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第4章 みんな幸せになればいいのに。
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「そんなことないよっ! 今は無理でも、きっとあいつを超えられるはず!」
「ふぅん。怜くん、その人のこと相当好きなんだね。どんな人なの? 友達?」
「……えっ」
一瞬にして貴臣の顔が思い浮かんでしまい、とっさに目を逸らした。
一旦冷静になろうと、もう一度コーラで喉を潤す。
「うん。友達だよ。だけど、絶対に無理な相手なんだ。結ばれることなんて99.9パーない。だからちゃんと他の人を……」
「なんで100パーないって言わないの?」
「へ? なんでって」
「0.01パーセントでも望みがあるのかもって、ちょっと思ってるんじゃないの?」
秋くんって、本当に痛いところをついてくる。
その通りだ。貴臣がたまに見せる優しさが、100パーと言い切れない理由。針の先くらいの希望の光が差し込んでくるのを、俺はずっと待っているのかもしれない。
「俺も一緒。0.01パーセント、先生が離婚して、俺とだけ付き合ってくれる日が来るかもしれないって思ってる」
俯いている俺の頭上から、貴臣に似た自信溢れる凛とした声が降ってくる。
ほんの少しの望みをかけて、俺たちはもがいているのだ。
秋くんに幸せになってほしいと願うなら、まずは俺が幸せにならなくちゃいけない。そのためにはその0.01パーを、捨てなくてはならない。
「俺と怜くんって、似てないようで似てるんだね」
「そう、かもね。でも、やっぱりダメなものはダメだよ。俺もちゃんと諦める努力するから、秋くんも先生との関係、もう一度考え直してほしいな」
「あーあ。怜くんはいつも説教ばっかり」
「説教じゃないよ。提案!」
「分かった分かった。じゃあ、混んできたからそろそろ出よう」
おざなりに返事をされて、俺の気持ちはちゃんと届いたのかは謎だが。
言わないよりは良いだろう。それに今日、貴臣との関係を緩和させることにも尽力しなくては。
立ち上がると、秋くんに名刺サイズの紙を渡された。
「これ、怜くんの分だよ。クーポン券」
トレイの隅に置かれていた、次回使える50円引きクーポン券。
正直いらないかと思ったが、大人しく貰うことにした。財布のカードポケットにそれを仕舞おうとしたら、小さい紙が入っていることに気付く。
お好み焼きやの半額クーポン券だった。
そういえば先輩に渡されて、ずっと入れっぱなしだったのを忘れていた。
秋くんはその券を、財布の中から引き抜いてじっと見る。
「あぁ、お好み焼き屋。これ俺んちの近くだよ」
「そうなの?」
そういえば今気付いたけれど、秋くんと先輩の家の最寄駅は一緒で、俺の家の2駅先だ。
「半額? 今日じゃん、行きたい!」
「えっ……だめ」
「なんで? せっかく半額で、俺の家の近くなのに」
「どうしても」
「なんで? ねぇなんでなんで?」
「今度にしようよ」
「今日はダメなの? なんで?」
今度は「なんで?」の雨が降り注いでくる。
店を出て、話題を変えようとしても秋くんはしつこく食い下がるので、根負けした俺は、条件付きであればそこに行くことを了承した。
「サッカー部の先輩が友達とか連れてくる予定なんだけど、会っても何もしゃべらないって約束できる?」
その先輩が今度自分と付き合う予定だとか、そういう細かい事情を話せば長くなるし、秋くんに変な顔をされるのも嫌だったのでそう言った。
秋くんはまた「なんで?」と訝しんでいたけど、あまりにも頑なな俺を見て、最終的には大人しくしていると約束してくれた。
「もしかして、そのサッカー部の先輩が怜くんの本命の人?」
「……」
どう言えば分からなくて黙ったら、無言が肯定だと捉えられたようだった。
だが、それで良かった。万が一、先輩に『怜くんはあなたが好きらしいですよ』だなんて喋られても、先輩にとってはその通りだし、辻褄はしっかり合う。
だが何か余計なことを言わないに越したことはない。秋くんには釘をさしておいた。
「会ったとしても、挨拶だけだからね」
