿に泊まる事が出来た。

 「そろそろ、少し休もうか?」
 俺はエルにそう声をかけ、火を熾すのに丁度よい場所を探し、焚火の準備をする。
 日もかなり高くなってきているし、そろそろお腹がすく頃だ。
 「そうね。ご飯食べよ。」
 エルも最終を中断して、こっちに来る。

 『着火ティンダー

 俺は火熾しの魔法を使って、薪に火をつける。
 「おぉ、上手に使えるじゃない。」
 俺の魔法を見て、エルが感嘆の声を上げる。
 「先生がいいからさ。」
 俺がそう言ってやると、真っ赤になったエルが「そ、そうね、もっと敬っていいのよ!」とか言っている……やっぱり、攻められると弱いようだ。

 街に入った時、エルは約束通り魔法店に行って魔導書を買おうとしたのだが、初級の魔導書でもかなり高く手が出なかった。
 その後、ギルドに行った時にその話題を受け付けのお姉さんに振った所、ギルドで魔導書の閲覧ができると教えてくれた……手数料として、その都度銅貨2枚とられるが。
 何回も閲覧する余裕はないので、半日の時間を作って、エルに特訓をお願いした。 
 とはいっても、キーとなる「力ある言葉」を覚え、魔法のイメージをするというのが基本なのでそれほど苦労なく覚えることが出来た。
 ……まぁ、初級魔法の数が少ないというのも、早く習得出来た理由ではあるが。

 ただ、合成魔法……二つ以上の属性が絡む魔法に関しては少し苦労した。
 未だに発動できないものもあったりする。
 この合成魔法は、複数属性が必要な事もあり、かなり強力な魔法だ。複数属性持ちの最大のメリットはこの合成魔法が使える事だろう。
 ただし、中級以上に限る……と言う条件があるが。
 初級の合成魔法は数が少ないうえ、効果が微妙なものが多い。
 ちなみに、俺が現在使える合成魔法は土と水の合成魔法で「食材感知」と言う。
 対象のモノが食べる事が出来るかどうか?がわかるという魔法だ。
 ……毒見しなくてもいいから、すごっく役立つ魔法だよね?
 そう言ったら、受付のお姉さんは、目を逸らしながら「ソウデスネ……。」と言っていた。
 ……まぁ、一般の人は毒殺を気にする機会はほとんどないからね。

 ◇

 「こんなのしかなくて悪いな。」
 俺は用意してきたパンと、煮込んだ山菜ときのこのスープをエルに渡す。
 「いいわよ、十分美味しいわ。それに、こんなところでコレが食べれるとは思わなかった。」
 そう言って、エルは器に入ったキノコを指さす。
 「いや、俺もキノコにあそこ迄手こずるとは思わなかったよ……美味いな、これ。」
 エルが指し示したキノコを食べながら応じる。

 俺達が食べているキノコは「マッスルキノコ」と言って、大変美味という事で高級食材として扱われている。
 高級食材ではあるが繁殖率は高く、割とよく見かける為手に入れることは容易い。
 それなのになぜ高級食材になるのかと言うと、それはキノコの性質にある。
 簡単に言えば、とにかく堅いのだ。
 鉄で出来た包丁やナイフでは傷一つつかない。
 食すためには、その堅い外皮をアダマンタイト製のナイフでそぎ落とし、内部の柔らかい果肉を取り出す必要がある。
 外皮が結構な厚みの為、一つのキノコから取れる食せる部分が少ないため、数が必要になり、それだけの数を捌くと、アダマンタイト製とはいえ、ナイフの切れ味が悪くなるためオーバーホールが必要になるという……食材より、調理に費用が掛かる為、高級食材とされている。
 まぁ、実際には、そこまで手間暇をかけるぐらいなら、もっと安く手間のかからない美味しい食材を用意いた方がいいという事で、結果としてあまり食される事が無かったりするのだが。

 そんな事を知らない俺は、初めて見つけた時「食材感知」で毒キノコじゃない事を確認した上で大量に確保したのだ。
 そして、意気揚々とエルに報告したら、その実態を知らされてがっくりとしたのは……まぁ、今更だ。
 
 そんなマッスルキノコをどう調理したかと言うと……。
 「意外と使いこなしてるのね、空間魔法。高品質の薬草見つけるのも、空間魔法なんでしょ?」
 エルにはバレバレだった……。
 「よかったじゃない。収納以外の使い道があって。」
 エルは笑いながらそう言う……半分バカにしているだろうが、半分は本心でよかったと思っていてくれるのも事実だ……という事がわかるようになってきた。

 エルの言うとおり、俺はこの『使えない』空間魔法をどうにか『使える』様に工夫している。
 収納魔法……『無限収納ポーター』に関しては、早いうちに使える事がわかっていた。
 なんと言っても、大きさを問わずなんでも入るのだ。
 試しに俺の持ち物を全部収納してみたが、普通にしまえて普通に取り出せる……それでいて普段は手ぶら……俺は調子に乗って色々なモノを詰め込んだ。
 最初、依頼報告をするときに納品物を取り出したら、受付のお姉さんが「収納バック」を持っていることにした方がいいと忠告してくれた。

