リプレイ!

こすもす

文字の大きさ
上 下
234 / 454

第234話

しおりを挟む
「あっ、修介。やっと帰ってきた。大丈夫かよ?」

 戻って来た俺にタケさんが声を掛けてくれる。
 景と桜理さんも席に座っていた。
 フラフラと景の横に腰を下ろして、手を見られないように膝の上でグッと拳を作った。

「大丈夫? 遅いから様子見に行こうかなと思ってたんだ。なんだかいつも以上に顔白いような気がするけど、具合悪いの?」
「あぁ、うん、大丈夫」

「本当かよ? 酔ってんじゃねぇ? 修介って酒弱いの?」

 桜理さんは身を乗り出して俯く俺の顔を覗き込む。

「いや、強い方だし、これくらいの量じゃ酔わないはずだけど……気持ち悪い?」

 何も発さない俺に変わって景が代弁してくれた。
 酔ってはいないけど、まるで酔ってるみたいに頭がぐるぐるとしていた。
 どうしようか相談したくても、できない。
 もし言ったら景と俺の事、バラされてしまう。
 胸が不安で一杯になって、一刻も早くここから出たかった。

「あ、景、ごめん。なんか人に酔ったみたいやから、もう帰ろうかな」
「うん。大丈夫? 僕の家に行こうか」
「いやっ、ええよ! 俺ん家でゆっくり休みたいし、明日も朝から大学で用事あるから」
「そっか。分かった。じゃあとりあえず外に出よう」
「うん」

 景に腕を取られて立ち上がり、タケさんと桜理さんに挨拶をしてから出口へ向かった。
 その途中、ふと視線を感じたから顔を上げると、遠くからこちらをじっと見て微笑する朝井さんと目が合ってしまい、ゾクッとして、慌てて視線を逸らした。
 景は朝井さんの視線には気付かなかったようだった。
 店を出て、エレベーターに乗りこむ。

「ごめんね、修介の事、ちゃんと見ておけば良かった。途中で席立っちゃって……」

 その時、景の手が俺の右手を掴んだ。
 一瞬ビクッと体を反応させた俺を見逃さなかったようで、景は俺の顔をじっと凝視してから、指を絡ませてきた。

「どうしたの? ……あれ、修介、今日指輪してなかったっけ?」

 き、気付いたーーーー‼︎
 どうしよ……俺。落ち着け、俺。

「あっ、ううん、今日してきてへんよ? 緊張して、するの忘れてしもうて」
「あ、そうだったっけ。僕の勘違いか」

 いつもだったらもっと突っ込んでくるのに、今日はあっさり引いてくれたからホッとした。
 そういえば景、少し鼻声で頬が赤い。
 きっとアルコールが回ってるんだろう。

「ごめん、修介の家まで送ってあげたいんだけど」
「ええんよ! ホンマに大丈夫やから! じゃあ、また連絡するから!」
「えっ、修介?」

 俺はエレベーターのドアが開いた瞬間、勢いよく外に飛び出して走った。


 帰宅してからスマホを見ると、景から電話が何回か掛かってきていた。
 でも、折り返しの電話は出来なかった。
 あの声を聞いてしまうと、全て白状してしまいたくなる。
 それは絶対にダメだ。
 俺は『大丈夫。今日はもう寝るね。おやすみ』とだけメッセージを送った。
 景は『おやすみ』と返信してくれて、その後の電話はピタリとやんだからホッとして、布団を頭からすっぽり被った。

 とにかく、明日。
 明日、朝井さんに電話をして、大事な指輪をちゃんと返してもらわないと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

壊れた番の直し方

おはぎのあんこ
BL
Ωである栗栖灯(くりす あかり)は訳もわからず、山の中の邸宅の檻に入れられ、複数のαと性行為をする。 顔に火傷をしたΩの男の指示のままに…… やがて、灯は真実を知る。 火傷のΩの男の正体は、2年前に死んだはずの元番だったのだ。 番が解消されたのは響一郎が死んだからではなく、Ωの体に変わっていたからだった。 ある理由でαからΩになった元番の男、上天神響一郎(かみてんじん きょういちろう)と灯は暮らし始める。 しかし、2年前とは色々なことが違っている。 そのため、灯と険悪な雰囲気になることも… それでも、2人はαとΩとは違う、2人の関係を深めていく。 発情期のときには、お互いに慰め合う。 灯は響一郎を抱くことで、見たことのない一面を知る。 日本にいれば、2人は敵対者に追われる運命… 2人は安住の地を探す。 ☆前半はホラー風味、中盤〜後半は壊れた番である2人の関係修復メインの地味な話になります。 注意点 ①序盤、主人公が元番ではないαたちとセックスします。元番の男も、別の女とセックスします ②レイプ、近親相姦の描写があります ③リバ描写があります ④独自解釈ありのオメガバースです。薬でα→Ωの性転換ができる世界観です。 表紙のイラストは、なと様(@tatatatawawawaw)に描いていただきました。

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

少年ペット契約

眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。 ↑上記作品を知らなくても読めます。  小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。  趣味は布団でゴロゴロする事。  ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。  文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。  文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。  文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。  三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。  文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。 ※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。 ※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。

処理中です...