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第78話
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「瞬くん! 何言うてるんよ! 付き合うてた事、景には内緒にしてあるんやから、余計な事言わんといてよ!」
景との電話を終えた後、俺は瞬くんを責め立てていた。
咄嗟に言い訳が出来たから良かったものの、本当に冷や汗ものだった。
「ごめんて。つい口が滑ってしもうて。いやー、でもホンマやったんやなぁー! テレビで聞く声そのままやったからビックリしたでー!」
瞬くんはこっちの気を知ってか知らずか、体を揺らしながら呑気に笑っているから溜息を吐く。
そういえば瞬くんはこういう人だった。
こっちは心配でソワソワして焦ったりしてても、瞬くんはどっしりと構えて余裕だという表情。
でもこの顔だから、何でも許せてしまっていた。
危ない。もう瞬くんの前で景に電話するのはやめておこう。
「ごめんな、電話なんかさせて。でもおかげでようやく信用したで。修介の好きな相手は藤澤 景って事やな?」
瞬くんに改めて問われて、ちょっと恥ずかしくなるけど、うん、と頷いた。
「あの人って男好きなん?」
「……ううん」
「だよな。だって今日出てたやん、熱愛報道」
「……へ? 熱愛?」
「知らねーの? 藤澤 景で検索してみろよ、一発で出てくんで」
そんな事寝耳に水だから、瞬くんの言葉に驚愕した。
今日は実は寝坊したからテレビを付けたりネットのエンタメニュースをチェックしたりしていなかった。
俺はスマホで早速、景の名前を検索した。するとすぐに画像が出てきた。
女優と写る景の画像だった。
見出しはこうだ。
《若手実力派俳優、藤澤 景 噂の恋人 佐伯 紗知子と深夜のWデート》
二月某日、仕事を終えた藤澤と佐伯は、知人の男女二人含む四人で青山の和食料理店でダブルデート。知人と別れた後、佐伯は藤澤の手に引かれ、一緒にタクシーに乗り込み夜の街へと姿を消した……
佐伯紗知子といえば、景も出演する噂のドロドロドラマの主演の女優ではないか。
数多くの主役級レベルの芸能人がいる大手プロダクション老舗事務所に所属していて、佐伯さんも子役でデビューしているから芸歴は長く、演技の幅が広い。この間の映画では最優秀主演女優賞を受賞していた。
画像の二人は少し離れて歩いていて、佐伯紗知子は下を向いて微笑んでいる様子だった。
白黒写真だけど、少し前を歩く男は、キャスケットを深く被り、見覚えのある革ジャンにスキニーパンツを履いていて、マスクをしているからハッキリと表情は見えないけど、背格好から景だということは一目瞭然である。
……俺は激しくうなだれた。
景との電話を終えた後、俺は瞬くんを責め立てていた。
咄嗟に言い訳が出来たから良かったものの、本当に冷や汗ものだった。
「ごめんて。つい口が滑ってしもうて。いやー、でもホンマやったんやなぁー! テレビで聞く声そのままやったからビックリしたでー!」
瞬くんはこっちの気を知ってか知らずか、体を揺らしながら呑気に笑っているから溜息を吐く。
そういえば瞬くんはこういう人だった。
こっちは心配でソワソワして焦ったりしてても、瞬くんはどっしりと構えて余裕だという表情。
でもこの顔だから、何でも許せてしまっていた。
危ない。もう瞬くんの前で景に電話するのはやめておこう。
「ごめんな、電話なんかさせて。でもおかげでようやく信用したで。修介の好きな相手は藤澤 景って事やな?」
瞬くんに改めて問われて、ちょっと恥ずかしくなるけど、うん、と頷いた。
「あの人って男好きなん?」
「……ううん」
「だよな。だって今日出てたやん、熱愛報道」
「……へ? 熱愛?」
「知らねーの? 藤澤 景で検索してみろよ、一発で出てくんで」
そんな事寝耳に水だから、瞬くんの言葉に驚愕した。
今日は実は寝坊したからテレビを付けたりネットのエンタメニュースをチェックしたりしていなかった。
俺はスマホで早速、景の名前を検索した。するとすぐに画像が出てきた。
女優と写る景の画像だった。
見出しはこうだ。
《若手実力派俳優、藤澤 景 噂の恋人 佐伯 紗知子と深夜のWデート》
二月某日、仕事を終えた藤澤と佐伯は、知人の男女二人含む四人で青山の和食料理店でダブルデート。知人と別れた後、佐伯は藤澤の手に引かれ、一緒にタクシーに乗り込み夜の街へと姿を消した……
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数多くの主役級レベルの芸能人がいる大手プロダクション老舗事務所に所属していて、佐伯さんも子役でデビューしているから芸歴は長く、演技の幅が広い。この間の映画では最優秀主演女優賞を受賞していた。
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白黒写真だけど、少し前を歩く男は、キャスケットを深く被り、見覚えのある革ジャンにスキニーパンツを履いていて、マスクをしているからハッキリと表情は見えないけど、背格好から景だということは一目瞭然である。
……俺は激しくうなだれた。
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