 『収納バック』と言うのは『無限収納ポーター』がかかっている魔道具と思ってもらえればいい。
 低品質のものは畳1畳分程度のモノしかしまえないが、高品質になると馬車1台分ぐらいはしまい込めるという。
 無用なトラブルを避けるなら、魔法じゃなくて道具の力としておけ、という事らしい。

 そして空間探査の魔法……俺がイメージした物を条件付けすれば、それに類するものを発見できるという事が分かった。
 まぁ、範囲は狭いし、俺が認識してイメージできるモノじゃないと探せないんだけど、使えなくはない……と思う。

 更に『次元断在スラッシュ』だが……これこそがマッスルキノコの調理に使用した魔法である。
 『次元断在スラッシュ』にかかればマッスルキノコの外皮など、紙も同然……10㎝程度しか斬り裂けないが、キノコをズタズタにするには充分である。

 ウン、空間魔法使えるじゃないか!
 ………やめよう、なんだか悲しくなってきた。

 「なんだろう、スープの塩味が濃くなってる気がする……。」
 「何も泣かなくても……。」
 エルが呆れたように言ってくる。

 ◇

 「明日位、ちょっと遠出しないか?」
 俺は、食事を終えて休んでいるエルに声をかける。
 「そうね、この辺り採集し過ぎちゃった感じだしね。」
 「あぁ、それに、そろそろ魔物狩りを経験しておいた方がいいかもしれないと思ってな。」
 「そうねぇ……討伐依頼が受けれる様になればグッと楽になるもんね。」
 俺の言葉にエルが頷く。
 高品質でそろえた薬草に、途中で見つけたレア素材などを含めて、この3日で稼いだ報酬は銀貨2枚と大銅貨2枚。
 宿代や食事代他、細々したものを買い揃えて、残っている金額が銀貨1枚と大銅貨2枚。
 頑張っているとは思うが、その日暮らしの域を出ない。
 エルが王女らしくなく、極貧生活に耐えていれるから、何とかなっているものの、女の子に服装や湯浴みなどで不自由を強いているのは、男としてちょっと情けないものがある。
 討伐依頼なら、最低でも銀貨3枚以上の報酬があるので、食肉確保や素材確保のついでに魔物との戦闘を経験し、討伐依頼を受けれるようにしたいと思う。
 
 「そうと決まったら、さっさと済ませて、街で準備しようぜ。」
 「そうね……後、せっかくだから通常品質の薬草と、麻痺草、毒草を少し集めておいてくれるかしら?」
 俺達は再度散らばり、薬草の採集に精を出すのだった。
 
 ◇

 「はい、これが報酬です。本日もご苦労様でした。」
 俺は受け付けのお姉さんから本日分の依頼報酬を受け取る大銅貨2枚と銅貨1枚……これで俺達の全財産は銀貨1枚と大銅貨4枚に銅貨1枚となったわけだが。
 「俺達、明日からちょっと遠出しようと思うんだ。食材とか素材を集めてこようと思うんだけど、どこかおすすめの所ある?」
 俺はお姉さんに聞いてみる。
 「そうですか。最近薬草が供給過多になりつつありますから、ちょうどいいですね。」
 受け付けのお姉さんが笑顔でそう言ってくる。
 何だろう?「お前ら採集し過ぎだ、買い取り下げるぞ!」と聞こえるのは……気のせいだよね? 

 「西の領界線沿いにある『デューンの森』なんかが手頃だと思います。強い魔物はほとんど出ませんし、動植物の繁殖具合は豊富だとの報告が上がっていますから。」
 お姉さんがそう進めてくれる。
 「エル、どうする?」
 俺は隣のエルに確認する。
 「いいと思うわ。それほど遠くもないしね。」
 エルも同意してくれたので、そこに向かうことを決める。

 「じゃぁ、明日はそこに行ってみるよ。」
 「わかりました気を付けてくださいね。それから……これをどうぞ。」
 俺の言葉に、満足そうに頷いたお姉さんは、奥からモノを取り出して、どんっ!とカウンターに置く。
 「これは?」
 「基本野営セットと特割初心者用装備ですわ。……まさか手ぶら、丸腰で行く気じゃないですよね?」
 俺の問いに、とてもいい笑顔のお姉さんが応えてくれる。
 確かに、近いとはいえ向こうでの作業も考えると道中2泊はしないといけないだろう。
 わざわざ道具を用意してくれるなんて、さすがギルドだな。
 サービスが行き届いている。

 「ありがとう。助かるよ。」
 俺がそう言って受け取ろうとすると、さっと引っ込められる。
 これは、まさか…………。
 「全部で銀貨1枚になります♪」
 そう言って手を出すギルドのお姉さんは、俺が今まで見た中で最高の笑顔だった。
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