リプレイ!

こすもす

文字の大きさ
上 下
407 / 454

第407話 

しおりを挟む
「景の性格はお父さんに似て超頑固者ですもの。そんなの育てて来た親が一番よく知ってる」
「えっ、待って待って、超頑固者は貴女の方でしょ」
「嘘、貴方よ。それに完璧主義なところも」
「うーん、それはそうかもしれないけど、超頑固者は間違いなく貴女だよ」

 本格的に言い合いが始まったから、ぼーっとそれを眺めていた。
 やっぱり藤澤家って、景を筆頭に変人が多い。
 俺たちの事よりも、性格がどうのこうので言い争いをしている。

 でもとりあえず、受け入れてくれたって事?
 この二人が景の親で良かった……。
 安堵していたら、景は手をまた机の下で強く握ってくれた。

「大丈夫だったでしょ」

 景もホッとした表情をしていた。
 もしかしたら景なりに緊張していたのかも。
 俺を安心させる為に根拠も無くああやって言ってくれたのかもしれない。
 でも結局その通りになるんだから、景はやっぱり何でもできるミラクルな人間なのだ。
 モコがまるでこの場を祝福するかのように、尻尾をパタパタばたつかせながら走り回る。
 俺の隣にも来てくれたから手を伸ばすと、今度は逃げずに体を触らせてくれた。

 あぁ、良かった。
 これで何もかも心配事は無くなった。
 そう思ったのは数分の事だった。
 また何事も無く他愛もない会話をしていた時、不意にお母様は切り出したのだ。

「そうだわ。私、後でお買い物に行かなくちゃいけないの。買い忘れた食材があって。悪いんだけど修介くん、一緒に行って荷物持ち手伝ってくれないかしら?」

 ドキンと心臓が跳ねた。
 何故景では無く俺なんだ?
 あぁでも、景は周りにバレたら厄介だから行けないか。
 もしかして、さっき受け入れたって言っていたのは嘘で、俺に直接別れるように言おうとでもしているのか?
 それとも俺たちを二人きりにさせたくないからそんな事を言っているのか。
 色んな考えが頭をよぎる。

「僕が行くよ」

 景は察したように横から口を挟むけど、お母様はすぐに首を横に振った。

「景が来たらお母さんが気疲れしちゃうわ。誰かに気付かれて後を付けられたりして家がバレても嫌だし。お父さんはゴルフのしすぎで腕が痛いって言うし。すぐそこのスーパーだから、お願いできるかしら?」
「あ、はい」

 断る理由も見つからずに頷いた。
 お父様は二階の洗濯物を取り込みにいくといって階段を上がって行き、お母様は食器を台所で洗い始める。
 俺はトイレを借りようと席を立ってリビングから出ると、後ろからついてきた景に腕を掴まれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました

くるむ
BL
芹沢真紀(せりざわまさき)は、大の読書好き(ただし読むのはBLのみ)。 特にお気に入りなのは、『男なのに彼氏が出来ました』だ。 毎日毎日それを舐めるように読み、そして必ず寝る前には自分もその小説の中に入り込み妄想を繰り広げるのが日課だった。 そんなある日、朝目覚めたら世界は一変していて……。 無自覚な腐男子が、小説内一番のイケてる男子に溺愛されるお話し♡

俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。 しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。 それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。 だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。 流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…? エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか? そして、キースの本当の気持ちは? 分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです! ※R指定は保険です。

家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。

春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。 それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。 にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~

みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。 生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。 夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。 なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。 きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。 お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。 やっと、私は『私』をやり直せる。 死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。

配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!

ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて 素の性格がリスナー全員にバレてしまう しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて… ■ □ ■ 歌い手配信者(中身は腹黒) × 晒し系配信者(中身は不憫系男子) 保険でR15付けてます

だからもう…

詩織
恋愛
ずっと好きだった人に告白してやっと付き合えることになったのに、彼はいつも他の人といる。

処理中です...