335 / 454
第334話
しおりを挟む
「あの、北村さん、大丈夫ですか? 具合とか悪いんじゃ」
「あんなぁ、莉奈」
こんな事言ってもしょうがないと思うけど、言ってしまおう。
もうどうでもいいだんて思ってないけど、ヤケにも似た気持ちで俺は顔を上げて、無理矢理笑顔を作った。
「俺、彼女がいるっていうのは嘘やねん」
「えっ?」
「本当は俺、藤澤 景と付き合うてんねん」
「……え?」
莉奈は理解できないという表情で、ポカンとこちらを見つめてくる。
それはそうだろう。いきなりそんな事を言われてもって感じだろう。
「実は翔平と藤澤 景は幼馴染で。それで、翔平に紹介してもらって仲良くなって付き合う事になったんやけど……変で、おかしいやろ? 男同士で」
最後はフフッと笑って誤魔化すけど、心は全然笑っていなかった。
もしかしたら、景はもう付き合ってないって思ってるのかもしれないけど。
愛想尽かされたのかもしれない。
そう思ってしまうと、また怖くなった。
でも、俺はそんなに簡単には終わりにしたくない。
「でも、この気持ちは本気なんよ。だから、景の事、大事にしていきたいんよ」
「分かりました」
莉奈は頷いて、ニッコリと笑った。
「凄いです北村さん。全然変じゃないですよ。あの藤澤 景さんと恋人同士だなんて。羨ましいです」
「ほんま? ありがと」
「あの、大丈夫でしたか? 私の事何か言ってませんでした?」
「ううん、何も?」
「え、本当ですか? だって私、いきなり部屋にいたりして、藤澤 景さん、ビックリしたんじゃないですか? 帰っちゃったんですよね?」
「忙しいから、景は。明日も仕事やからね」
だから大丈夫……と莉奈の肩に手を伸ばして触れようとしたけれど、途中で止めてゆっくりと下ろして膝の上で拳を作った。
「もう遅いやろ。家まで送ってってあげるから、今日は帰り」
「はい。すいません」
莉奈は何度も謝って、アパートを出てから横に並んで歩いた。
やっぱり蒸し暑くて、歩くと汗をじんわりかいてTシャツが張りついた。
心も体も、憂鬱で仕方なかった。
そして、翌日も翌々日も週末も、十日経っても、景から連絡が来る事は無かった。
「あんなぁ、莉奈」
こんな事言ってもしょうがないと思うけど、言ってしまおう。
もうどうでもいいだんて思ってないけど、ヤケにも似た気持ちで俺は顔を上げて、無理矢理笑顔を作った。
「俺、彼女がいるっていうのは嘘やねん」
「えっ?」
「本当は俺、藤澤 景と付き合うてんねん」
「……え?」
莉奈は理解できないという表情で、ポカンとこちらを見つめてくる。
それはそうだろう。いきなりそんな事を言われてもって感じだろう。
「実は翔平と藤澤 景は幼馴染で。それで、翔平に紹介してもらって仲良くなって付き合う事になったんやけど……変で、おかしいやろ? 男同士で」
最後はフフッと笑って誤魔化すけど、心は全然笑っていなかった。
もしかしたら、景はもう付き合ってないって思ってるのかもしれないけど。
愛想尽かされたのかもしれない。
そう思ってしまうと、また怖くなった。
でも、俺はそんなに簡単には終わりにしたくない。
「でも、この気持ちは本気なんよ。だから、景の事、大事にしていきたいんよ」
「分かりました」
莉奈は頷いて、ニッコリと笑った。
「凄いです北村さん。全然変じゃないですよ。あの藤澤 景さんと恋人同士だなんて。羨ましいです」
「ほんま? ありがと」
「あの、大丈夫でしたか? 私の事何か言ってませんでした?」
「ううん、何も?」
「え、本当ですか? だって私、いきなり部屋にいたりして、藤澤 景さん、ビックリしたんじゃないですか? 帰っちゃったんですよね?」
「忙しいから、景は。明日も仕事やからね」
だから大丈夫……と莉奈の肩に手を伸ばして触れようとしたけれど、途中で止めてゆっくりと下ろして膝の上で拳を作った。
「もう遅いやろ。家まで送ってってあげるから、今日は帰り」
「はい。すいません」
莉奈は何度も謝って、アパートを出てから横に並んで歩いた。
やっぱり蒸し暑くて、歩くと汗をじんわりかいてTシャツが張りついた。
心も体も、憂鬱で仕方なかった。
そして、翌日も翌々日も週末も、十日経っても、景から連絡が来る事は無かった。
0
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件
実川えむ
恋愛
子供のころチビでおデブちゃんだったあの子が、王子様みたいなイケメン俳優になって現れました。
ちょっと、聞いてないんですけど。
※以前、エブリスタで別名義で書いていたお話です(現在非公開)。
※不定期更新
※カクヨム・ベリーズカフェでも掲載中
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【完結】少年王が望むは…
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
シュミレ国―――北の山脈に背を守られ、南の海が恵みを運ぶ国。
15歳の少年王エリヤは即位したばかりだった。両親を暗殺された彼を支えるは、執政ウィリアム一人。他の誰も信頼しない少年王は、彼に心を寄せていく。
恋ほど薄情ではなく、愛と呼ぶには尊敬や崇拝の感情が強すぎる―――小さな我侭すら戸惑うエリヤを、ウィリアムは幸せに出来るのか?
【注意事項】BL、R15、キスシーンあり、性的描写なし
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう、カクヨム
ドラマのような恋を
Guidepost
BL
2人の出会いは曲がり角でぶつかるというお約束……
それと落ちたレタスだった。
穂村 葵(ほむら あおい)と桐江 奏真(きりえ そうま)はそんな出会い方をした。
人気ありドラマや歌手活動に活躍中の葵は、ぶつかった相手がまさか自分の名前も顔も知らないことに衝撃を受ける。
以来気になって葵は奏真を構うようになり――
霧のはし 虹のたもとで
萩尾雅縁
BL
大学受験に失敗した比良坂晃(ひらさかあきら)は、心機一転イギリスの大学へと留学する。
古ぼけた学生寮に嫌気のさした晃は、掲示板のメモからシェアハウスのルームメイトに応募するが……。
ひょんなことから始まった、晃・アルビー・マリーの共同生活。
美貌のアルビーに憧れる晃は、生活に無頓着な彼らに振り回されながらも奮闘する。
一つ屋根の下、徐々に明らかになる彼らの事情。
そして晃の真の目的は?
英国の四季を通じて織り成される、日常系心の旅路。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる