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第233話
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「……へっ?」
朝井さんはまたフフッと笑って、指輪をチラつかせた。
「どっかで見たことあるなと思ってたんだよね。そっか、今思い出したよ。あいつと何回か打ち上げとかで一緒になった事あって、その時にこれしてたなーって。で? なんで君が持ってんの?」
「……」
どうしよう。
もしかして、なんか勘付いた?
いや、大丈夫。さっき南さんに言ったみたいに、普通に事実を伝えればいい。貰ったって言えばいいんだ。
少し手が震えながらも、何でも無いフリをして口の端を上げた。
「景が、あげるって言ってくれたんで、貰いました」
「へぇ。あいつの恋人だから?」
「えっ」
動揺した声が漏れてしまい、慌てて両手で口を押さえた。
すると朝井さんは目を見開いた後にプッと吹き出して、豪快に笑い出す。
「マジで? ハハ。超ウケる。ボケたつもりだったのにマジなの? 顔真っ赤じゃん」
「ち、違います! そんなんじゃないです!」
まずい! まずい!
もし景と付き合ってるなんてバレたら、景に迷惑がかかる。
俺は必死になってかぶりを振って否定し続けたけど、朝井さんはもう完全に気付いてしまったようだった。
「へぇ。南と別れたのは知ってたけど、まさか今度の相手は男だなんてね。しかもこんなにおチビで可愛い……」
朝井さんは左手を伸ばして、指先をおれの顎に添えて持ち上げた。
「人気No.1俳優の藤澤も俺と同じ性癖の持ち主だったなんて光栄だよ」
「……同じ?」
「俺の秘密教えてあげる。俺、ゲイなんだ」
「えっ……」
ぽかんと口を開けてしまった。
や、やばい。この人、目が逝ってる(気がする)。
ゲイだって? 嫌な予感しかしない。
あぁ、神様。いや、景。タケさん、桜理さん。お願いだから助けて。
「俺は別に公にしたっていいんだけどさ、事務所的にNGらしいんだよ。息が詰まるよなぁ。本当の事隠して生きていかなくちゃならないなんてさ」
「そ、そうですか……」
朝井さんはますます指に力を込めるから、俺は朝井さんの腕を掴んで懇願した。
「あの……お願いです……景との事は、誰にも……」
「うん。大丈夫。俺口堅いから誰にも言わないよ。その代わり」
朝井さんは俺から手を離すと、持っていた指輪を自分の左手の小指にはめてしまった。
またぽかんと口を丸くしていると、朝井さんは「お、綺麗」とそれを見て呟いてから、不敵な笑みを浮かべた。
「今度俺とデートしてよ。そしたら指輪返してあげる」
「えっ?」
「なんか、君の事気に入った。安心してよ。デートしてくれたらちゃーんと返してあげるから。もちろん藤澤には内緒ね。もしチクったら二人の事、世間中にバラしちゃうから」
「そ、そんなっ!」
俺は涙目になった。
これって脅し?
この場に指輪をしてきてしまった事を激しく後悔した。
「スマホ持ってる? 俺の電話番号言うからメモして」
俺は訳が分からぬまま、言われるがままに電話帳を開いて、朝井さんの電話番号を登録した。
「じゃあ、明日、何時でもいいから電話して? 詳しい事はおいおい。あ、君の名前聞いてなかったね?」
「北村、修介……です」
「じゃあ、修介くん。またね」
朝井さんは手をヒラヒラとさせてその場を後にした。
残された俺はただただ呆然と立ち尽くす。
な、何、今の。
あっという間の出来事で訳が分からない。
とりあえず、物凄く面倒なことになったという事だけは分かる。
(あぁー! どないしよー!)
俺はその場で一人頭を抱えた。
朝井さんはまたフフッと笑って、指輪をチラつかせた。
「どっかで見たことあるなと思ってたんだよね。そっか、今思い出したよ。あいつと何回か打ち上げとかで一緒になった事あって、その時にこれしてたなーって。で? なんで君が持ってんの?」
「……」
どうしよう。
もしかして、なんか勘付いた?
いや、大丈夫。さっき南さんに言ったみたいに、普通に事実を伝えればいい。貰ったって言えばいいんだ。
少し手が震えながらも、何でも無いフリをして口の端を上げた。
「景が、あげるって言ってくれたんで、貰いました」
「へぇ。あいつの恋人だから?」
「えっ」
動揺した声が漏れてしまい、慌てて両手で口を押さえた。
すると朝井さんは目を見開いた後にプッと吹き出して、豪快に笑い出す。
「マジで? ハハ。超ウケる。ボケたつもりだったのにマジなの? 顔真っ赤じゃん」
「ち、違います! そんなんじゃないです!」
まずい! まずい!
もし景と付き合ってるなんてバレたら、景に迷惑がかかる。
俺は必死になってかぶりを振って否定し続けたけど、朝井さんはもう完全に気付いてしまったようだった。
「へぇ。南と別れたのは知ってたけど、まさか今度の相手は男だなんてね。しかもこんなにおチビで可愛い……」
朝井さんは左手を伸ばして、指先をおれの顎に添えて持ち上げた。
「人気No.1俳優の藤澤も俺と同じ性癖の持ち主だったなんて光栄だよ」
「……同じ?」
「俺の秘密教えてあげる。俺、ゲイなんだ」
「えっ……」
ぽかんと口を開けてしまった。
や、やばい。この人、目が逝ってる(気がする)。
ゲイだって? 嫌な予感しかしない。
あぁ、神様。いや、景。タケさん、桜理さん。お願いだから助けて。
「俺は別に公にしたっていいんだけどさ、事務所的にNGらしいんだよ。息が詰まるよなぁ。本当の事隠して生きていかなくちゃならないなんてさ」
「そ、そうですか……」
朝井さんはますます指に力を込めるから、俺は朝井さんの腕を掴んで懇願した。
「あの……お願いです……景との事は、誰にも……」
「うん。大丈夫。俺口堅いから誰にも言わないよ。その代わり」
朝井さんは俺から手を離すと、持っていた指輪を自分の左手の小指にはめてしまった。
またぽかんと口を丸くしていると、朝井さんは「お、綺麗」とそれを見て呟いてから、不敵な笑みを浮かべた。
「今度俺とデートしてよ。そしたら指輪返してあげる」
「えっ?」
「なんか、君の事気に入った。安心してよ。デートしてくれたらちゃーんと返してあげるから。もちろん藤澤には内緒ね。もしチクったら二人の事、世間中にバラしちゃうから」
「そ、そんなっ!」
俺は涙目になった。
これって脅し?
この場に指輪をしてきてしまった事を激しく後悔した。
「スマホ持ってる? 俺の電話番号言うからメモして」
俺は訳が分からぬまま、言われるがままに電話帳を開いて、朝井さんの電話番号を登録した。
「じゃあ、明日、何時でもいいから電話して? 詳しい事はおいおい。あ、君の名前聞いてなかったね?」
「北村、修介……です」
「じゃあ、修介くん。またね」
朝井さんは手をヒラヒラとさせてその場を後にした。
残された俺はただただ呆然と立ち尽くす。
な、何、今の。
あっという間の出来事で訳が分からない。
とりあえず、物凄く面倒なことになったという事だけは分かる。
(あぁー! どないしよー!)
俺はその場で一人頭を抱えた。
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