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第150話
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四月になり、俺は無事大学四年生になった。
景と両想いだったって事が分かって、あんなに平凡だった毎日は輝き出した。俺の頭の中は、学校の正門の前に満開に咲く桜の木のようにピンク色になって、浮かれモード全開になっていた。
あの日以来、朝起きて一番に頭に浮かぶのは景の顔。
そしてあの時の甘いキスと香り、抱き締められた時の背中の手の温もり。
いつまでも覚めない夢を見ているようで、幸福感でいっぱいになる。
今日は履修届を出す為に久々に大学に来ている。
単位はほとんど取れているから、今年は必修のゼミと少しの授業に出ればいい。
時間には余裕ができるけど、その分就活に力を入れなくてはならない。
講堂のベンチに向かうと、すでに晴人と秀明が仲良く話して座っているのが見えた。
こちらに気付いた秀明が笑顔で手を振ってくれて、隣にいた晴人も片手を上げて微笑んでくれた。
「修介ー、久しぶり!」
「久しぶりやなぁ。どうする? 学食行く?」
「そうだな。混む前に行こうか」
晴人の後ろについて秀明の隣を歩いていると、顔を覗き込まれた。
「実家どうだった? 元彼にはちゃんと返事したの?」
「うっ!」
そうだ。忘れていた。
晴人と秀明には、瞬くんにやり直そうと言われて返事をする予定だと言ったっきり会っていなかったから、まさか短期間のうちにこんな状況になっているなんて思いもよらないだろう。
秀明は少し慌てた様子の俺を見て不思議そうな顔をしていた。
「どうした?」
「あの、実は色々とありまして……」
「色々って?」
前を歩いていた晴人も俺を振り返ったけど、とりあえず学食で、と言って話題を変えながら移動した。
皆考えることは同じみたいで、まだお昼前なのに食堂は満席になりそうなくらい混んでいた。混み合っている中、なんとか三人分の席を見つけて座った。
バックからホッチキスで留められた紙の束を取り出して眺めながら、俺は切りだした。
「あの、実は俺、景と付き合う事になって……」
「「え?」」
キョトンとする二人の声が重なる。
俺はしどろもどろになりながら、事の経緯を語った。
景と両想いだったって事が分かって、あんなに平凡だった毎日は輝き出した。俺の頭の中は、学校の正門の前に満開に咲く桜の木のようにピンク色になって、浮かれモード全開になっていた。
あの日以来、朝起きて一番に頭に浮かぶのは景の顔。
そしてあの時の甘いキスと香り、抱き締められた時の背中の手の温もり。
いつまでも覚めない夢を見ているようで、幸福感でいっぱいになる。
今日は履修届を出す為に久々に大学に来ている。
単位はほとんど取れているから、今年は必修のゼミと少しの授業に出ればいい。
時間には余裕ができるけど、その分就活に力を入れなくてはならない。
講堂のベンチに向かうと、すでに晴人と秀明が仲良く話して座っているのが見えた。
こちらに気付いた秀明が笑顔で手を振ってくれて、隣にいた晴人も片手を上げて微笑んでくれた。
「修介ー、久しぶり!」
「久しぶりやなぁ。どうする? 学食行く?」
「そうだな。混む前に行こうか」
晴人の後ろについて秀明の隣を歩いていると、顔を覗き込まれた。
「実家どうだった? 元彼にはちゃんと返事したの?」
「うっ!」
そうだ。忘れていた。
晴人と秀明には、瞬くんにやり直そうと言われて返事をする予定だと言ったっきり会っていなかったから、まさか短期間のうちにこんな状況になっているなんて思いもよらないだろう。
秀明は少し慌てた様子の俺を見て不思議そうな顔をしていた。
「どうした?」
「あの、実は色々とありまして……」
「色々って?」
前を歩いていた晴人も俺を振り返ったけど、とりあえず学食で、と言って話題を変えながら移動した。
皆考えることは同じみたいで、まだお昼前なのに食堂は満席になりそうなくらい混んでいた。混み合っている中、なんとか三人分の席を見つけて座った。
バックからホッチキスで留められた紙の束を取り出して眺めながら、俺は切りだした。
「あの、実は俺、景と付き合う事になって……」
「「え?」」
キョトンとする二人の声が重なる。
俺はしどろもどろになりながら、事の経緯を語った。
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