「分かってるって。俺、いつもみたいに存在感消して隅っこに座ってるから」
教室での秋くんは、本当に大人しいのかな。
この前と同じように自嘲気味に言うから本当なんだろうけど、今はそれよりも、これからのことで頭がいっぱいだった。
「ふぅん。怜くん、その人のこと相当好きなんだね。どんな人なの? 友達?」
「……えっ」
一瞬にして貴臣の顔が思い浮かんでしまい、とっさに目を逸らした。
一旦冷静になろうと、もう一度コーラで喉を潤す。
「うん。友達だよ。だけど、絶対に無理な相手なんだ。結ばれることなんて99.9パーない。だからちゃんと他の人を……」
「なんで100パーないって言わないの?」
「へ? なんでって」
「0.01パーセントでも望みがあるのかもって、ちょっと思ってるんじゃないの?」
秋くんって、本当に痛いところをついてくる。
その通りだ。貴臣がたまに見せる優しさが、100パーと言い切れない理由。針の先くらいの希望の光が差し込んでくるのを、俺はずっと待っているのかもしれない。
「俺も一緒。0.01パーセント、先生が離婚して、俺とだけ付き合ってくれる日が来るかもしれないって思ってる」
俯いている俺の頭上から、貴臣に似た自信溢れる凛とした声が降ってくる。
ほんの少しの望みをかけて、俺たちはもがいているのだ。
秋くんに幸せになってほしいと願うなら、まずは俺が幸せにならなくちゃいけない。そのためにはその0.01パーを、捨てなくてはならない。
「俺と怜くんって、似てないようで似てるんだね」
「そう、かもね。でも、やっぱりダメなものはダメだよ。俺もちゃんと諦める努力するから、秋くんも先生との関係、もう一度考え直してほしいな」
「あーあ。怜くんはいつも説教ばっかり」
「説教じゃないよ。提案!」
「分かった分かった。じゃあ、混んできたからそろそろ出よう」
おざなりに返事をされて、俺の気持ちはちゃんと届いたのかは謎だが。
言わないよりは良いだろう。それに今日、貴臣との関係を緩和させることにも尽力しなくては。
立ち上がると、秋くんに名刺サイズの紙を渡された。
「これ、怜くんの分だよ。クーポン券」
トレイの隅に置かれていた、次回使える50円引きクーポン券。
正直いらないかと思ったが、大人しく貰うことにした。財布のカードポケットにそれを仕舞おうとしたら、小さい紙が入っていることに気付く。
お好み焼きやの半額クーポン券だった。
そういえば先輩に渡されて、ずっと入れっぱなしだったのを忘れていた。
秋くんはその券を、財布の中から引き抜いてじっと見る。
「あぁ、お好み焼き屋。これ俺んちの近くだよ」
「そうなの?」
そういえば今気付いたけれど、秋くんと先輩の家の最寄駅は一緒で、俺の家の2駅先だ。
「半額? 今日じゃん、行きたい!」
「えっ……だめ」
「なんで? せっかく半額で、俺の家の近くなのに」
「どうしても」
「なんで? ねぇなんでなんで?」
「今度にしようよ」
「今日はダメなの? なんで?」
今度は「なんで?」の雨が降り注いでくる。
店を出て、話題を変えようとしても秋くんはしつこく食い下がるので、根負けした俺は、条件付きであればそこに行くことを了承した。
「サッカー部の先輩が友達とか連れてくる予定なんだけど、会っても何もしゃべらないって約束できる?」
その先輩が今度自分と付き合う予定だとか、そういう細かい事情を話せば長くなるし、秋くんに変な顔をされるのも嫌だったのでそう言った。
秋くんはまた「なんで?」と訝しんでいたけど、あまりにも頑なな俺を見て、最終的には大人しくしていると約束してくれた。
「もしかして、そのサッカー部の先輩が怜くんの本命の人?」
「……」
どう言えば分からなくて黙ったら、無言が肯定だと捉えられたようだった。
だが、それで良かった。万が一、先輩に『怜くんはあなたが好きらしいですよ』だなんて喋られても、先輩にとってはその通りだし、辻褄はしっかり合う。
だが何か余計なことを言わないに越したことはない。秋くんには釘をさしておいた。
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