32 / 124
第2章 ほんとの気持ちと隠したい気持ち
第32話 貴臣の弟
しおりを挟む
「久しぶりだね、元気にしてたっ?」
そう言ってぱぁっと表情を明るくさせた秋くんは、俺のすぐ目の前に立った。
自分が見上げていることに気付いて驚く。
ちょっと見ないうちに、随分と背が伸びている。
「うん、元気だよ。というか秋くん、大きくなったね。今何センチ?」
「なんか怜くん、その言い方おじさんっぽい。えっとね、春に測った時は174センチだったよ」
たぶん今はそれよりもあるだろう。
中2のくせして、高2の俺より背が高いだなんて。
「すごいね~、さすが……」
貴臣の弟、と言いそうになって言葉を呑み込んだ。
貴臣と秋臣くんは、あまり仲がよろしくないのだ。
何か話題を探そうと、秋くんが持っているチューブ型の入れ物を指さした。
「それ、絵の具?」
「アクリルガッシュって言うんだよ。足りなくなった色だけ買いに来たんだ」
「そっか、美術部だもんね」
「怜くんはボールペン買いに?」
「いや、今度の文化祭で使うものを」
持っているものを見せると、秋くんは興味津々に食いついてくれる。
「へぇ。血のり? お化け屋敷でもやるの?」
「うん。無名の小説家の夫を献身的に支えてきたのに、夫の愛人だって言う女に腹を切られて井戸に投げ捨てられた可哀想な女の幽霊役が俺」
「設定もあるの? おもしろーい。しかも女役ー?」
ケラケラと笑う秋くんは、貴臣とスタイルはよく似ているけど、性格は少し違う気がする。
人懐っこくてよく笑うし、たまに女子っぽい言葉遣いをするし、初めから俺にタメ口を使っている。
秋くんと初めて会ったのは去年の春。秋くんが家を訪ねてきたのがきっかけだった。部活の入部許可書にサインが欲しくて、父に会いにきたのだという。
たまたま俺だけしか家にいなかったので、近くのファミレスに行き、時間を潰している間に色々と世間話をした。
母親は家にほとんど帰ってこないので、秋くんは近くに住む親戚の家に世話になっていることも聞いた。
父が帰宅した頃合を見計らって家に帰れば貴臣もいたのだが、貴臣はなぜか秋くんを見るなり部屋に引っ込んでしまったのだ。
そういえば秋くんも、貴臣の話題を避けていたような気がしたのであえて詮索しなかった。
きっと色々と事情があるんだろう。
「ねぇ、怜くんこの後ヒマ?」
支払いを済ませて店を出た後で秋くんに言われた。
「あぁごめん、俺、これから学校に戻んなくちゃならなくて」
「もう夕方だよ?」
「文化祭の準備って結構大変なんだよ」
「さぼっちゃえばいいじゃん」
「えっ? 無理だよ! 委員長に何て言われるか……」
「大丈夫大丈夫。急に用事できたって言えばいいよ。ね、お腹空いたから行こう?」
秋くんに引っ張られ、敷地内にあるハンバーガーショップの自動ドアをくぐらされた。
こうやって強引に、けれどスマートに自分のペースに持っていくやり方は貴臣にそっくりだな……と俺は苦笑した。
そう言ってぱぁっと表情を明るくさせた秋くんは、俺のすぐ目の前に立った。
自分が見上げていることに気付いて驚く。
ちょっと見ないうちに、随分と背が伸びている。
「うん、元気だよ。というか秋くん、大きくなったね。今何センチ?」
「なんか怜くん、その言い方おじさんっぽい。えっとね、春に測った時は174センチだったよ」
たぶん今はそれよりもあるだろう。
中2のくせして、高2の俺より背が高いだなんて。
「すごいね~、さすが……」
貴臣の弟、と言いそうになって言葉を呑み込んだ。
貴臣と秋臣くんは、あまり仲がよろしくないのだ。
何か話題を探そうと、秋くんが持っているチューブ型の入れ物を指さした。
「それ、絵の具?」
「アクリルガッシュって言うんだよ。足りなくなった色だけ買いに来たんだ」
「そっか、美術部だもんね」
「怜くんはボールペン買いに?」
「いや、今度の文化祭で使うものを」
持っているものを見せると、秋くんは興味津々に食いついてくれる。
「へぇ。血のり? お化け屋敷でもやるの?」
「うん。無名の小説家の夫を献身的に支えてきたのに、夫の愛人だって言う女に腹を切られて井戸に投げ捨てられた可哀想な女の幽霊役が俺」
「設定もあるの? おもしろーい。しかも女役ー?」
ケラケラと笑う秋くんは、貴臣とスタイルはよく似ているけど、性格は少し違う気がする。
人懐っこくてよく笑うし、たまに女子っぽい言葉遣いをするし、初めから俺にタメ口を使っている。
秋くんと初めて会ったのは去年の春。秋くんが家を訪ねてきたのがきっかけだった。部活の入部許可書にサインが欲しくて、父に会いにきたのだという。
たまたま俺だけしか家にいなかったので、近くのファミレスに行き、時間を潰している間に色々と世間話をした。
母親は家にほとんど帰ってこないので、秋くんは近くに住む親戚の家に世話になっていることも聞いた。
父が帰宅した頃合を見計らって家に帰れば貴臣もいたのだが、貴臣はなぜか秋くんを見るなり部屋に引っ込んでしまったのだ。
そういえば秋くんも、貴臣の話題を避けていたような気がしたのであえて詮索しなかった。
きっと色々と事情があるんだろう。
「ねぇ、怜くんこの後ヒマ?」
支払いを済ませて店を出た後で秋くんに言われた。
「あぁごめん、俺、これから学校に戻んなくちゃならなくて」
「もう夕方だよ?」
「文化祭の準備って結構大変なんだよ」
「さぼっちゃえばいいじゃん」
「えっ? 無理だよ! 委員長に何て言われるか……」
「大丈夫大丈夫。急に用事できたって言えばいいよ。ね、お腹空いたから行こう?」
秋くんに引っ張られ、敷地内にあるハンバーガーショップの自動ドアをくぐらされた。
こうやって強引に、けれどスマートに自分のペースに持っていくやり方は貴臣にそっくりだな……と俺は苦笑した。
1
お気に入りに追加
155
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
星蘭学園、腐男子くん!
Rimia
BL
⚠️⚠️加筆&修正するところが沢山あったので再投稿してますすみません!!!!!!!!⚠️⚠️
他のタグは・・・
腐男子、無自覚美形、巻き込まれ、アルビノetc.....
読めばわかる!巻き込まれ系王道学園!!
とある依頼をこなせば王道BL学園に入学させてもらえることになった為、生BLが見たい腐男子の主人公は依頼を見事こなし、入学する。
王道な生徒会にチワワたん達…。ニヨニヨして見ていたが、ある事件をきっかけに生徒会に目をつけられ…??
自身を平凡だと思っている無自覚美形腐男子受け!!
※誤字脱字、話が矛盾しているなどがありましたら教えて下さると幸いです!
⚠️衝動書きだということもあり、超絶亀更新です。話を思いついたら更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる