93 / 124
第5章 義兄弟の運命は。
第93話 伝えたいこと②
しおりを挟む
貴臣の目は琥珀色。
いつからだろう。その瞳を綺麗だなって思ったのは。
……どうか俺だけを、映してもらいたいって思い始めたのは。
「好き……って、兄さん……」
貴臣は訳が分からないといった様子でフリーズしている。
俺は羞恥に駆られながら、少しずつ、内に秘めていた想いを暴露していった。
「貴臣の代わりになる人を、毎日探していたんだ。貴臣に雰囲気が似てる人、顔が似てたり……名前が似てたり。誰でも良かったんだ。貴臣以外だったら誰でも」
やっぱり俺は、涙してしまう。
歯を食いしばった。
「ずっと、辛かった。お前は常に俺の傍にいて、優しくしてくれて。諦めなくちゃならないのに、心と頭はバラバラで。貴臣が悠助くんと付き合う予定だって聞いた時は、本当にどん底に突き落とされた。どうして付き合う相手が、俺じゃないんだろうって」
貴臣の顔をまともに見れずに、俺はただひたすら自分のスニーカーを見ながら話し続けていた。
「こんなことになるなら、レッスンなんてしなきゃ良かったって思った。けれど貴臣との秘め事を増やしていくうちに、このままこの時間が続けばいいとさえ思った。『ずっと俺とレッスンしていきましょうよ』って貴臣が提案してくれる妄想を何回もしてた……そんなの無理に決まってるのに」
夢の中で、何度も何度も。
貴臣が柔らかく笑んで『俺と付き合ってください』と告げてくれる妄想さえも。
「ふ、普通に、出会いたかったって何度も思ったよ。義兄弟としてじゃなくて、赤の他人で、例えば友達同士でとか……でもきっと、そんな風に出会ってたら俺は、貴臣のことを好きにならなかったのかもしれない。それは誰にも分からないけど……俺の弟になってくれたから、お前を好きになった気がするんだ」
貴臣の手の上に、俺の手を重ねて握った。
涙をボロボロと溢れさせながら。
「好きになっちゃってごめん。好かれても迷惑だなんて分かってるんだけど……本当にごめん。お前にこうして触るのはこれで最後にするから……」
これが本当に最後だと思う。
気持ちを伝えてしまった以上、俺たちはもう単なる義兄弟には戻れない。
だからこれくらいは、許してくれ。
そんな風に思って手をぎゅっと握ったら、貴臣も握り返してきた。しかもかなりの力強さだった。
「俺がいつ、貴方に好かれたら迷惑だなんて言いましたか」
貴臣は怒ったような口調で言ってから、片手で俺のぐっちゃぐちゃになっている顔を拭った。
「どうして貴方はそんなに優しいんですか……俺、嫌がる貴方に対してあんなに理不尽で酷いことをしたっていうのに……」
貴臣は、奥歯を強く噛み合わせたかのような表情だ。
貴方って言われても、今日は全然嫌な気分じゃなかった。むしろ大事にされているような感覚。
そのまま、貴臣に抱きしめられた。
肩口に顔を埋めた俺は呆然とする。
「謝らなくちゃならないのは俺の方です。俺は兄さんを騙していました。先輩とお付き合いする為のレッスンだなんて真っ赤な嘘です。俺は自分に都合のよくなるように兄さんを誑かして、独占して優越感に浸っていただけなんです」
頭をずらして、貴臣の顔を覗き込んでみてハッとした。
貴臣の眦にも、何か光るものが見えたから。
「た、貴臣、もしかして泣いてんの……?」
「泣いてません」
「……泣いてんじゃん」
「もし泣いているとしたら、兄さんのせいですよ」
貴臣は瞼を擦って、涙を袖で拭いた。
貴臣が泣いてるところなんて俺、初めて見た。
俺が泣かせたんだよな?
そう思うと余計に申し訳なくなって俺もますます泣いてしまったが、貴臣はそんな俺の涙をまた拭った。
「俺も兄さんと同じように、ずっと辛かったです。気持ちがバレたらまずいのに、どうか気付いてほしいと願う自分もいて。けれどそれは許されないことだから、なるべく抑えておこうと……こんなアンビバレンスな気持ちになったのは生まれて初めてですよ」
貴臣の顔に光が差し込んだ。
そして。
「俺も、兄さんが大好きです」
いつからだろう。その瞳を綺麗だなって思ったのは。
……どうか俺だけを、映してもらいたいって思い始めたのは。
「好き……って、兄さん……」
貴臣は訳が分からないといった様子でフリーズしている。
俺は羞恥に駆られながら、少しずつ、内に秘めていた想いを暴露していった。
「貴臣の代わりになる人を、毎日探していたんだ。貴臣に雰囲気が似てる人、顔が似てたり……名前が似てたり。誰でも良かったんだ。貴臣以外だったら誰でも」
やっぱり俺は、涙してしまう。
歯を食いしばった。
「ずっと、辛かった。お前は常に俺の傍にいて、優しくしてくれて。諦めなくちゃならないのに、心と頭はバラバラで。貴臣が悠助くんと付き合う予定だって聞いた時は、本当にどん底に突き落とされた。どうして付き合う相手が、俺じゃないんだろうって」
貴臣の顔をまともに見れずに、俺はただひたすら自分のスニーカーを見ながら話し続けていた。
「こんなことになるなら、レッスンなんてしなきゃ良かったって思った。けれど貴臣との秘め事を増やしていくうちに、このままこの時間が続けばいいとさえ思った。『ずっと俺とレッスンしていきましょうよ』って貴臣が提案してくれる妄想を何回もしてた……そんなの無理に決まってるのに」
夢の中で、何度も何度も。
貴臣が柔らかく笑んで『俺と付き合ってください』と告げてくれる妄想さえも。
「ふ、普通に、出会いたかったって何度も思ったよ。義兄弟としてじゃなくて、赤の他人で、例えば友達同士でとか……でもきっと、そんな風に出会ってたら俺は、貴臣のことを好きにならなかったのかもしれない。それは誰にも分からないけど……俺の弟になってくれたから、お前を好きになった気がするんだ」
貴臣の手の上に、俺の手を重ねて握った。
涙をボロボロと溢れさせながら。
「好きになっちゃってごめん。好かれても迷惑だなんて分かってるんだけど……本当にごめん。お前にこうして触るのはこれで最後にするから……」
これが本当に最後だと思う。
気持ちを伝えてしまった以上、俺たちはもう単なる義兄弟には戻れない。
だからこれくらいは、許してくれ。
そんな風に思って手をぎゅっと握ったら、貴臣も握り返してきた。しかもかなりの力強さだった。
「俺がいつ、貴方に好かれたら迷惑だなんて言いましたか」
貴臣は怒ったような口調で言ってから、片手で俺のぐっちゃぐちゃになっている顔を拭った。
「どうして貴方はそんなに優しいんですか……俺、嫌がる貴方に対してあんなに理不尽で酷いことをしたっていうのに……」
貴臣は、奥歯を強く噛み合わせたかのような表情だ。
貴方って言われても、今日は全然嫌な気分じゃなかった。むしろ大事にされているような感覚。
そのまま、貴臣に抱きしめられた。
肩口に顔を埋めた俺は呆然とする。
「謝らなくちゃならないのは俺の方です。俺は兄さんを騙していました。先輩とお付き合いする為のレッスンだなんて真っ赤な嘘です。俺は自分に都合のよくなるように兄さんを誑かして、独占して優越感に浸っていただけなんです」
頭をずらして、貴臣の顔を覗き込んでみてハッとした。
貴臣の眦にも、何か光るものが見えたから。
「た、貴臣、もしかして泣いてんの……?」
「泣いてません」
「……泣いてんじゃん」
「もし泣いているとしたら、兄さんのせいですよ」
貴臣は瞼を擦って、涙を袖で拭いた。
貴臣が泣いてるところなんて俺、初めて見た。
俺が泣かせたんだよな?
そう思うと余計に申し訳なくなって俺もますます泣いてしまったが、貴臣はそんな俺の涙をまた拭った。
「俺も兄さんと同じように、ずっと辛かったです。気持ちがバレたらまずいのに、どうか気付いてほしいと願う自分もいて。けれどそれは許されないことだから、なるべく抑えておこうと……こんなアンビバレンスな気持ちになったのは生まれて初めてですよ」
貴臣の顔に光が差し込んだ。
そして。
「俺も、兄さんが大好きです」
1
お気に入りに追加
155
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる