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第364話
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「あっ……景、久し振り」
かろうじてそう言うと、景ははっきりとした口調で、いつもの低音を響かせた。
「修介はさ」
「……何?」
「これからも僕と一緒にいてくれるんだよね?」
「え?」
唐突な質問だったから、顔を上げて景と視線を合わせた。
何かが吹っ切れたのか、あの日の寂しげな表情ではなく、強気で、一点も曇りがない目で微笑んでいる。
「やっぱり大人しく、僕に守られててよ」
「はは、なんやそれ」
「修介の一番は、僕でしょう?」
「……当たり前やんか」
「直接謝りたかったんだ。疑ったり、嫉妬したりして、まるで修介の事を信用してないみたいだったね。もう、そういうのやめるよ。本当にごめん」
景はそう言って、また熱いキスを落としてから身体を離した。
「ううん。俺もごめん。景が嫌だなと思う事はもう、せーへんようにする……」
「莉奈ちゃん。さっき会ってきたよ」
──会ってきた?
その言葉に目を丸くする。
「は? 莉奈に?」
「修介に連絡しないつもりなら、私にくださいって言われた」
「えっ! 莉奈、そんな事言うたんか?!」
「やだって言ったよ。誰にもあげるつもりは無いからねって」
顔が火照っていくのが分かった。
そんな事を言っただなんて、恥ずかしくてこの先、莉奈と顔を合わせられないではないか。
でも、景がはっきりそうやって言ってくれただなんて、やっぱり嬉しかった。
「不安にならなくていいのにって僕が修介にいつも言ってたくせに、当の本人が不安で信じられなくなっちゃってさ……バカだったよ。これからはもう、ウジウジ悩んだりしない。ずっと一緒にいてくれる? 五年後も十年後も、僕の隣に」
十年後もって……馬鹿じゃないの?
それって結構長いと思うんだけど。壮大だな。
それって軽くプロポーズしてるみたいになってるけど。
「景ってホンマ……」
鼻の奥がツンとして、言葉に詰まる。
景から視線を逸らした。
思えばこの人は、はじめて会った時からいろいろと変わっていた。
いきなり頭を撫でてきたり、電話してきたり、この家に突然押しかけて来たり。
景はちゃんと、詩音くんじゃなく、他の誰でもなく、こんな俺の事を選んでくれた。
愛されてるって事が嬉しくて、俺は涙の雫を弾けさせて笑った。
「アホやなぁ……」
「でしょ。自分でもびっくりするくらい、君に夢中なんだ」
「……知ってる」
今度は俺の方が景の服を掴んで、背伸びをして景にキスのおねだりをした。
景はそれにちゃんと応えてくれる。
何度も角度を変えてキスをして、お互い熱い息を吐き出すと、手を繋いだままソファーベッドに移動した。
かろうじてそう言うと、景ははっきりとした口調で、いつもの低音を響かせた。
「修介はさ」
「……何?」
「これからも僕と一緒にいてくれるんだよね?」
「え?」
唐突な質問だったから、顔を上げて景と視線を合わせた。
何かが吹っ切れたのか、あの日の寂しげな表情ではなく、強気で、一点も曇りがない目で微笑んでいる。
「やっぱり大人しく、僕に守られててよ」
「はは、なんやそれ」
「修介の一番は、僕でしょう?」
「……当たり前やんか」
「直接謝りたかったんだ。疑ったり、嫉妬したりして、まるで修介の事を信用してないみたいだったね。もう、そういうのやめるよ。本当にごめん」
景はそう言って、また熱いキスを落としてから身体を離した。
「ううん。俺もごめん。景が嫌だなと思う事はもう、せーへんようにする……」
「莉奈ちゃん。さっき会ってきたよ」
──会ってきた?
その言葉に目を丸くする。
「は? 莉奈に?」
「修介に連絡しないつもりなら、私にくださいって言われた」
「えっ! 莉奈、そんな事言うたんか?!」
「やだって言ったよ。誰にもあげるつもりは無いからねって」
顔が火照っていくのが分かった。
そんな事を言っただなんて、恥ずかしくてこの先、莉奈と顔を合わせられないではないか。
でも、景がはっきりそうやって言ってくれただなんて、やっぱり嬉しかった。
「不安にならなくていいのにって僕が修介にいつも言ってたくせに、当の本人が不安で信じられなくなっちゃってさ……バカだったよ。これからはもう、ウジウジ悩んだりしない。ずっと一緒にいてくれる? 五年後も十年後も、僕の隣に」
十年後もって……馬鹿じゃないの?
それって結構長いと思うんだけど。壮大だな。
それって軽くプロポーズしてるみたいになってるけど。
「景ってホンマ……」
鼻の奥がツンとして、言葉に詰まる。
景から視線を逸らした。
思えばこの人は、はじめて会った時からいろいろと変わっていた。
いきなり頭を撫でてきたり、電話してきたり、この家に突然押しかけて来たり。
景はちゃんと、詩音くんじゃなく、他の誰でもなく、こんな俺の事を選んでくれた。
愛されてるって事が嬉しくて、俺は涙の雫を弾けさせて笑った。
「アホやなぁ……」
「でしょ。自分でもびっくりするくらい、君に夢中なんだ」
「……知ってる」
今度は俺の方が景の服を掴んで、背伸びをして景にキスのおねだりをした。
景はそれにちゃんと応えてくれる。
何度も角度を変えてキスをして、お互い熱い息を吐き出すと、手を繋いだままソファーベッドに移動した。
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