リプレイ!

こすもす

文字の大きさ
上 下
386 / 454

第385話 

しおりを挟む
「はぁ。ごめん、怖がらせて。とりあえず落ち着いて」
「ッ……」

 景は座ったまま俺の背中に手を回して抱きしめてくれた。
 子供をあやすように、手で背中をトントンと叩いてくれる。
 景の膝の上に座って肩口に顎を乗せると、ほろりと涙が落ちた。

「ちゃんと言って。なんでそういう事になったの? あいつと」

 さっきの冷たい声ではなく、穏やかな、低くて優しい声が聴こえてきたから安堵した。

「と、隣で寝てて、景と間違えて、キスした」
「寝ぼけてたの?」
「景の夢見てて、嬉しくて、夢の中で景とキスしてると思ったんやけど……ごめんなさい」
「……え? それだけ?」
「それだけって?」
「ふふっ」

 今、笑った?
 顔を上げて景の方を見ると、呆れたような顔で笑っていた。

「何を隠してたかと思えば、そんな事?」
「えっ?」
「もう……初めから言ってよ。正直に」
「だ、だって、朝井さんにキスされた時、もう触れさせるなって言われたし、タケさんの事もめっちゃ怒ってたし、桜理さんとキスしたなんて知られたら、景の事傷つけると思って」

 俺がそこまで言うと、景は一息吐いて、俺の頬に流れた涙の跡を指先で拭った。

「隠されてる方がよっぽど傷つくに決まってるでしょう。それに、わざとじゃないんだから、初めから素直に謝れば良かったんだよ」
「ごめん。怖かったん。桜理さんにも迷惑かけたくないし……」
「どうせ、僕が桜理の事殴るとでも思ってたんでしょ?」
「なっ、殴らんでっ」
「殴らないよ。朝井さんの時は頭に血が上って。相手が桜理だったら百倍マシだよ。あいつの事よく知ってるし、修介の事変な目で見てるなんて事あり得ないって分かってるし。僕、必死に隠す修介見て、てっきり桜理とセックスでもしちゃったのかと思ったよ」

 景の事、どっちみち傷つけてしまった。
 俺はいつまでも馬鹿だ。嘘吐いてまで、何を守りたかったんだろう。

「もう、嘘吐くのやめてよね? 僕、信用されてないのかと思っちゃうから」
「ごめん、ホンマにごめん」
「他に隠し事はもうない?」
「ないっ、ない! ホンマに」
「本当だね? 桜理にキスだけじゃなくて、ここを触られたりしてないね?」

 言いながら足の間を服の上からぐにぐにと押されたから、勝手に身体が熱くなる。

「なっ、ないで! そんなの、される訳ないやんか!」
「ならいいんだけどさ」

 景はクスクスと笑うと、俺の唇を再度指でなぞり始めた。

「……じゃあ、ほら。舌出しなさい」
「え?」

 景、許してくれたの?
 俺、子供みたいな事をしてしまったのに。

「消毒、してくれるん?」
「もう最後にしてよね。こんな事」

 ありがとう、景。
 俺は頷くと目を閉じて、舌を出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

壊れた番の直し方

おはぎのあんこ
BL
Ωである栗栖灯(くりす あかり)は訳もわからず、山の中の邸宅の檻に入れられ、複数のαと性行為をする。 顔に火傷をしたΩの男の指示のままに…… やがて、灯は真実を知る。 火傷のΩの男の正体は、2年前に死んだはずの元番だったのだ。 番が解消されたのは響一郎が死んだからではなく、Ωの体に変わっていたからだった。 ある理由でαからΩになった元番の男、上天神響一郎(かみてんじん きょういちろう)と灯は暮らし始める。 しかし、2年前とは色々なことが違っている。 そのため、灯と険悪な雰囲気になることも… それでも、2人はαとΩとは違う、2人の関係を深めていく。 発情期のときには、お互いに慰め合う。 灯は響一郎を抱くことで、見たことのない一面を知る。 日本にいれば、2人は敵対者に追われる運命… 2人は安住の地を探す。 ☆前半はホラー風味、中盤〜後半は壊れた番である2人の関係修復メインの地味な話になります。 注意点 ①序盤、主人公が元番ではないαたちとセックスします。元番の男も、別の女とセックスします ②レイプ、近親相姦の描写があります ③リバ描写があります ④独自解釈ありのオメガバースです。薬でα→Ωの性転換ができる世界観です。 表紙のイラストは、なと様(@tatatatawawawaw)に描いていただきました。

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

少年ペット契約

眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。 ↑上記作品を知らなくても読めます。  小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。  趣味は布団でゴロゴロする事。  ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。  文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。  文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。  文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。  三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。  文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。 ※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。 ※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。

処理中です...