上 下
110 / 124
第6章 それぞれの夢へ向かって

第110話 くしゃくしゃの紙*

しおりを挟む
 秋くんは夕飯後、また来るねと言い残して中田家を後にした。「2人で一緒にいれる時間を大事にしてよ」と、なんとも大人っぽい言い方で言って行ってしまった。

 風呂から上がった俺は、迷わず貴臣の部屋へ入った。
 ベッドに腰掛けていた貴臣は、俺に向かっておいでおいでをしたので、その体に跨った。
 遠慮なく太腿の上に腰を下ろし、向かい合わせでキスをする。
 朝の続きをするみたいに、舌と舌を絡ませ、粘膜を擦り上げた。

 名残惜しくも顔を離すと、目の前に手を差し出される。その中には、くしゃくしゃになった皺だらけの紙が。

「さっき掃除していたら、机の裏から出てきたんです。なんだと思いますか?」

 その紙を受け取ってみる。なんの変哲もない用紙だ。A4サイズくらいの紙を潰して丸めたような。

「ゴミ?」
「開けてみてください」

 え、なんか怖いな。見たら呪われる絵とか描いてないよな。
 恐る恐るシワを伸ばして開いてみると、答えは分かった。

 相良先輩の性癖リスト。
 貴臣が自ら書き写し、最初のレッスンを始める際に壁に貼り付けてあった用紙だ。なぜこんな無残な姿に。

「丸めて投げ捨てたんです、俺が」
「え……どうして」
「全てのレッスンを終えた後、兄さんが部屋で先輩と電話していたのを聞いてしまって、やり切れなくなって。自分から2人のことを祝福しておいて、でも諦めきれない自分が嫌で惨めで、情けなくて。カッとなってこうしちゃいました」

 今は笑って話しているけど、その時は相当辛かったはずだ。
 秋くんと何をして何を話したのか気になるのに教えてもらえない。挙句、恋人の元へ行ってしまう兄。
 本当は好きなのに言えなくて、表面上は取り繕わないといけない自分。

 俺も同じだったから気持ちが痛いほど分かって、胸がぎゅっとなった。

「ごめんな、貴臣。もうそんな悲しい思いはさせないから」

 その紙をポイと投げ捨て、貴臣にもう1度キスをする。
 ぴちゃぴちゃと卑猥な音が鳴り、お互いの顔も体も火照ってきた。
 
 自分から仕掛けたキスなのに、いつの間にか立場が逆転していた。舌を絡ませる側から、受けとめる側へ。歯列をなぞられ、濡れた舌先で上顎をこすられるとたまらなくなる。

「……は……っ……」

 もぞ、と尻を動かすと玉がきゅっと潰れて切なくなり、吐息が漏れた。

 腰を引いて浮かせると、貴臣は自分の体に俺を引き寄せた。
 何度か擦り付けるように腰を上下されると、俺のペニスと貴臣とのが刺激され、ジンジンとした甘い痛みが駆け抜ける。
 
「あ……んん……っ」

 意地悪。
 俺がそんなんじゃ足りないって分かってて、貴臣はわざとゆっくりと腰を振っているのだ。
 もっと上下するスピードをはやく、乱暴でもいいのに。
 自分で触りたい気持ちを押し留め、代わりにまた熱い舌を絡ませた。

「ん──……ん、ん……」

 ぞくぞくする。ドキドキする。
 貴臣という存在が愛しくて。

 次に唇を離した時には、ペニスはしっかりと硬くなり、布を押し上げていた。

「はぁ……っ」
「兄さんは本当に、感じやすいですね」
「あっ!」

 乳首を爪で引っ掻かれて、びくんと体が跳ね上がる。もう1度されると、また。音で反応する玩具みたいに、される度に何度も喘いだ。

「自分ではいじってないって初めは言ってましたけど……ここもしっかりと性感帯の1つになりましたね」

 薄い布の上から親指の腹でぐにぐにと潰されると本当にやばい。
 電流が流れる。柔らかさはなくなって、あっという間に芯を持って硬くなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
────妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの高校一年生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の主人公への好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

処理中です...