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第146話
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「泣かないで?」
景の右手が涙を流す俺の頬に触れて、目の端から溢れる雫を掬うように親指で拭ってくれた。
景のその手は暖かくて、俺の胸を余計にくすぐって、ますます涙が溢れてしまう。
「修介は泣き虫だね」
「関西人は、感受性が豊かなんや……っ」
「ふふ、そうなんだ」
景はもう見抜いている。
この涙がどういう意味をもたらしているのか。
俺が、景の言う事を聞けない訳無い。
景にキスをされた日に流した涙とは違う種類の涙を拭われながら、俺も片方の指先で瞼を擦った。
嗚咽を上げて子供のように泣く俺を見ながら、景は片えくぼを作ると、もう片方の空いている手で俺の手を掴み上げた。
大きな手に包み込まれた俺の手は、熱いくらいに彼の体温を感じ取る。
ギュッと握られてから、彼の口元へ手が引き寄せられて、指先に軽くキスをされた。
その優しい口付けにビクッとする。
景の唇、やっぱり柔らかい。更に顔が赤くなった。
「そっ、そんな事されたら、俺アホやからまた調子乗って自惚れてしまうで?!」
「いいんだよ、自惚れて。僕は君が好きなんだから」
「……いつから、そんな風に思ったん? 俺男やで? 女の子や無いんよ?」
「修介と初めて出会った日の事、今でも覚えてる。目が合ったら恥ずかしそうに逸らされて、男だけど可愛い人だなと思ったんだ。話してみたいって思っていたのに、翔平は構わず僕を連れ出して、なかなか君の隣に行く事が出来なくてずっとモヤモヤしてた。だから君の隣に座って、僕の話で笑ってくれた瞬間、凄く嬉しかったよ。だから連絡先も聞いたんだ」
景はまた指先で俺の涙を拭って笑った。
「あぁ、この穏やかな笑顔を見ていたいな。思えばあの時からずっとそう思ってた。自覚は無かったけど、初めて会った時からきっと僕は君に恋してたんだ」
頬に当てられた景の手の体温を感じながら、俺は目を見開いて驚愕した。
まさか、初めて会った時にそんな事を思ってくれていたなんて、夢にも思わなかった。
あの時の俺は、景は遊び人なんだって勝手に決め付けていたというのに。
目の前のこのイケメンは、俺みたいなタヌキの笑顔を好きになってくれたっていうの?
景はなんだか切ないような、哀願するような表情で俺に問い詰めた。
「君の事が、可愛くて仕方なかった。男とか女とか関係無く、修介と一緒にいたいんだよ。悲しい思いはさせないから、お願いだから、僕のそばにいてよ」
あぁ、夢だったらどうしよう。
だって目の前の人は、今が旬の人気絶頂若手イケメン俳優の藤澤 景だ。
そんな人が、こんな俺に言い寄ってくれている。
俺はきっと、一生分の運を今使い果たした気がする。
でも、それでもいい。この人と一緒にいれるんだったら、例え不幸になって、どん底まで落ちたとしても。
「……おれっ、おれも、景と一緒におりたいっ!」
羞恥とかもう関係無く、俺は車の外まで聞こえそうなくらいの声を発した。
景はしていたシートベルトを素早く外して、俺の後頭部に手を回して引き寄せると、口づけをした。
景とのキスは二回目だったけど、あの時のキスより何倍も繊細で優しかった。
景は顔の角度を変えながら俺の中に優しく入ってきて、まるで俺の口内を味わって食べているかのようだった。
やっぱり甘くて、いい香りで、すごく安心した。
じんわりと幸福感が胸に染み渡っていって、暖かくなっていく。
俺はいつのまにか、景の上着をギュッと掴んでいた。息もままならぬ程の甘い接吻に溺れないように。
景の右手が涙を流す俺の頬に触れて、目の端から溢れる雫を掬うように親指で拭ってくれた。
景のその手は暖かくて、俺の胸を余計にくすぐって、ますます涙が溢れてしまう。
「修介は泣き虫だね」
「関西人は、感受性が豊かなんや……っ」
「ふふ、そうなんだ」
景はもう見抜いている。
この涙がどういう意味をもたらしているのか。
俺が、景の言う事を聞けない訳無い。
景にキスをされた日に流した涙とは違う種類の涙を拭われながら、俺も片方の指先で瞼を擦った。
嗚咽を上げて子供のように泣く俺を見ながら、景は片えくぼを作ると、もう片方の空いている手で俺の手を掴み上げた。
大きな手に包み込まれた俺の手は、熱いくらいに彼の体温を感じ取る。
ギュッと握られてから、彼の口元へ手が引き寄せられて、指先に軽くキスをされた。
その優しい口付けにビクッとする。
景の唇、やっぱり柔らかい。更に顔が赤くなった。
「そっ、そんな事されたら、俺アホやからまた調子乗って自惚れてしまうで?!」
「いいんだよ、自惚れて。僕は君が好きなんだから」
「……いつから、そんな風に思ったん? 俺男やで? 女の子や無いんよ?」
「修介と初めて出会った日の事、今でも覚えてる。目が合ったら恥ずかしそうに逸らされて、男だけど可愛い人だなと思ったんだ。話してみたいって思っていたのに、翔平は構わず僕を連れ出して、なかなか君の隣に行く事が出来なくてずっとモヤモヤしてた。だから君の隣に座って、僕の話で笑ってくれた瞬間、凄く嬉しかったよ。だから連絡先も聞いたんだ」
景はまた指先で俺の涙を拭って笑った。
「あぁ、この穏やかな笑顔を見ていたいな。思えばあの時からずっとそう思ってた。自覚は無かったけど、初めて会った時からきっと僕は君に恋してたんだ」
頬に当てられた景の手の体温を感じながら、俺は目を見開いて驚愕した。
まさか、初めて会った時にそんな事を思ってくれていたなんて、夢にも思わなかった。
あの時の俺は、景は遊び人なんだって勝手に決め付けていたというのに。
目の前のこのイケメンは、俺みたいなタヌキの笑顔を好きになってくれたっていうの?
景はなんだか切ないような、哀願するような表情で俺に問い詰めた。
「君の事が、可愛くて仕方なかった。男とか女とか関係無く、修介と一緒にいたいんだよ。悲しい思いはさせないから、お願いだから、僕のそばにいてよ」
あぁ、夢だったらどうしよう。
だって目の前の人は、今が旬の人気絶頂若手イケメン俳優の藤澤 景だ。
そんな人が、こんな俺に言い寄ってくれている。
俺はきっと、一生分の運を今使い果たした気がする。
でも、それでもいい。この人と一緒にいれるんだったら、例え不幸になって、どん底まで落ちたとしても。
「……おれっ、おれも、景と一緒におりたいっ!」
羞恥とかもう関係無く、俺は車の外まで聞こえそうなくらいの声を発した。
景はしていたシートベルトを素早く外して、俺の後頭部に手を回して引き寄せると、口づけをした。
景とのキスは二回目だったけど、あの時のキスより何倍も繊細で優しかった。
景は顔の角度を変えながら俺の中に優しく入ってきて、まるで俺の口内を味わって食べているかのようだった。
やっぱり甘くて、いい香りで、すごく安心した。
じんわりと幸福感が胸に染み渡っていって、暖かくなっていく。
俺はいつのまにか、景の上着をギュッと掴んでいた。息もままならぬ程の甘い接吻に溺れないように。
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