331 / 454
第330話 side景
しおりを挟む
でも、いろんな僕の考えは玄関のドアを見てあっけなく崩れ去った。
ちゃんと閉まりきっておらず、少し隙間があいてそこから中の光が漏れていた。
まったく。修介らしいといえば修介らしい。
鍵も掛けず、それにドアもちゃんと閉まったかどうか確認もしないなんて。
不用心だなと思いつつ、手は自然とドアノブを掴んでいた。
ドアノブを引いて中をこっそり覗き込んだ僕の目に飛び込んできたのは、修介がいつも履いているスニーカーと、ヒールのあるパンプスだった。
見た瞬間、妙に背筋が寒くなった気がした。
そして僕を追い詰めるかのように、部屋の中から聞こえてくる、女性の声。
どこか諭すような話し方だった。
僕は一気に嫌悪感に苛まれながらも身体を中に入れて、リビングの奥を覗き込む。
修介が、ソファーに座る女の子の手を握りながら見上げている。
そしてその女の子は、泣いている。
瞬時に理解した。
あれは、高宮莉奈ちゃんだ、と。
「──そっか。ありがとう。こんな俺を好きになってくれたんやね。俺告白なんてされるん慣れてないからどう言ったらええのか分からんのやけど」
「私じゃだめですか?」
頭が真っ白になった。
何、その会話。
修介、何笑っているの?
もしかして、莉奈ちゃんに告白でもされて嬉しい、とか?
随分と楽しそうだね。恋愛ごっこ? 僕の知らないところで。
やっぱり君は、肝心な事は何も言わないでいるんだね。
修介は莉奈ちゃんに何か言っているようだけどそんなのはもう耳に入ってこなかった。
紙袋の取っ手を千切れそうになるくらいギュッと掴んで、僕は自分でもビックリするぐらい冷たく固い声を出した。
「お取り込み中悪いんだけどさ」
ちゃんと閉まりきっておらず、少し隙間があいてそこから中の光が漏れていた。
まったく。修介らしいといえば修介らしい。
鍵も掛けず、それにドアもちゃんと閉まったかどうか確認もしないなんて。
不用心だなと思いつつ、手は自然とドアノブを掴んでいた。
ドアノブを引いて中をこっそり覗き込んだ僕の目に飛び込んできたのは、修介がいつも履いているスニーカーと、ヒールのあるパンプスだった。
見た瞬間、妙に背筋が寒くなった気がした。
そして僕を追い詰めるかのように、部屋の中から聞こえてくる、女性の声。
どこか諭すような話し方だった。
僕は一気に嫌悪感に苛まれながらも身体を中に入れて、リビングの奥を覗き込む。
修介が、ソファーに座る女の子の手を握りながら見上げている。
そしてその女の子は、泣いている。
瞬時に理解した。
あれは、高宮莉奈ちゃんだ、と。
「──そっか。ありがとう。こんな俺を好きになってくれたんやね。俺告白なんてされるん慣れてないからどう言ったらええのか分からんのやけど」
「私じゃだめですか?」
頭が真っ白になった。
何、その会話。
修介、何笑っているの?
もしかして、莉奈ちゃんに告白でもされて嬉しい、とか?
随分と楽しそうだね。恋愛ごっこ? 僕の知らないところで。
やっぱり君は、肝心な事は何も言わないでいるんだね。
修介は莉奈ちゃんに何か言っているようだけどそんなのはもう耳に入ってこなかった。
紙袋の取っ手を千切れそうになるくらいギュッと掴んで、僕は自分でもビックリするぐらい冷たく固い声を出した。
「お取り込み中悪いんだけどさ」
0
お気に入りに追加
220
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる