2 / 58
2
しおりを挟む
カーク邸に着いた私達はシーラのご両親に挨拶をするとシーラの部屋へと向かった。
カークは、シーラのファミリーネーム。
シーラはカーク子爵の嫡子だ。
私、マーガレットもブラン子爵の嫡子なのだ。
話を戻して、シーラの部屋でゆっくりとオススメの本を二人で読む。
今日のオススメ本は冒険者の主人公が女の子で、体が弱く余り外に出なかった私自身も冒険している気持ちにさせる様な面白い本だった。
太陽も傾き始めた頃、読み終えた本をパタリと閉じて溜息を吐いた。
「はあ、面白かったわ!」
「マーガレットに似てるわよね、この主人公。」
「そうかしら?でも、昔からあまり外に出られなかったから憧れるわ。」
「ふふ、そうね。いつか一緒に行けー。」
本を読みながら話しているとガチャリ、とシーラの部屋の扉が開いた。
「!」
「姉さん魔法書貸して…あ、お客さん居たのか。悪い。」
「ケヴィン!貴方またノックしないで!!」
「あ、ごめん。お客様だったんだ。」
突然入って来た男の子はシーラに怒られて頬を掻きながらバツの悪そうな顔をした。
そう言えばシーラには弟がいたなとふと思い出した。
ケヴィンと呼ばれた男の子とシーラのやりとりを微笑ましく思ってつい見ていると…。
「もう!あ、マーガレット紹介するわ。弟のケヴィンよ。」
「初めまして。ケヴィン・カークです。姉さんからいつもマーガレット嬢の事は聞いてます。」
「初めましてケヴィン様。マーガレット・ブランと申します。」
紳士淑女の挨拶を交わした私達は、お互いに気を使わないで欲しいと普通に話す事にした。
「姉さんから聞いていたけど、マーガレット嬢は姉さんと違って淑女の見本みたいだ。姉さんも見習った方が…いっ!?」
ケヴィンがそう言いかけた時シーラがケヴィンの足をヒールで踏んだ様だ。ドレスで見える事は無いのだけど。
シーラは笑顔なのだけれど、ケヴィンは顔を真っ赤にして痛みを耐えている。
「ケヴィン?何か仰って?」
「…何も。」
「ふふっ。」
笑顔のシーラから顔を背けてバツの悪そうなケヴィン。
その様子に私は思わず笑ってしまう。
「…そう言えば、貴方何しにいらしたの?」
「ああ、忘れてた。魔法書貸してくれ。」
「自分のはどうしたのよ。学園に忘れたの?」
「ユーリに貸したんだよ。アイツそのまま持って帰ったんだ。」
「もう、仕方ないわね。」
呆れながらケヴィンに魔法書を貸す為に本棚に二人は向かう。
ケヴィン様は優しいのね。ユーリ様と言う方に頼られているのだわ。
…ん?…ユーリ…ケヴィン…?
何処かで聞いた事がある気がする…。
「…っつ!?」
思い出そうとした瞬間、突然の耳鳴りと激しい頭痛が私を襲った。
「マーガレット?」
「お、おい…大丈夫か?」
余りの痛みに膝をつく私に二人が駆け寄って気遣う様に肩に手を置く。
「っつ…うっ!?」
更に頭痛が酷くなって蹲ってしまう。
…って言うか、待って。本当に待って!
何…これ。
頭の中に一気に駆け巡る映像。
箱の中にシーラやケヴィン様が映る。
他にも色んな人が映っている。
(映像?映像って何だっけ…。)
これはテレビだ…。
テレビ画面の前に座って、グッズを抱き締めながら愛しい人を見ている女の子。
泣きながらテレビにそっと触れる女の子。
イベント会場までワクワクしながら電車に乗る女の子。
テレビ?グッズ?電車?
こんなの見たことも無い。
…ううん、違う。そんな事ない。
私…知ってる。
これは……。
生まれ変わる前の私だ。
思い出した私はそこで意識を手放した。
カークは、シーラのファミリーネーム。
シーラはカーク子爵の嫡子だ。
私、マーガレットもブラン子爵の嫡子なのだ。
話を戻して、シーラの部屋でゆっくりとオススメの本を二人で読む。
今日のオススメ本は冒険者の主人公が女の子で、体が弱く余り外に出なかった私自身も冒険している気持ちにさせる様な面白い本だった。
太陽も傾き始めた頃、読み終えた本をパタリと閉じて溜息を吐いた。
「はあ、面白かったわ!」
「マーガレットに似てるわよね、この主人公。」
「そうかしら?でも、昔からあまり外に出られなかったから憧れるわ。」
「ふふ、そうね。いつか一緒に行けー。」
本を読みながら話しているとガチャリ、とシーラの部屋の扉が開いた。
「!」
「姉さん魔法書貸して…あ、お客さん居たのか。悪い。」
「ケヴィン!貴方またノックしないで!!」
「あ、ごめん。お客様だったんだ。」
突然入って来た男の子はシーラに怒られて頬を掻きながらバツの悪そうな顔をした。
そう言えばシーラには弟がいたなとふと思い出した。
ケヴィンと呼ばれた男の子とシーラのやりとりを微笑ましく思ってつい見ていると…。
「もう!あ、マーガレット紹介するわ。弟のケヴィンよ。」
「初めまして。ケヴィン・カークです。姉さんからいつもマーガレット嬢の事は聞いてます。」
「初めましてケヴィン様。マーガレット・ブランと申します。」
紳士淑女の挨拶を交わした私達は、お互いに気を使わないで欲しいと普通に話す事にした。
「姉さんから聞いていたけど、マーガレット嬢は姉さんと違って淑女の見本みたいだ。姉さんも見習った方が…いっ!?」
ケヴィンがそう言いかけた時シーラがケヴィンの足をヒールで踏んだ様だ。ドレスで見える事は無いのだけど。
シーラは笑顔なのだけれど、ケヴィンは顔を真っ赤にして痛みを耐えている。
「ケヴィン?何か仰って?」
「…何も。」
「ふふっ。」
笑顔のシーラから顔を背けてバツの悪そうなケヴィン。
その様子に私は思わず笑ってしまう。
「…そう言えば、貴方何しにいらしたの?」
「ああ、忘れてた。魔法書貸してくれ。」
「自分のはどうしたのよ。学園に忘れたの?」
「ユーリに貸したんだよ。アイツそのまま持って帰ったんだ。」
「もう、仕方ないわね。」
呆れながらケヴィンに魔法書を貸す為に本棚に二人は向かう。
ケヴィン様は優しいのね。ユーリ様と言う方に頼られているのだわ。
…ん?…ユーリ…ケヴィン…?
何処かで聞いた事がある気がする…。
「…っつ!?」
思い出そうとした瞬間、突然の耳鳴りと激しい頭痛が私を襲った。
「マーガレット?」
「お、おい…大丈夫か?」
余りの痛みに膝をつく私に二人が駆け寄って気遣う様に肩に手を置く。
「っつ…うっ!?」
更に頭痛が酷くなって蹲ってしまう。
…って言うか、待って。本当に待って!
何…これ。
頭の中に一気に駆け巡る映像。
箱の中にシーラやケヴィン様が映る。
他にも色んな人が映っている。
(映像?映像って何だっけ…。)
これはテレビだ…。
テレビ画面の前に座って、グッズを抱き締めながら愛しい人を見ている女の子。
泣きながらテレビにそっと触れる女の子。
イベント会場までワクワクしながら電車に乗る女の子。
テレビ?グッズ?電車?
こんなの見たことも無い。
…ううん、違う。そんな事ない。
私…知ってる。
これは……。
生まれ変わる前の私だ。
思い出した私はそこで意識を手放した。
10
お気に入りに追加
3,645
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。
曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」
きっかけは幼い頃の出来事だった。
ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。
その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。
あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。
そしてローズという自分の名前。
よりにもよって悪役令嬢に転生していた。
攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。
婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。
するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!
Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜!
【第2章スタート】【第1章完結約30万字】
王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。
主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。
それは、54歳主婦の記憶だった。
その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。
異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。
領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。
1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します!
2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ
恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。
<<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる