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第285話
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翌日、俺と翔平は都内まで足を延ばした。
翔平とは飲みに行くことが多いから、一緒に買い物をしに行くなんて新鮮だった。
いつもなら秀明や晴人と一緒に行くところだけど、今回はどうしても翔平が良かった。
幼馴染の翔平だったら景の好みを十二分に分かっているはずだから。
と、思ったのに。
「景が喜ぶ物って言ったら、そりゃあ現金に決まってんだろーが。芸能人は金の亡者だからな」
「もう! ちゃんと真剣に考えとるん? 翔平やったら景の事よく知っとると思って誘ったんに、さっきからそんなんばっかりやんか!」
おしゃれなメンズファッション専門のビルの中を散策しながら俺は文句を言う。
ここに来る前にも、何軒かのファッションビルを回った。
翔平の言うことは全然充てにならない。
クオカードだの、景が絶対に興味が無さそうなゲーム機だの、終いには俺にリボンを付けて自分をプレゼントすればいいだの。
こんな事ならやっぱり秀明や晴人を誘えば良かった……
そう思いながらなんとなく景の雰囲気にあってそうな店を見つけて店内に入り、棚に陳列されているシャツを一枚手に取って広げてみる。
無地で胸ポケットがあり、そこにブランドの刺繍がされている。
どんな服装にも合いそうだし、値段も安すぎず高すぎずでシンプルでいいんだけど、なんだかしっくり来ない。
(やっぱり洋服は難しいかもなぁ。もし景の好みやなかったら申し訳ないし)
元あった棚に戻して、その店を出た。
他の店でも靴、帽子、バックなどを見て回ったけど、どれもピンと来なくて、うーんと唸って終わった。
翔平は真剣に悩む俺を鼻で笑って、腕組みをしながら横を歩く。
「景の誕生日が七月二日だなんて忘れてたな。景にプレゼントなんて、小学生の頃あげた記憶はあるけど」
「へぇ。そん時は何あげたん?」
「エロ本」
「えっ」
「ウケ狙いでだぜ? クラスの友達が自分の兄ちゃんのをパクッてきてそのまま渡したんだよ。今考えたら何してんだって話だけどさー」
「で、で? 景はもちろんそんなん受け取らんかったよな?」
ランドセルを背負う小学生の景を想像した。
きっと今とあまり変わらず、いや、俺と出会ってから表情が柔らかくなったと佐伯さんに言われたと言っていたから、今よりも静かに周りを観察するような冷静な小学生だったに違いない。
そんなふざけたプレゼントも、馬鹿にするなと投げ捨ててくれただろう。
「いや、超嬉しそうにありがとう~って喜んで受け取ってたぜ? ちゃんと担任にバレないように、ランドセルの中にすぐ入れてたし」
……そんなの聞きたくなかった。
まさか景、その頃からエロかっただなんて。(しかしこのエピソードは翔平の過剰な捏造だということを知ったのは当分先なのであった)
なんだかショックを受けたような気持ちでフロアを一周し、エスカレーターで上の階へと上がった。
また同じように景の雰囲気に合ってそうなお店に入って、手に取りうーんと唸り、なんだか冷やかしの客のように店を出るということを繰り返していると、翔平はまた適当に話し始めた。
翔平とは飲みに行くことが多いから、一緒に買い物をしに行くなんて新鮮だった。
いつもなら秀明や晴人と一緒に行くところだけど、今回はどうしても翔平が良かった。
幼馴染の翔平だったら景の好みを十二分に分かっているはずだから。
と、思ったのに。
「景が喜ぶ物って言ったら、そりゃあ現金に決まってんだろーが。芸能人は金の亡者だからな」
「もう! ちゃんと真剣に考えとるん? 翔平やったら景の事よく知っとると思って誘ったんに、さっきからそんなんばっかりやんか!」
おしゃれなメンズファッション専門のビルの中を散策しながら俺は文句を言う。
ここに来る前にも、何軒かのファッションビルを回った。
翔平の言うことは全然充てにならない。
クオカードだの、景が絶対に興味が無さそうなゲーム機だの、終いには俺にリボンを付けて自分をプレゼントすればいいだの。
こんな事ならやっぱり秀明や晴人を誘えば良かった……
そう思いながらなんとなく景の雰囲気にあってそうな店を見つけて店内に入り、棚に陳列されているシャツを一枚手に取って広げてみる。
無地で胸ポケットがあり、そこにブランドの刺繍がされている。
どんな服装にも合いそうだし、値段も安すぎず高すぎずでシンプルでいいんだけど、なんだかしっくり来ない。
(やっぱり洋服は難しいかもなぁ。もし景の好みやなかったら申し訳ないし)
元あった棚に戻して、その店を出た。
他の店でも靴、帽子、バックなどを見て回ったけど、どれもピンと来なくて、うーんと唸って終わった。
翔平は真剣に悩む俺を鼻で笑って、腕組みをしながら横を歩く。
「景の誕生日が七月二日だなんて忘れてたな。景にプレゼントなんて、小学生の頃あげた記憶はあるけど」
「へぇ。そん時は何あげたん?」
「エロ本」
「えっ」
「ウケ狙いでだぜ? クラスの友達が自分の兄ちゃんのをパクッてきてそのまま渡したんだよ。今考えたら何してんだって話だけどさー」
「で、で? 景はもちろんそんなん受け取らんかったよな?」
ランドセルを背負う小学生の景を想像した。
きっと今とあまり変わらず、いや、俺と出会ってから表情が柔らかくなったと佐伯さんに言われたと言っていたから、今よりも静かに周りを観察するような冷静な小学生だったに違いない。
そんなふざけたプレゼントも、馬鹿にするなと投げ捨ててくれただろう。
「いや、超嬉しそうにありがとう~って喜んで受け取ってたぜ? ちゃんと担任にバレないように、ランドセルの中にすぐ入れてたし」
……そんなの聞きたくなかった。
まさか景、その頃からエロかっただなんて。(しかしこのエピソードは翔平の過剰な捏造だということを知ったのは当分先なのであった)
なんだかショックを受けたような気持ちでフロアを一周し、エスカレーターで上の階へと上がった。
また同じように景の雰囲気に合ってそうなお店に入って、手に取りうーんと唸り、なんだか冷やかしの客のように店を出るということを繰り返していると、翔平はまた適当に話し始めた。
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