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こすもす

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第112話

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 ご飯を食べ終えてから二階の自分の部屋に上がって、ベッドに寝転んだ。
 天井の木目と照明をぼーっと眺めた後、おもむろにスマホを手に取って着信履歴を眺めた。

 あの日から、景から三度、電話があった。
 もちろん全部シカトした。
 諦めたのか、それ以上掛かってくる事は無かった。

 電話が来る度に飛びついて出てしまいそうになる自分をぐっと抑えて、早く鳴り止め、と祈りながら景の文字を凝視した。
 だって折角忘れようと思っているのに、ここでまた電話に出たら全部水の泡だ。
 また懲りもせず、彼の事を好きになってしまう。

 きっと、景からしてみれば俺の言動とか行動が全く理解出来ないのだろう。
 だから厄介なんだ。
 景は親切心から俺を気にかけてくれているのかもしれないけど、俺にとってそれは酷な事だ。
 着信拒否をしてしまえばいいのに、そこまでは出来ない自分が腹立たしい。
 また現実から逃れるように目を閉じて、眠りについた。


 * * *


 飲み屋の襖をガラッと開けると、中は座敷になっていて、既に六人が繋げた長テーブルで向かい合って座っていた。
 誰もが久し振りに見る顔ぶれだった。
 瞬くんともう一人の友達はまだ来ていない。

「おー、久し振りー!」

 そう言われて俺も歓喜の声をあげて短く挨拶を交わした後、高三の頃特に仲良くしていた祐也の隣が空いていたから、そこに腰を下ろした。
 祐也は微笑んで、俺を上から下まで見渡した。

「久し振り。いつ帰ってきたん?」

 祐也とは去年会ったから約一年ぶりだ。
 祐也は人当たりが良く穏やかで友達も多い。
 サッカーが得意で大学でも続けているから、肌は常にこんがりと焼けている。

「今日の朝。夜行バスで帰って来たんよ。祐也は?」
「俺は昨日。奈良の大学やからな、電車ですぐやからしょっちゅう帰って来てんで。それより修介、イメチェンでもした? チェックの服なんか着て気取っとるな。まぁ、似合っとるけど」
「やっぱり? これ、瞬くんに選んでもらったんよ! ちょっと高かったけどみんなに褒められるから、奮発して良かったで」
「え? 瞬くんて、重村の事? お前あいつの事めちゃくちゃ悪く言うとったやん。いつの間にそんな仲良くなってたん?」
「あっ、うん、それには色々と事情があるからまた後でゆっくり……」

 飲み放題のコース料理が次々に運ばれてくる中、とりあえずメニュー表を眺めながら悩んでいると、ガラッと襖が開いたから一斉にそちらを向いた。そこには同じクラスだった友達と、瞬くんが立っていた。
 瞬くんと途端に目がバッチリ合って、ニコッと笑って手を振ってきたから俺も笑って振り返した。
 そのまま瞬くんと友達は、俺の座る席から遠い端っこに並んで座った。
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