79 / 124
第5章 義兄弟の運命は。
第79話 体と心の痛み
しおりを挟む
(あー……ちきしょう、手と腰が痛い……)
翌朝目覚めてからすぐ体の鈍痛に気付く。
ベッドから降りて歩き出せば尚更だ。
あんなに長時間、指やバイブを入れられて掻き回されたら、こんな風になるに決まってる。
オマケに目の周りは重く、腫れぼったい。
鏡で見ると酷い顔だ。今日が日曜で良かった。
昨日、いろんなことを考えすぎて寝付けなかったので、もう朝の10時を回っていた。
ゆっくりとドアノブを掴んで廊下に出る。貴臣の部屋の方は、しんと静まり返っていた。
(何て、言えばいいんだろ……)
昨日、貴臣にいじめられた後、俺はそのまま貴臣のベッドで気絶するように眠ってしまった。
目覚めたのは2時間後だったけど、そこに貴臣はいなかった。
1階に降りてみても誰もいなくて、シャワーを浴び終えても結局誰とも会わずにこの部屋に帰ってこれた。
貴臣がどこにいたのかも、今どこにいるのかも知らない。
1階に降りたくなかったが、永遠にここに閉じこもっている訳にもいかない。
階段を降りると、父と母が揃ってリビングにいた。貴臣の姿は無い。
「おはよう。ご飯は?」
母は笑顔だ。父も本を読んでいる。
俺は首を横に振り、洗面所に行った後で玄関の三和土を確認した。
やっぱり、貴臣の靴がなかった。
「……貴臣は?」
「友達の家に泊まりにいくって昨日、連絡があったけど。聞いてないの?」
「……そ」
いつもだったら、当たり前のように貴臣の予定を把握していた。どこに行くかなんて、聞いてないのに自ら俺に言ってくるような奴だったのに。
母と父は俺たちのことを、仲の良い兄弟だと思っている。
出会った頃のギスギスした雰囲気は両親も感じ取っていたみたいで心配されたが、貴臣の事故をきっかけに劇的に変わったので、ホッとしたみたいだ。
こんな風に言ってはダメだけど、あの事故があったからこそ2人は仲良くなったのかもねと、いつか父さんに言われた。
確かにそうかもしれない。
貴臣が車に撥ねられたって聞いて、頭が真っ白になって、どうか生きていてほしいとそればっかり願ってた。
冷たくされても笑ってくれなくても、生きてさえくれれば。
自分の命と引き換えにとか、本気で思った。
だから元気な貴臣が見れて本当に嬉しかったんだ。
もしあの事故がなければ、俺たちは心を通わせなかったのだろうか。あのまま、冷淡な貴臣でいたんだろうか。
そんなの誰にも分からない。
これからの俺たちの未来が1番分からないのに。
部屋で、秋くんに電話を掛けてみた。
すぐに出た秋くんは、俺よりも先に謝ってきた。
『昨日、あの後大丈夫だった? お兄、俺のこと怒ってたでしょ。怜くんの言ってること分かってるんだ。だけど俺、やっぱり離れらんない。どうしようもなく先生が好きなんだ。だからもうちょっと……時間が欲しいんだ』
秋くんのへりくだった声に拍子抜けした。
時間が経って、自分の行動を客観的に見ることができたのだろう。
秋くんの気持ちが少しだけ変わってきている。
先生との関係を少し変えようと思ってくれている。
亀の歩みかもしれないが、秋くんの気持ちを動かせたことに嬉しくなった。
「うん、大丈夫だよ。もう秋くんに任せるよ。俺はこれ以上もう何も言わないから。秋くんが幸せだって思える生き方をしてほしいな」
『……なんか怜くん、大人っぽい。どうしたの? あ、もしかして……振られちゃった?』
「いやいや、告白なんてしてないよ。これからもするつもりもないし。もうあんな変なことして揶揄ったらダメだからね」
秋くんは素直に『うん』と言って電話を切った。
秋くんから連絡が行っていたらと不安になったけど、貴臣には俺の本当の気持ちを話さなかったみたいだ。
まぁ、わざわざ話すメリットも無いか。
翌朝目覚めてからすぐ体の鈍痛に気付く。
ベッドから降りて歩き出せば尚更だ。
あんなに長時間、指やバイブを入れられて掻き回されたら、こんな風になるに決まってる。
オマケに目の周りは重く、腫れぼったい。
鏡で見ると酷い顔だ。今日が日曜で良かった。
昨日、いろんなことを考えすぎて寝付けなかったので、もう朝の10時を回っていた。
ゆっくりとドアノブを掴んで廊下に出る。貴臣の部屋の方は、しんと静まり返っていた。
(何て、言えばいいんだろ……)
昨日、貴臣にいじめられた後、俺はそのまま貴臣のベッドで気絶するように眠ってしまった。
目覚めたのは2時間後だったけど、そこに貴臣はいなかった。
1階に降りてみても誰もいなくて、シャワーを浴び終えても結局誰とも会わずにこの部屋に帰ってこれた。
貴臣がどこにいたのかも、今どこにいるのかも知らない。
1階に降りたくなかったが、永遠にここに閉じこもっている訳にもいかない。
階段を降りると、父と母が揃ってリビングにいた。貴臣の姿は無い。
「おはよう。ご飯は?」
母は笑顔だ。父も本を読んでいる。
俺は首を横に振り、洗面所に行った後で玄関の三和土を確認した。
やっぱり、貴臣の靴がなかった。
「……貴臣は?」
「友達の家に泊まりにいくって昨日、連絡があったけど。聞いてないの?」
「……そ」
いつもだったら、当たり前のように貴臣の予定を把握していた。どこに行くかなんて、聞いてないのに自ら俺に言ってくるような奴だったのに。
母と父は俺たちのことを、仲の良い兄弟だと思っている。
出会った頃のギスギスした雰囲気は両親も感じ取っていたみたいで心配されたが、貴臣の事故をきっかけに劇的に変わったので、ホッとしたみたいだ。
こんな風に言ってはダメだけど、あの事故があったからこそ2人は仲良くなったのかもねと、いつか父さんに言われた。
確かにそうかもしれない。
貴臣が車に撥ねられたって聞いて、頭が真っ白になって、どうか生きていてほしいとそればっかり願ってた。
冷たくされても笑ってくれなくても、生きてさえくれれば。
自分の命と引き換えにとか、本気で思った。
だから元気な貴臣が見れて本当に嬉しかったんだ。
もしあの事故がなければ、俺たちは心を通わせなかったのだろうか。あのまま、冷淡な貴臣でいたんだろうか。
そんなの誰にも分からない。
これからの俺たちの未来が1番分からないのに。
部屋で、秋くんに電話を掛けてみた。
すぐに出た秋くんは、俺よりも先に謝ってきた。
『昨日、あの後大丈夫だった? お兄、俺のこと怒ってたでしょ。怜くんの言ってること分かってるんだ。だけど俺、やっぱり離れらんない。どうしようもなく先生が好きなんだ。だからもうちょっと……時間が欲しいんだ』
秋くんのへりくだった声に拍子抜けした。
時間が経って、自分の行動を客観的に見ることができたのだろう。
秋くんの気持ちが少しだけ変わってきている。
先生との関係を少し変えようと思ってくれている。
亀の歩みかもしれないが、秋くんの気持ちを動かせたことに嬉しくなった。
「うん、大丈夫だよ。もう秋くんに任せるよ。俺はこれ以上もう何も言わないから。秋くんが幸せだって思える生き方をしてほしいな」
『……なんか怜くん、大人っぽい。どうしたの? あ、もしかして……振られちゃった?』
「いやいや、告白なんてしてないよ。これからもするつもりもないし。もうあんな変なことして揶揄ったらダメだからね」
秋くんは素直に『うん』と言って電話を切った。
秋くんから連絡が行っていたらと不安になったけど、貴臣には俺の本当の気持ちを話さなかったみたいだ。
まぁ、わざわざ話すメリットも無いか。
1
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
愛されなかった俺の転生先は激重執着ヤンデレ兄達のもと
糖 溺病
BL
目が覚めると、そこは異世界。
前世で何度も夢に見た異世界生活、今度こそエンジョイしてみせる!ってあれ?なんか俺、転生早々監禁されてね!?
「俺は異世界でエンジョイライフを送るんだぁー!」
激重執着ヤンデレ兄達にトロトロのベタベタに溺愛されるファンタジー物語。
注※微エロ、エロエロ
・初めはそんなエロくないです。
・初心者注意
・ちょいちょい細かな訂正入ります。
【R18】保健室のケルベロス~Hで淫らなボクのセンセイ 【完結】
瀬能なつ
BL
名門男子校のクールでハンサムな保健医、末廣司には秘密があって……
可愛い男子生徒を罠にかけて保健室のベッドの上でHに乱れさせる、危ないセンセイの物語 (笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる