リプレイ!

こすもす

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第400話 

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 リビングに案内されて唖然とした。
 景のマンション同様、無駄なものが一切ない。
 あるのは大きめのテレビとソファー、観葉植物、ダイニングテーブル。
 対面キッチンの中には、見たことも無いような調味料が棚いっぱいに並んでいる。
 白で統一された家具や家電製品が置いてあり、壁には調理器具が沢山かかっていた。

 景の後ろに隠れてキョロキョロ見渡す。
 景は振り返り、俺の手元に視線を移したから、それでハッとした。

「あの、これ良かったら皆さんで食べてください」

 そう言ってキッチンにいるお母様に、買ってきた和菓子の箱を差し出した。
 お母様は目を丸くして、一瞬間が空いたから不安になったけど、すぐに嬉しそうな表情になって受け取ってくれたからホッとした。

「ありがとう。気を遣わせてしまってごめんなさいね。でもここのモナカ、美味しくて大好きなのよ。今お茶淹れるわね。手洗って座って待ってて頂戴」
「あ、俺も手伝います」
「何言ってるの。お客様なんだからそんなのいいのよ。景、コート預かって、洗面所案内してあげなさい」

 ちゃんと自己紹介もしてないのに、いきなり手伝うだなんて言われても困るだけか。
 変に好かれようとしすぎたかな、と反省しながら景を見ると、無言のまま笑顔で頷かれた。
 どうやら、こちらのドギマギした気持ちは景には全てお見通しのようだ。
 脱いだコートを景に手渡して、洗面所に向かった。
 手を洗っていたら、また景に笑われた。

「修介、なんだか必死だね」
「だ、だって、どうすればええのか分からんし」
「いいんだよ、いつも通りで。夕飯食べてくでしょ? 母さん料理上手だから美味しいよ。料理本とか出しちゃってるし」
「えっ、お母さんもそういう人なん?」
「ううん、普通の主婦だよ。ブログが人気なんだって。で、この前調子に乗って、美魔女コンテストにも応募して、最終の手前で落とされてたけどね」

 そんなのどっからどう見ても普通の主婦じゃないと思う。
 景の料理が上手なのはお母様の影響か。
 どこまで完璧なのだ、藤澤家。
 リビングに戻ってから景はお母様に尋ねた。

「そういえば父さんは?」

 お母様は俺が先程渡した箱の包み紙を、一枚ずつ丁寧に剥がしていた。

「それがね、可笑しいのよ。さっき貴方から連絡もらったじゃない? そろそろ来るみたいよって伝えたら、急に煙草買いに行ってくるって出てっちゃったのよ」
「え、なんで」
「さぁ。恋人と会うのが気恥ずかくなっちゃったんじゃない? でも結局お友達が来たって分かったら、お父さん、気が抜けちゃうかもね」

 俺と景はこっそり目配せをする。
 景は変わらず余裕の表情で、不敵な笑みを浮かべていた。
 景の足元で賑やかに走り回るモコを見ながら、俺はじんわり顔が熱くなっていくのが分かった。

 やっぱり、普通は友達だって思うよね。
 景はいつ切り出すのだろうか。
 そして切り出したら、一体この場の空気はどうなってしまうのか。未知すぎて何にも分からなかった。
 景に促されてソファーの前に腰を下ろした時、俺の肩に手を置かれて、耳元で囁かれた。

「父さんが帰ってきたら、言うね」

 景はクスッと笑って体を離すと、キッチンにいるお母様の手伝いをし始めた。

 ますます肩に力が入る。
 あんなセクシーな低音ボイスで囁かれて、余計に心臓がおかしくなるではないか。
 俺を困らせる為にわざとやってんな、あのドS……。
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