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第2章 ほんとの気持ちと隠したい気持ち
第35話 進路相談
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駅前に着いたけど、秋くんはまだ帰りたくないようで、ベンチに座って話そうと言われた。陽が落ちて空が暗くなってくる。俺は元々、学祭の準備で帰りは遅くなると言ってあるからいいけど。
「家の人たち、あんまり遅いと心配しない?」
「大丈夫だよちょっとくらい。ねぇ、怜くんの高校ってどんな感じなの?」
そう尋ねられたので、学校について話した。
うちの高校は偏差値は高くもなく低くもない。
家から無理なく通えて校則も厳し過ぎずに、ほどほどにサッカーもできる高校で探していたら、ピッタリ当てはまる学校が見つかって良かった。
「俺、怜くんと同じところに行こうかな」
「秋くんだったら、もっと上の学校狙えるじゃん」
秋くんは頭がいい。
中間考査で学年トップを取ったと言われた時は嘘かと思ったが、本当だった。証拠の写真を見せてもらったが、廊下に貼り出された紙の1番初めに、ちゃんと秋くんの名前があったのだ。
「でも俺、特にやりたい事もないし」
「美術部には入らないの?」
「うーん、どうだろ。本気でやってるわけじゃないし」
「でも楽しいんだよね? 前に、いくら絵を描いてても飽きないって」
「うん。絵に夢中になると嫌なこととか小さな悩みは全部忘れられる」
「そのまま続けていけば、将来何かの役に立つかもしれないよ。せっかく上手なんだから、俺は描き続けて欲しいな」
へのへのもへじの俺がいる紙をぺらっと見せた。
秋くんは俺とその絵を交互に見渡して、しみじみ言う。
「そんな風に人に言われたの、初めて……」
「そうなの? 絵を描けるのって凄い才能だと思うよ! 俺は美術とか音楽は苦手だから、いっつも成績悪かったし」
「悪かったって、どのくらい?」
「よくてDかな」
「えっ、俺、Aしか取ったことない」
「その代わり、体育だけはAだったよ」
「その人にはその人の役割があるんだね」
くすくすと笑われて、俺もちょっとだけ和む。
そういえば貴臣もピアノが得意だ。2人はきっと芸術家タイプなんだろう。
「そうだ! 俺の学校にはないんだけど、貴臣の高校だったら美術科があるよ。今度見学に行ってくればいいじゃん。それとさ、貴臣にも校風とかどんな感じかって訊いてみたらいいんじゃないかな」
「よしっ。そろそろ帰ろっかなっ! 家の人たちが心配するしっ」
「さっき遅くなっても大丈夫って言ってたじゃん!」
「じゃあ怜くん、ありがとね。また暇な時遊んでね~」
秋くんは満面の笑みで立ち去っていった。
ため息を吐いて、秋くんからもらった絵をバッグにしまって立ち上がる。
電車のホームに立つと、向かいのホームに秋くんが立っているのが見えた。
秋くんは俺に気付いていないのか、ずっと俯いてスマホを見ている。
ふと、俺のスマホにメッセージの着信が来た。
見れば秋くんからだった。
『あいつの名前出すの、もうやめてね☆』
ハッとして顔をあげた。
秋くんは俺に向かって手を振っていた。
俺は貼り付けたような笑みを浮かべながら、同じように手を振る。
貴臣も秋臣くんのことを、名前も聞きたくない程に邪険に思っているんだろうか。
仲良く話しているところを見てみたい、という俺の願望が叶う日はくるのか。それはまだ誰にも分からないのだった。
「家の人たち、あんまり遅いと心配しない?」
「大丈夫だよちょっとくらい。ねぇ、怜くんの高校ってどんな感じなの?」
そう尋ねられたので、学校について話した。
うちの高校は偏差値は高くもなく低くもない。
家から無理なく通えて校則も厳し過ぎずに、ほどほどにサッカーもできる高校で探していたら、ピッタリ当てはまる学校が見つかって良かった。
「俺、怜くんと同じところに行こうかな」
「秋くんだったら、もっと上の学校狙えるじゃん」
秋くんは頭がいい。
中間考査で学年トップを取ったと言われた時は嘘かと思ったが、本当だった。証拠の写真を見せてもらったが、廊下に貼り出された紙の1番初めに、ちゃんと秋くんの名前があったのだ。
「でも俺、特にやりたい事もないし」
「美術部には入らないの?」
「うーん、どうだろ。本気でやってるわけじゃないし」
「でも楽しいんだよね? 前に、いくら絵を描いてても飽きないって」
「うん。絵に夢中になると嫌なこととか小さな悩みは全部忘れられる」
「そのまま続けていけば、将来何かの役に立つかもしれないよ。せっかく上手なんだから、俺は描き続けて欲しいな」
へのへのもへじの俺がいる紙をぺらっと見せた。
秋くんは俺とその絵を交互に見渡して、しみじみ言う。
「そんな風に人に言われたの、初めて……」
「そうなの? 絵を描けるのって凄い才能だと思うよ! 俺は美術とか音楽は苦手だから、いっつも成績悪かったし」
「悪かったって、どのくらい?」
「よくてDかな」
「えっ、俺、Aしか取ったことない」
「その代わり、体育だけはAだったよ」
「その人にはその人の役割があるんだね」
くすくすと笑われて、俺もちょっとだけ和む。
そういえば貴臣もピアノが得意だ。2人はきっと芸術家タイプなんだろう。
「そうだ! 俺の学校にはないんだけど、貴臣の高校だったら美術科があるよ。今度見学に行ってくればいいじゃん。それとさ、貴臣にも校風とかどんな感じかって訊いてみたらいいんじゃないかな」
「よしっ。そろそろ帰ろっかなっ! 家の人たちが心配するしっ」
「さっき遅くなっても大丈夫って言ってたじゃん!」
「じゃあ怜くん、ありがとね。また暇な時遊んでね~」
秋くんは満面の笑みで立ち去っていった。
ため息を吐いて、秋くんからもらった絵をバッグにしまって立ち上がる。
電車のホームに立つと、向かいのホームに秋くんが立っているのが見えた。
秋くんは俺に気付いていないのか、ずっと俯いてスマホを見ている。
ふと、俺のスマホにメッセージの着信が来た。
見れば秋くんからだった。
『あいつの名前出すの、もうやめてね☆』
ハッとして顔をあげた。
秋くんは俺に向かって手を振っていた。
俺は貼り付けたような笑みを浮かべながら、同じように手を振る。
貴臣も秋臣くんのことを、名前も聞きたくない程に邪険に思っているんだろうか。
仲良く話しているところを見てみたい、という俺の願望が叶う日はくるのか。それはまだ誰にも分からないのだった。
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