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第194話 side景
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* * *
仕事帰りに連絡をもらった僕は、和酒和食の店に足を運んだ。
こぢんまりとした隠れ家的なこの店には、もう何度も通っている。
中に入ると直ぐに店主が久しぶり、と寄ってきてくれて少し会話をした。
その後、カウンターに座る二人の元へキャップ帽とマスクを外しながら近づいた。
「景。おつかれー」
依田 桜理が背筋をピンと伸ばして僕に微笑みかける。
その隣に座る石倉 猛もカウンターに肘をついて僕の方に身体を向けた。
「今日は取材?」
「うん。雑誌の」
僕は桜理の隣に座って一息つく。
桜理は僕の頭のてっぺんから靴の先まで見渡した。
「景、ちゃんと食ってんの? なんかちょっと見ない間に痩せてない? 最近忙しいのか?」
「うーん、まぁまぁかな。たまに夕飯抜く時あるから痩せちゃったのかも」
スキニーパンツを履いているから余計にそう見えるのだろう。
横にいる猛も口を挟んだ。
「景ちゃん、ただでさえ細いんだからちゃんと食っとけよー。あ、そうだ。佐伯さんが、今度またみんなで集まってご飯でもって。先週会った時に言ってたぜ」
「あぁ、今の撮影、佐伯さんもいるんだっけ? 是非、って伝えておいて」
オッケー、と語尾を伸ばす癖がいつまでも直らない猛は、僕の一個下になるけれどデビューの年が一緒で芸歴はほぼ変わらない。
三白眼で目が細く、何も発さないと無機質な印象を与えるけど、性格はとにかく明るくて活発だ。
僕が猛とドラマの撮影で初めて会った時、まだお互いこの世界が手探り状態だったから緊張していて話が続かなかったし、少し気まずい思いをした。
何年後かに再会した時にはようやく慣れていて、打ち解けた途端に仲良くなり、景ちゃん、タケ、と呼び合って、都合が合えばこうして会っている。
そんな彼に仲良くしている事務所の先輩がいる、と数年前に酒の席で紹介されたのが隣にいる桜理だった。
桜理は、日本人の母親とスペイン人とのハーフの父親を持つ、クォーターだ。
それもあってやけに長身で、西洋的な顔立ちをしている。
僕らよりも早い段階で俳優を志し、舞台の場を何度も踏んでいる、誰もが羨む実力のある唯一無二の俳優だ。
初めは気を遣っていたけれど、酔った勢いで敬語をやめたら途端に仲良くなった。
他にも仲良くしている芸能界の友達はいるけれど、特に一緒にいるのが多いのはこの二人。
いわゆるマブダチというやつだ。
仕事帰りに連絡をもらった僕は、和酒和食の店に足を運んだ。
こぢんまりとした隠れ家的なこの店には、もう何度も通っている。
中に入ると直ぐに店主が久しぶり、と寄ってきてくれて少し会話をした。
その後、カウンターに座る二人の元へキャップ帽とマスクを外しながら近づいた。
「景。おつかれー」
依田 桜理が背筋をピンと伸ばして僕に微笑みかける。
その隣に座る石倉 猛もカウンターに肘をついて僕の方に身体を向けた。
「今日は取材?」
「うん。雑誌の」
僕は桜理の隣に座って一息つく。
桜理は僕の頭のてっぺんから靴の先まで見渡した。
「景、ちゃんと食ってんの? なんかちょっと見ない間に痩せてない? 最近忙しいのか?」
「うーん、まぁまぁかな。たまに夕飯抜く時あるから痩せちゃったのかも」
スキニーパンツを履いているから余計にそう見えるのだろう。
横にいる猛も口を挟んだ。
「景ちゃん、ただでさえ細いんだからちゃんと食っとけよー。あ、そうだ。佐伯さんが、今度またみんなで集まってご飯でもって。先週会った時に言ってたぜ」
「あぁ、今の撮影、佐伯さんもいるんだっけ? 是非、って伝えておいて」
オッケー、と語尾を伸ばす癖がいつまでも直らない猛は、僕の一個下になるけれどデビューの年が一緒で芸歴はほぼ変わらない。
三白眼で目が細く、何も発さないと無機質な印象を与えるけど、性格はとにかく明るくて活発だ。
僕が猛とドラマの撮影で初めて会った時、まだお互いこの世界が手探り状態だったから緊張していて話が続かなかったし、少し気まずい思いをした。
何年後かに再会した時にはようやく慣れていて、打ち解けた途端に仲良くなり、景ちゃん、タケ、と呼び合って、都合が合えばこうして会っている。
そんな彼に仲良くしている事務所の先輩がいる、と数年前に酒の席で紹介されたのが隣にいる桜理だった。
桜理は、日本人の母親とスペイン人とのハーフの父親を持つ、クォーターだ。
それもあってやけに長身で、西洋的な顔立ちをしている。
僕らよりも早い段階で俳優を志し、舞台の場を何度も踏んでいる、誰もが羨む実力のある唯一無二の俳優だ。
初めは気を遣っていたけれど、酔った勢いで敬語をやめたら途端に仲良くなった。
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いわゆるマブダチというやつだ。
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