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第439話 side景
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お父様は首を捻って考え込むような仕草を見せるけど、多分もう初めから分かっているのだと思う。
だからあんなにきっぱりと反対したのだろう。
観念したように、お父様は口を開いた。
「君のご両親は、なんて?」
「修介には迷惑を掛けないように、と。僕達の関係性も伝えました」
「そ、そうか……あと、気を悪くされたら申し訳無いのだけれど」
「大丈夫です。遠慮無く」
「……ヤクザとか、友達にいたり、繋がっていたりしないかな。今、そういうニュースが多いから少し怖くて」
恐る恐る聞いてくるお父様の顔が、一瞬修介の顔にも見えた。
何度か事務所や友達にもそういった類の事は聞かれた事がある。
僕の周りにはそんな人たちはいない。
自信を持って頷いた。
「大丈夫です。誓います」
「そうか……。何だか君は、真っ直ぐな男だな。修介は黙っている事が多いから何を考えているのか分からない時もあるのだけど、君の隣にいる修介の顔はとても楽しそうだった。きっと幸せなのだろうね」
「修介はたまに素直じゃない時もありますけど、芯はしっかりしていると思います。口に出さないだけで、本当はいろんな物事をきちんと真剣に考えていて。それでいて、心がとても優しい人ですよ」
「そうか」
安堵したようにゆっくりと頷いたお父様は、もう一杯飲み終えた後に「そろそろ行こう」と言ってレジでお金を支払ってくれた。
また畑に囲まれた道を歩いて、家へ向かう。
自分の父親と二人きりで歩いたのはいつだったか覚えていないのに、恋人の父親と田舎道を歩くというのも、何だか嬉しいような、照れるような。
僕は少し前を歩く丸まった背中に向かって声を掛けた。
「修介と、一緒に住んでもいいですか?」
「……まぁ、仲良ぉやるなら別にええけど」
別に、と言われて少し笑ってしまった。
僕はもう一度、空を見上げてニコリとする。
東京でもいつか、こんな星が見られるようになったらいいなぁ。
家に帰ると、お母様は居間のソファーに座って待っていた。
「どうだった?」と含みのある声で聞かれるとお父様は「ん」と小さく頷いただけで、さっさと風呂場へ行ってしまった。
僕はOKを貰ったと言う事をお母様に伝えて、二階へ上がった。
修介は、まだ不貞腐れているのだろうか。
ドアを開けると、僕の布団の上にうつ伏せで寝ている修介がいたから拍子抜けしてしまう。
たぶん、文句をブツブツ言っているうちに睡魔が襲ってきてしまったのだろう。
ちょっと呆れながらも、修介の横に体を横たわらせて、頬に柔らかくキスをした。
(好きだよ)
起きたらまずはさっきの事を謝って、その後でお父様に許しを得た事を伝えよう。
そして今度帰省した時には、お父様と一緒に、明るい店主がいるあのバーに行くように、と。
だからあんなにきっぱりと反対したのだろう。
観念したように、お父様は口を開いた。
「君のご両親は、なんて?」
「修介には迷惑を掛けないように、と。僕達の関係性も伝えました」
「そ、そうか……あと、気を悪くされたら申し訳無いのだけれど」
「大丈夫です。遠慮無く」
「……ヤクザとか、友達にいたり、繋がっていたりしないかな。今、そういうニュースが多いから少し怖くて」
恐る恐る聞いてくるお父様の顔が、一瞬修介の顔にも見えた。
何度か事務所や友達にもそういった類の事は聞かれた事がある。
僕の周りにはそんな人たちはいない。
自信を持って頷いた。
「大丈夫です。誓います」
「そうか……。何だか君は、真っ直ぐな男だな。修介は黙っている事が多いから何を考えているのか分からない時もあるのだけど、君の隣にいる修介の顔はとても楽しそうだった。きっと幸せなのだろうね」
「修介はたまに素直じゃない時もありますけど、芯はしっかりしていると思います。口に出さないだけで、本当はいろんな物事をきちんと真剣に考えていて。それでいて、心がとても優しい人ですよ」
「そうか」
安堵したようにゆっくりと頷いたお父様は、もう一杯飲み終えた後に「そろそろ行こう」と言ってレジでお金を支払ってくれた。
また畑に囲まれた道を歩いて、家へ向かう。
自分の父親と二人きりで歩いたのはいつだったか覚えていないのに、恋人の父親と田舎道を歩くというのも、何だか嬉しいような、照れるような。
僕は少し前を歩く丸まった背中に向かって声を掛けた。
「修介と、一緒に住んでもいいですか?」
「……まぁ、仲良ぉやるなら別にええけど」
別に、と言われて少し笑ってしまった。
僕はもう一度、空を見上げてニコリとする。
東京でもいつか、こんな星が見られるようになったらいいなぁ。
家に帰ると、お母様は居間のソファーに座って待っていた。
「どうだった?」と含みのある声で聞かれるとお父様は「ん」と小さく頷いただけで、さっさと風呂場へ行ってしまった。
僕はOKを貰ったと言う事をお母様に伝えて、二階へ上がった。
修介は、まだ不貞腐れているのだろうか。
ドアを開けると、僕の布団の上にうつ伏せで寝ている修介がいたから拍子抜けしてしまう。
たぶん、文句をブツブツ言っているうちに睡魔が襲ってきてしまったのだろう。
ちょっと呆れながらも、修介の横に体を横たわらせて、頬に柔らかくキスをした。
(好きだよ)
起きたらまずはさっきの事を謝って、その後でお父様に許しを得た事を伝えよう。
そして今度帰省した時には、お父様と一緒に、明るい店主がいるあのバーに行くように、と。
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