31 / 124
第2章 ほんとの気持ちと隠したい気持ち
第31話 血のりとダメ出し
しおりを挟む
俺は血のりの瓶を床に置いて、段ボールで作った井戸に絵の具で色を付けていく。
とりあえず真正面だけはちゃんと見えればいいと思って、後ろは適当に塗っていたら委員長にダメ出しされた。
「中田くん、手抜きしたらダメじゃないか。お客さんは意外と細かいところまで見ているんだぞ! あとこれ、隅までしっかり色がついてない」
「はいはーい、ちゃんとやりまーす」
学級委員の久保くんは、学校の行事がある度にやたらと張り切る。
当日は教室を真っ暗にするし、そんな隅々まで見られるとは思わないけど……とは言わずに大人しく作業を再開する。
床に座って筆でペタペタと塗るのは、どうしても肩がこる。
こういう細かい作業は苦手なんだよなぁ。
ちょっと伸びをしようと両手両足を動かした時、足に何かが勢いよく当たって転がった。
ギョッとして見ると、血のりが入った瓶が倒れて中身が床に溢れていた。
「あぁー中田ぁ、何やってんだよー」とクラスの誰かに言われて慌てて瓶を持ち上げるが、中身の半分ほどがなくなっている。
久保くんがまた、怖い顔してこっちにやってきた。
「中田くーん……?」
「あっ、大丈夫! ほら、半分くらいは残ってるし!」
「そんな量じゃ足りないよ~? 君は顔だけじゃなくて白装束にも血をつけまくる予定なんだから」
「じゃあ、変更して顔だけにしようよ」
「腹を切られて井戸に落とされた女の幽霊なんだから、顔だけってのはおかしいでしょう~」
こだわりが強すぎる久保くんに気圧され、ホームセンターへ買いにいく羽目になった。
ちょっと面倒だとは思ったが、細かい作業をするよりかは買い出しに来る方がマシかもしれない。
ちょうどもうすぐハロウィンなので、入り口に特設スペースがあり、血のりはすぐに見つけられた。
すぐに学校に帰るのももったいない気がしたので、そのまま店を散策してみようと奥に進む。すると貴臣の高校の制服を着た生徒を数人見かけた。
貴臣の高校もうちと同日に文化祭があるから、何か見に来たのかも。
聞いたところによると、貴臣はカフェの店員役をやるらしい。
あんなイケメンがテーブルにドリンクを運んできた日には、世の女子たちは簡単にメロメロになるんだろうな。
行きたいのはやまやまだが、日にちが被っているのであればしょうがない。
さらに奥に行って文具コーナーを散策する。
あぁそういえば、前に貴臣が新しい三色ボールペンが欲しいと言っていたかも。
適当にペンを取って紙に試し書きしている時だった。
「怜くん?」
振り向けば、随分と久しぶりに見る、黒い学ラン姿の男が立っていた。
「秋くん」
「あぁ、やっぱり怜くんだ」
まだあどけなさの残る顔立ち、だけど目元や輪郭は、貴臣にそっくりな男。
吉岡 秋臣くん。
貴臣の弟だ。
とりあえず真正面だけはちゃんと見えればいいと思って、後ろは適当に塗っていたら委員長にダメ出しされた。
「中田くん、手抜きしたらダメじゃないか。お客さんは意外と細かいところまで見ているんだぞ! あとこれ、隅までしっかり色がついてない」
「はいはーい、ちゃんとやりまーす」
学級委員の久保くんは、学校の行事がある度にやたらと張り切る。
当日は教室を真っ暗にするし、そんな隅々まで見られるとは思わないけど……とは言わずに大人しく作業を再開する。
床に座って筆でペタペタと塗るのは、どうしても肩がこる。
こういう細かい作業は苦手なんだよなぁ。
ちょっと伸びをしようと両手両足を動かした時、足に何かが勢いよく当たって転がった。
ギョッとして見ると、血のりが入った瓶が倒れて中身が床に溢れていた。
「あぁー中田ぁ、何やってんだよー」とクラスの誰かに言われて慌てて瓶を持ち上げるが、中身の半分ほどがなくなっている。
久保くんがまた、怖い顔してこっちにやってきた。
「中田くーん……?」
「あっ、大丈夫! ほら、半分くらいは残ってるし!」
「そんな量じゃ足りないよ~? 君は顔だけじゃなくて白装束にも血をつけまくる予定なんだから」
「じゃあ、変更して顔だけにしようよ」
「腹を切られて井戸に落とされた女の幽霊なんだから、顔だけってのはおかしいでしょう~」
こだわりが強すぎる久保くんに気圧され、ホームセンターへ買いにいく羽目になった。
ちょっと面倒だとは思ったが、細かい作業をするよりかは買い出しに来る方がマシかもしれない。
ちょうどもうすぐハロウィンなので、入り口に特設スペースがあり、血のりはすぐに見つけられた。
すぐに学校に帰るのももったいない気がしたので、そのまま店を散策してみようと奥に進む。すると貴臣の高校の制服を着た生徒を数人見かけた。
貴臣の高校もうちと同日に文化祭があるから、何か見に来たのかも。
聞いたところによると、貴臣はカフェの店員役をやるらしい。
あんなイケメンがテーブルにドリンクを運んできた日には、世の女子たちは簡単にメロメロになるんだろうな。
行きたいのはやまやまだが、日にちが被っているのであればしょうがない。
さらに奥に行って文具コーナーを散策する。
あぁそういえば、前に貴臣が新しい三色ボールペンが欲しいと言っていたかも。
適当にペンを取って紙に試し書きしている時だった。
「怜くん?」
振り向けば、随分と久しぶりに見る、黒い学ラン姿の男が立っていた。
「秋くん」
「あぁ、やっぱり怜くんだ」
まだあどけなさの残る顔立ち、だけど目元や輪郭は、貴臣にそっくりな男。
吉岡 秋臣くん。
貴臣の弟だ。
1
お気に入りに追加
154
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
────妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの高校一年生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の主人公への好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる